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ひとしきり笑った後。
ルイは目元に浮かんだ涙を拭った。
「久しぶりに笑いました」
「そうなの?」
「はい」
私は頷く。
やっぱりだ。
攻略対象は色々抱えている。
乙女ゲームのお約束である。
きっと過去に何かあったのだ。
私は真剣な顔になった。
「大変だったのね」
「え?」
「大丈夫よ」
私は胸を叩いた。
「主人公だから」
ルイがまた笑い出した。
父様は頭を抱えた。
「リリア」
父様が低い声で言う。
「何でしょう」
「まず謝りなさい」
「何故?」
「何故ではない」
私は首を傾げる。
失礼なことなど何も言っていない。
むしろ側近候補を褒めた。
かなり褒めた。
「私は正しく評価しただけよ?」
「評価する立場ではない」
父様の声が死んでいた。
するとルイが口を開いた。
「気にしていません」
穏やかな声だった。
「むしろ面白かったです」
私は頷く。
ほら見なさい。
やっぱり当たり枠だ。
「それに」
ルイは少し考える。
そして。
「側近候補というのは初めて言われました」
「でしょうね!」
私は自信満々に答えた。
父様が机に額をぶつけた。
ゴンッ。
良い音だった。
母様が心配そうに声をかける。
「あなた……」
「少し頭痛が……」
その間にも私はルイを見ていた。
攻略対象。
側近候補。
胡散臭い笑顔。
完璧である。
「じゃあルイね!」
応接室が静まった。
「……はい?」
父様の顔色が変わる。
「ルイ!」
私はもう一度呼んだ。
「私はリリア!」
知っている。
名乗ったから。
「よろしくね!」
私は手を差し出した。
沈黙。
護衛が固まる。
メイドが固まる。
父様は今にも倒れそうだった。
だが。
ルイは差し出された手を見る。
それから私を見る。
そして。
「うん」
小さく笑った。
「よろしく、リリア」
その瞬間。
父様は悟った。
もう遅い。
この二人はきっと、
これからずっとこんな感じなのだと。




