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第8話 襲撃の黒幕

 古民家の扉を叩くと、覗き穴越しの目がこちらの顔を確認し、続いてドアの掛け金が外れる音がした。


「どうぞ、お入りください」


 執事のリゲールが開けてくれた扉をくぐり、中に入ろうとすると、駆け寄ってきた大きな黒い影が俺を突きのけ、まっすぐジョゼフに飛びついた。


 アドリアだ。


 ジョゼフの髪をくしゃくしゃにかき回し、首筋に顔を埋め、挙げ句にディープキスの連発ときたもんだ。いやあ、胸が悪くなるくらい情熱的だねぇ。大体のことに動じないキャメロンも呆気にとられた様子で立ちすくんでいる。



 アドリアとジョゼフの濡れ場がなかなか終わりそうにないので、俺はそのまま上がり込み、運んできた中年男を下ろして椅子に腰かけさせた。俺は対面席に腰を下ろす。


 リゲールが運んできた火酒をグラスに注ぎ、タバコに火をつけて一服した。


 ややあって頬を紅潮させたアドリアがこっちへ来た。


「本当にありがとう。ジョゼフを無事に取り戻してくれて」


 玄関口でアドリアの抱擁から開放されたジョゼフがよろよろと倒れかけ、付き添っていたキャメロンが慌てて支えるのが見えた。顔中にべったりとキスマークが付いている。


 あれで無事と言えるのだろうか。



 ウウッ、といううめき声が傍らから聞こえた。どうやら中年男が気を取り戻したようだ。


 アドリアが男の顔を横目に見て、ハッと向き直って二度見した。唖然とした表情でつぶやく。


「あなたは…グランツ卿!」


 アドリアさんのお知り合いですか?


「アドリアーノさま、お久しゅうございます」


 グランツ卿なる男は、恥じ入るように低く挨拶した。



 アドリアはいぶかしげな目を俺に向けた。なぜここにグランツ卿がいるのか、という戸惑いの色が見えた。


「討伐の後に街道で男たちに襲われたんだよ。こいつはその連中のカシラだ」


 アドリアの顔が曇った。


「そんな、まさかグランツ卿が。それでは、襲わせたのは…」


 グランツは苦渋の色を浮かべ、瞑目して頷いた。


「…はい、お考えの通りです。」


 ややあって、低くつぶやく。宮廷魔導師長シュミットさまに命じられました、と。

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