第2話 無遠慮な来客
「ですから、あなたを腕利きの冒険者と見込んでお願いに上がったのです。ですから、まずは引き受けると言っていただけませんか。ですから、雇い主も案件内容もまだ明かせません」
他人の寝ごみを襲った挙げ句、案件内容も明かさずに了承を取り付けようという狂った論理を振りかざす小男を俺はうんざりしながら呆れて眺めた。
何が「ですから」だ。接続詞の役割を果たしていないだろうが。
俺はもう一度、雇い主も案件内容もわからないまま引き受けるという返事はできないと辛抱強く繰り返した。そんなのどう考えてもヤバいだろ。
「ですから、報酬は弾むと言っているではありませんか。ですから、破格の金貨五十枚をお支払いします。ですから、なにとぞ引き受けると言ってください」
ですから、案件内容がわからない以上、その金額が破格かどうかも判断できないのですよ。
不毛なやりとりを繰り返した結果、どうあっても俺が首を縦に振らないと見て取り、さも憤慨した表情で小男は立ち上がった。こうして見ると、身なりはそれなりに整っている。
「わかりました。どうあっても良いお返事をいただけないわけですね。それでは、今夜のところは戻りまして、私どもの主にその旨復命いたします」
紅潮した顔には「覚えていやがれ、こん畜生!」と書いてあったが、言葉づかいは変わらず丁寧だったので、俺は友好的かつ平和的な結末に至ったと考えることにして、“どうぞお引き取りください”という意味合いをこめた微笑を浮かべ、軽く会釈した。
小男が出て行った後、俺はベッドに再び倒れ込み、ちらりと「最後のセリフには“ですから”が入っていなかったな」と思って少し笑った。
そして、今度は余計なことを考えずに朝まで眠った。




