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第96話 アレンの戦い

前回のあらすじ

アリシアが城内に侵入&アレンの前に魔導兵器が現れた

 

 謎の金属製の兵器―彼らの言葉を借りるなら、試作型魔導兵器『ドラゴン』―は、ものすごい勢いで僕が作った氷の壁に突進してくる。

 そのたった一度の突進で壁にヒビが入り、そして砕け散る。


 僕は酷い頭痛に苛まれながらも、なんとかその突進を回避する。

 標的を見失った兵器はそのまま地面を駆け抜け、そして城壁に衝突するかしないかの辺りでピタリと止まる。


 兵器は反転し、顔にあたる部分を僕の方に向けてくる。

 そしてその部分に嵌め込まれた大きな水晶玉がキラリと光ったその時、僕は本能的に横に跳ぶ。


 その一瞬後に、僕がさっきまでいた場所を一条の眩い光線が撃ち抜く。

 その熱量で雪が一気に融解し、もうもうと熱気を含んだ水蒸気が立ち込める。


「くっ……! 《エアロ》!」


 僕は風属性初級魔法で、自分の周りの水蒸気を吹き飛ばす。

 すると兵器の頭が僕を捉えているのに気が付き、僕は慌てて地面を転がる。


 僕の頭があった場所を、兵器から放たれた光線が通り過ぎる。

 もし兵器の頭に気が付いていなかったらと思うと、ゾッとする。


「フハハハハハ! どうだ、『ドラゴン』の性能は! 手も足も出なかろう! さっさと投降する方が賢明だぞ!」


 指揮官らしき兵士がそう、どこか勝ち誇ったようなことを言う。

 そんなことを言われて、「はい、そうですか」と返せるほど僕は賢くない。


 だから愚かしくも――目の前の兵器の破壊を試みる。


「《フリーズバースト》!」


 僕は手始めに、氷属性超級魔法で兵器を氷漬けに出来ないか試す。

 兵器は氷の中に閉じ込められた……けど、すぐさま内側から氷の檻を突き破った。


「無駄だ! 『ドラゴン』にはこの国最高峰の耐寒性能が備わっている! そんな氷如きでは『ドラゴン』は止まらんぞ!」

「……それはいいことを聞いた」


 指揮官の言葉に僕は小さな声でそう返し、両手の剣に炎を纏わせる。

 なんだかいつもより魔法剣が安定しないけど、十中八九この頭痛が原因だろう。


 僕の目の前にあるあの兵器が現れてから頭痛が酷くなった。

 その事から、僕がこの世界に来てから感じていた違和感の正体は、目の前の兵器であることはほぼ間違いない。

 だからあの兵器を破壊出来れば、この頭痛も多少はマシになるに違いない。


 そんなことを思いつつ、僕は一直線にその兵器に接近して行く。


「気でも狂ったか! 踏み潰せ、『ドラゴン』!」


 指揮官の指示に従い、兵器が左前足を高々と上げ、そして僕に向かって踏みつけてくる。

 その踏みつけを回避し、カウンターとして両手の剣で兵器の左前足を斬りつける。


 その攻撃を受けても兵器はびくともしなかったけど、斬りつけた場所は赤く赤熱していた。


 ……この兵器、もしかして……。


 僕の頭の中にある疑惑が浮かび上がり、それを確かめるために僕は兵器の土手っ腹に魔法を叩き込む。


「《ファイア》!」


 超級魔法を喰らってもびくともしなかったその巨体が、たかが火属性の初級魔法を喰らっただけで大きくよろめく。


 ……思った通りだ!


 僕は内心ガッツポーズをする。


 この兵器、見た目に反して耐熱性能が極端に低すぎる。

 その証拠が、僕の魔法剣と今の攻撃だ。


 そしてそれと共に、アリシアのお父さんでもあるアルトさんから教えてもらったことを思い出す。

 それが、この兵器を一撃で破壊出来る切り札となる。


 僕は兵器の足を足場にして駆け上がり、背中に到達する。

 そしてその背中に、逆手に持ち変えた両手の剣を深々と突き刺す。


「《フレイムバースト》!!」


 突き刺した剣を媒介にして、火属性超級魔法で兵器を内側から焼き尽くしていく。

 内部からの過剰な熱量に、兵器は誤作動を起こしたように暴れ回る。


 それに巻き込まれて兵器に踏み潰される兵士もいたけど、それを気にする余裕は今はない。

 僕も兵器の背中から振り落とされないようにするので精一杯だったからだ。


 そして兵器の全身を覆う金属の装甲が赤く赤熱してきて、関節部からプシュプシュと白い煙を噴き出す。

 頃合いと見て、僕は右手の剣を一旦引き抜き、その刀身に今度は氷を纏わせる。


 そしてそれを再び、兵器の背中に突き刺す。


「《フリーズバースト》!!」


 氷属性超級魔法で、熱々に熱せられた兵器を内部から急激に強制的に冷却させる。

 すると兵器は突如として暴れ回るのを止め、バキンバキンッ! と装甲が至る所から壊れていく。


 そして――ズズン……! と、その巨体は白い大地の上に崩れ落ちた。


 熱した金属を急激に冷やすと脆くなる。

 それが、アルトさんに教えてもらったことだった。


「そ、そんな……我が国の最新兵器たる『ドラゴン』が……たった一人の青年に破壊されるなど……あり得ない……あり得るハズがない……あり得ないんだ……」


 指揮官は目の前で起きた現実が受け入れられないようで、そんなことを譫言のように繰り返していた。

 それに構わず、僕は動かなくなった兵器の上から飛び降りて、その指揮官に接近する。

 そして容赦なく、両手の剣で指揮官を斬り伏せる。

 白いキャンバスに赤い塗料が追加で塗りたくられる。


 倒れ伏した指揮官を足蹴にしつつ、僕は周りにいる腑抜けた兵士達に向かって大声で言う。


「さあ。侵入者を捕らえるためにやって来たんだろう? どこからでも掛かってこい!」


 そう啖呵を切ると同時に、城の一角から外に向かって稲妻が迸った。

 そしてその稲妻によって空いた穴から、アリシアとアイナが手を繋ぎながら落下してきた―――。






金属云々の所は間違ってたらごめんなさい。

その場合はファンタジーだからということで許してつかぁさい。m(__)m




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