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第95話 ダイナミック入城

前回のあらすじ

アイナが母と姉に邂逅した

 

 氷竜に乗って三時間ほどで、王都にたどり着いた。

 誘拐犯の乗った氷竜の方が飛行速度が速く、とっくの昔に姿を追えなくなっていた。

 だけど進行方向と彼らの主がいるらしき場所から推測して、ここまでやって来た。


「アリシア。このまま城に突っ込む! しっかり掴まってて!」


 アレンがそう言うので、わたしは両腕に力を込めてしっかりと彼の身体に抱き着く。

 それを合図に、氷竜がグン! と飛翔速度を上げて急降下して行く。

 そしてそのまま、王城の正門を突き破る。


「うわああああっ!!」

「なっ……なんだ!?」

「ひょ……氷獣が突っ込んで来た!?」

「ひ……人もいるぞ!?」


 門の近くにいた兵士達が、突然の出来事に慌てふためき戸惑っていた。

 その混乱に乗じる形で、わたし達は王城の中への侵入を試みる。


 だけど冷静な人もいたようで、その人が素早く指示を出す。


「落ち着け、お前ら! ……そこの二人! 自分達が何をやったのか理解しているのか!? 理由如何によっては、この場で斬り伏せる!!」

「わたし達はアイナを連れ戻しに来ただけよ! わたし達の……わたしの邪魔をするって言うんなら――容赦はしないっ!!」


 わたしは炎を吐くような勢いでそう答えると、その圧に気圧されたのか後退りする兵士もいた。

 わたしは鞘から愛用の剣を抜いてどこからでも掛かってこいといった気概でいると、ポンとアレンがわたしの肩を軽く叩く。


「ここは僕に任せて、アリシアはアイナを助けに行きなよ」

「えっ? でも……」

「アリシア以外にいったい誰がアイナを助けるのさ? 姉は妹を守るモノだろう?」

「…………そうだね。分かった」

「アイナを助け出したら、ここまで戻って来るんだ! それまで僕はここでアリシア達を待ってる!」

「お願いね! それと……無理しないでね!」

「それはこっちの台詞だ! 早く行け!」


 アレンの言葉に後押しされ、わたしは城内を目指して駆け出す。


「奴等を捕らえろ! 奴等は女王陛下に仇為す賊だ! 最悪殺しても構わん! 掛かれっ!」


 さっきの兵士達の取り纏め役みたいな人がそう指示を出して、兵士達が一斉に襲い掛かってくる。

 だけどわたしには恐怖心など欠片もなかった。


 だって――わたしにはとても頼りになる恋人ゆうしゃがいるから。


「《フリーズバースト》!!」


 アレンがそう唱えると、わたしと兵士達を隔てる巨大な氷壁が出来上がる。

 中には、氷壁の餌食となって人柱の如く氷漬けになった兵士もいた。

 その氷壁はスロープを描き、正面にせり出すバルコニーまで伸びていた。


 アレンが造ってくれた氷のスロープを駆け登り、バルコニーから城内に侵入する。

 わたし達が正門を突き破ったことはすでに知れ渡っていたらしく、武装した兵士達がわたしの行く手を阻む。


「そこの女、止まれ! 止まらないと……」

「貴方達の相手をしている暇はないの! とっとと消えて! 《ボルテクスバースト》!!」


 そう言ってわたしは、正面にいる兵士達に向かって雷属性超級魔法を放つ。

 一切の手加減を加えていないその一撃は、わたしの正面にいた兵士達を全て排除した。


 敵が全滅したのを確認したわたしは、アイナがいると思われるある場所を目指して一目散に駆け出す。


 その場所は……王の間だ―――。




 ◇◇◇◇◇




 アリシアを見送った後、僕は正門前で兵士達の相手をしていた。


「ぐあああっ!」

「があああっ!」

「コイツ……ぐふっ」

「つ、強い……!」


 両手に構えた剣と魔法を駆使して、敵であるこの城に勤める兵士達を次から次へと戦闘不能にしていく。

 それを見て、未だに僕の餌食となっていない兵士達が戦慄している。


 それにしても……こうして城の前で暴れていると、前世むかしを思い出す。


 アリシア……当時はアリュシーザだったけど、隠れて付き合っていた彼女に逢いたい一心で魔王城に乗り込んだ時も、今のような状況だった。


 味方はいない、されど敵は多数。


 そんな圧倒的な戦力差でも、僕はそれらを強引に捩じ伏せてアリュシーザに逢った。

 彼女には呆れられたけど、今になってもその時のことは一切後悔していない。


 そんな回想に耽っていると、背後から接近する気配を察知した。

 僕はロクに確かめもせずに、振り向きざまにその気配を斬り伏せる。

 背後から襲ってきたのは敵の兵士で、彼は驚いたように目を見開きながら地面へとくずおれる。


「くっ……くそっ! ……おいっ! 『アレ』を起動させろ!」


 指揮官らしき兵士がそう命じると、彼の近くにいた兵士が慌てふためく。


「し……しかし! 『アレ』は起動してはならないと女王陛下から……」

「あの侵入者を止めるにはそれしかない! 責任は私が全て取る!」

「は……はっ!」


 兵士は敬礼をしてから、指揮官の前から立ち去って行く。

 何をするつもりか知らないけど、逃がしはしない。


 そう思ったその時、突然激しい頭痛が僕を襲った。


「ぐっ……!?」


 僕は思わず、頭を押さえながらその場に膝を着く。

 前王都に来た時よりも、頭痛が酷い。平衡感覚がはっきりとしない。


「なんだ……?」

「何が起きたんだ……?」

「けど……この好機を逃すな! 侵入者を捕らえろ!」


 兵士達は僕を取り囲み、一斉に襲い掛かってくる。


「くっ……《フリーズバースト》!!」


 僕は再び氷属性超級魔法を発動させて、自分の周りに氷の壁を築き上げる。

 兵士達はそれに阻まれて、僕に近付くことは物理的に不可能となった。


 ……いったい何なんだ、突然?


 そう思ったその時、ズズン……と大地を震わす振動が伝わる。

 それと共に、頭痛もより一層酷くなる。


 そして次の瞬間――氷の壁の一部が溶解した。


「な……!?」


 驚くのも束の間、さらなる異変が僕に襲い掛かる。


 大地を震わせながら、ソレが姿を現す。

 四肢は太く、長い首の先端には大きな水晶玉に似た何かが嵌められていた。

 そして全身が、金属で覆われていた。


 それを見た指揮官が、高らかに宣う。


「行け、試作型魔導兵器『ドラゴン』! 侵入者を蹴散らせ!」


 その言葉に従うように、その兵器は僕に向かって突進して来た―――。






次回辺りで、アレンの謎の頭痛の正体が明らかに……なればいいな。




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