第82話 無属性魔法
前回のあらすじ
アイナは魔法無効化能力者疑惑
「……と言うことがあったんです」
朝食を摂った後、僕は今朝の出来事を礼拝所の掃除をしていたアンジェリカさんに伝えていた。
ちなみにアリシアとアイナは、アンジェリカさんに頼まれたおつかいに二人仲良く出掛けて行った。
アンジェリカさんは僕の話を聞いて、少し驚いていたようだった。
「そうなんですか……アイナが……」
「はい。僕の推測だと、アイナは魔法を無効化する魔法……言うなれば無属性魔法が使えるみたいなんですけど……アンジェリカさん。そんな魔法って、聞いたことありますか?」
そう尋ねると、アンジェリカさんは首を左右に振る。
「いいえ、聞いたことがありません。アレンさんは……」
「僕もないです」
「そうですか……」
「それに……アイナ自身、自分の力をコントロール出来てるようには見えませんでした」
「そうなんですか。それは……危ないですね」
アンジェリカさんは顎に手を当てながら、そう呟く。
その呟きは僕の耳にも届いたので、彼女に問い掛ける。
「危ないって……何がですか?」
「もしアイナの力が、この国の軍部に知れ渡ったら?」
「それは……」
アンジェリカさんの言葉に、僕は身を竦めた。
僕達が今いるヴァイス王国と、シュバルツ帝国は戦争状態だと聞かされた。
そして帝国は、魔法技術が発展していると言う。
と言うことは、戦争にも多数の魔法が使われていることになる。
そこにもし仮に、魔法を無効化出来るアイナを投入したら?
そう考えると、僕の手に自然と力が入った。
「……アイナの力のことは、僕とアリシアが全力で隠し通しますよ。それとアイナが望むなら、力の使い方も出来る範囲で教えますしね」
「ありがとうございます。ですけど……どうしてそこまでしてくださるのですか?」
アンジェリカさんの疑問はもっともだった。
僕は頬を掻きながら、それに答える。
「え〜っと、ですね……。アリシアが、その……」
「アリシアさんが?」
言い淀む僕にアンジェリカさんがそう聞き返してきたので、僕は意を決して続きを言う。
「……アリシアがアイナのこと、とても気に入ったみたいなんですよ。それこそ、実の妹のように猫可愛がりするくらいには……」
「まあ、そうなんですか?」
「ええ。だからアリシアの意思を尊重して、僕もアイナのことを守ることにしたんです」
「アイナを守ってくださる人が出来るのはとても喜ばしいですけど……何故アリシアさんはそこまで入れ込んで?」
「本人が言うには、アイナみたいな妹が欲しかったかららしいですよ」
アンジェリカさんの疑問に、ちょっとだけ脚色しながら答える。
アイナみたいな、というのは僕の勝手な憶測だけど、あながち間違いでもないだろう。
するとアンジェリカさんは、僕の答えに納得したように頷く。
「そうですかそうですか。それはとても……微笑ましい理由ですね。……さて、話はアイナの力のことだけですか?」
「はい、そうですね」
「それでは私は掃除に戻りますね」
「僕も手伝いますよ」
「ありがとうございます」
僕の申し出を、アンジェリカさんは快く受け入れてくれた。
それから僕は二人が帰ってくるまで、アンジェリカさんの仕事の手伝いをした―――。
◇◇◇◇◇
アンジェリカさんに頼まれたおつかいを、わたしはアイナと二人でしていた。
買う物は主に日用品の類だった。食料品も少しだけある。
わたしと手を繋いで歩くアイナは、どこか嬉しそうな様子だった。
そのことがちょっとだけ気になったので、彼女に尋ねる。
「どうしたの、アイナ? そんなにニコニコして?」
「え、えっと……これは、その……」
するとアイナは、顔を赤くして俯いてしまった。
そして小声で、ぼそぼそと答える。
「……おねえちゃんと一緒にお出かけするのが、すごく嬉しかったから……」
その一言は、わたしのハートをものの見事に撃ち抜いた。
人の往来が無ければ、すぐさまアイナを抱き締めて頬擦りしていたに違いない。いや、絶対にした。
その欲求を鋼の意思でぐっっっっ!! と堪えて、代わりにアイナの頭を優しく撫でる。
「すごく嬉しいことを言ってくれるわね。わたしもアイナと一緒に出掛けられて、すごく嬉しいわよ」
「おねえちゃん……えへへ♪」
わたしの言葉にアイナははにかみ、ぎゅっと手に力を込めてくる。
「それじゃあ、アンジェリカさんに頼まれたおつかいを済ませちゃおっか?」
「うん!」
アイナの手を握り返しながらそう言うと、アイナは笑顔で頷く。
そしてアイナと共に、おつかいをこなしていった―――。
幼女に骨抜きにされる女勇者。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




