第81話 アイナのチカラ
前回のあらすじ
魔法剣が、消えた……?
その日の夜は、アリシアさん―おねえちゃんと一緒のベッドで寝た。
誰かと一緒に寝るっていうのは、あたしがまだ小さい時に怖い夢を見て、シスターのベッドに潜り込んだ時以来だった。
二人で寝るにはちょっとだけ手狭なベッドだから、あたしはおねえちゃんの方に身体を寄せる。
するとおねえちゃんは、ぎゅっとあたしの身体を優しく抱き締めてくる。
おねえちゃんの身体はぽかぽかと温かくて、いい匂いがして、抱き締められているとすごく安心する。
あたしもおねえちゃんの身体に腕を回して抱き付いて、胸元に顔を埋める。
するとすぐに、あたしの意識は眠りに落ちた―――。
◇◇◇◇◇
目が覚めると、ベッドにはすでにおねえちゃんの姿はなかった。
一瞬だけ寂しくなったけど、綺麗に畳まれたパジャマが枕元に置いてあったから、先に起きたのが分かって少し安心した。
あたしも着替えようと、ベッドから起き上がる。
すると教会の裏庭の方から、キン……キン……と金属音が小さくだけど聞こえてくる。
その音が気になって、あたしは手早く普段着に着替えた後、裏庭の方へと向かった―――。
◇◇◇◇◇
建物の陰から音がする方へと目を向けると、裏庭ではおねえちゃんとアレンさん―おにいちゃんが戦っていた。
二人共剣で戦っていたけど、おねえちゃんが一本なのに対して、おにいちゃんは二本も使っていた。ちょっとズルいと思う。
それと何故か、おにいちゃんの剣には炎と氷が纏わり付いていた。
そして二人共、あたしには使えない魔法をバンバンと使っていた。
そのことが羨ましくもあり、ほんのちょっとだけ妬ましくもある。
だけどそんなことよりも、あたしの心の大部分を占めていたのは―二人への憧れだった。
二人の戦いは、まるで夜空に輝く満天の星のようにとてもキラキラと輝いていて、ずっと見ていたい気持ちになる。
……あたしもいつかあんな風に戦ってみたいなぁ……。
あたしは無意識の内に、おにいちゃんの方へと右手を向けていた。
その後に起きたことは、あたしにとっても予想外のことだった。
おにいちゃんは地面を蹴り上げた途端にバランスを崩して、背中から地面へと転ぶ。
そして両手に持っていた剣からは、炎と氷が消え失せていた。
「え……?」
何が起きたのか分からないでいると、あたしの声に反応した二人があたしの方へと目を向けた―――。
◇◇◇◇◇
建物の陰から声がしたのでそちらに目を向けると、そこにはアイナが右手を突き出した状態で立っていた。
彼女も何か起きたのか分からないようで、きょとんとしていた。
わたしもきょとんとしていると、アレンは素早く身体を起こして、剣を鞘に仕舞いながら大股でアイナに近付いていく。
そのただならぬ様子に、アイナがおどおどとする。
アレンはアイナと視線を合わせると、彼女の肩を掴む。
アイナはビクッと身体を揺らすけど、それに構わずにアレンは喋る。
「さっきの……アイナがやった?」
「さっきの……って?」
「僕の魔法剣……剣に纏わせていた炎と氷を消したこと」
アレンはいつもの声音でそう尋ねると、アイナはふるふると首を左右に振る。
「わ、分かんない……おにいちゃんに手を向けたら炎と氷が消えて、おにいちゃんが転んだから……」
「そっか……」
「えっと……ご、ごめんなさい……」
「ん? なんで謝るの?」
「え、えっと……なんだかおにいちゃんが怒ってたみたいだったから……」
「ああ……そんなこと。僕は別に怒ってなんかないよ。ちょっとビックリしただけだから」
アレンはそう言うと、アイナの肩から手を離して立ち上がる。
そしてわたしの方を振り向く。
「僕は裏庭を整地してから戻るから、アリシアはアイナと一緒に先に戻ってて」
「あ……うん、分かった」
彼の言葉に頷いて、わたしはアイナと一緒に教会の中へと戻って行った―――。
◇◇◇◇◇
アリシアとの鍛練で荒れた地面を魔法で均しながら、僕はさっきのことを思い返す。
魔法剣が僕の意思を無視して消えたことは、まだ納得出来る。
だけど……身体強化魔法までをも消されていたのは、完全に予想外だった。
身体強化魔法が突然消えたから、僕は盛大にずっこける羽目になった。
それにさっきのアイナの自白。
彼女は僕に手を向けたら、炎と氷が消えて僕が転んだと言っていた。
「いや、まさか……でも、そうじゃないと説明が……」
僕は整地しながら、ブツブツと呟く。
一人じゃなければ、一人言なんて呟いたりしない。
そして僕は、ある結論に至る。
――アイナは、魔法を無効化する魔法が使える。
無効化能力はファンタジーの定番(偏見)。
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