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第70話 ご対面

前回のあらすじ

故郷に帰って来た

 

 わたし達はリビングに向かい、アレンと並んでソファーに座る。

 お母さんはキッチンへと向かい、焼き立てのアップルパイにティーポット、ティーカップをトレイに載せて運んでくる。

 パイの香ばしい香りが、鼻孔をくすぐる。


 お母さんは包丁で円形のアップルパイを均等に切り分けて、扇形のソレを小皿に移す。

 そしてフォークを添えて、わたし達に渡してきた。

 お茶はパイに合うようにと、アップルティーのようだった。


「さあ、召し上がれ」

「いただきます!」

「いただきます」


 わたしはややテンション高めに、アレンはいつも通りのテンションでそう言う。


 フォークで一口大に切り分け、フォークを突き刺す。

 そしてそれを口に運んで、咀嚼する。


 サクサクッとしたパイ生地と、甘酸っぱくトロッとしたリンゴの果肉が、口の中で絶妙なハーモニーを奏でている。


 その天にも昇るような美味しさに、わたしは自然と笑みを溢していた。


 舌鼓を打ちながらチラリと横を見ると、アレンは口をモグモグとしながら目を見開いていた。


「ん……美味しいです。僕が今まで食べてきたアップルパイの中で一番ですよ」

「うふふ……お世辞でも嬉しいわ」


 アレンの感想に、わたし達の対面に座るお母さんが笑みを浮かべる。


 その笑顔を見て何を思ったのか、アレンはチラリとわたしの方に目を向ける。

 その後再びお母さんの方を見ると、口を開く。


「リサさんとアリシアって、とても似てますね」

「よく言われるのよ。まるで姉妹のようだ、って」

「それだけリサさんがお若いということでしょう。僕も最初見た時、アリシアのお姉さんかと思いましたから」

「うふふ〜……褒めたって何も出ないわよ〜」


 お母さんはそう言いつつ、切り分けたアップルパイが乗った小皿をもう一皿アレンの方に差し出していた。


 ……それ、わたしの分……。


 そう思っていると、お母さんがわたしの方に顔を向けてきて微笑む。


「アリシア、そんな悲しそうな顔しないの。おかわりはまだあるから」

「ホント!? やった!」


 すると懐かしい足音が聞こえてきて、わたしはリビングの入口の方に目を向ける。

 そこには、頭にタオルを巻いたお父さんが立っていた。


 お父さんは最初目を見開いていたけど、すぐにいつもの人当たりの良さそうな表情を浮かべる。


「……おかえり、アリシア」

「うん……ただいま、お父さん」


 わたしがそう返すと、お父さんの視線はわたしの隣に移った。


「それで……アリシア。そっちの青年は?」

「えっと……アレンはわたしの、その……か、かかかか彼氏、です……」


 わたしは自分でも分かるほど顔を真っ赤にしながら、何故か敬語でお父さんにそう答える。

 わたしの紹介を受けて、アレンはその場に立ち上がる。


「紹介に与った、アレンと言います。お宅の娘さんとお付き合いさせていただいております。それと同じパーティーも組ませてもらっています」

「これはこれはご丁寧にどうも。俺はアリシアの父親のアルトだ。アレン君と呼んでもいいかな?」

「はい、どうぞご自由に」

「では、そう呼ばせてもらう。……アリシアはアレン君に迷惑を掛けていなかったか? 娘はたまに盛大にやらかすことがあるからな」


 お父さんのその言葉に、わたしは反論する。


「むっ……。お父さん、それはアレンの方だよ。そうでしょ、アレン?」


 そう言ってアレンの顔を見上げると、彼はわたしの視線から逃れるようにふいっと顔を逸らした。


「……なんで顔を逸らすの?」

「……ノーコメントで」

「わたしが何かやらかしたことなんて、一度だってないでしょ?」

「えっ? 本気で言ってる?」


 するとアレンは、信じられないといったような目をわたしに向けた。


「もうっ!」

「ふふふ……」

「ははは……」


 わたし達のやり取りを見て、両親は声を上げて笑った―――。




 ◇◇◇◇◇




「アリシアがウチにいるってことは、魔王を討伐したってことなんだろうけど……二人共、これからどうするんだ?」


 お母さんの隣に腰を下ろしたお父さんが、そう尋ねてくる。

 わたしはアップルティーを飲みつつ、答える。


「まずは皇帝陛下に魔王を討伐したことを報告しに……」

「いや、そういうんじゃなくて」

「? じゃあ、何?」

「二人共、結婚するのか?」

「ぶふっ!? ゲホゴホッ……」


 お父さんの口から出た予想外の言葉に、わたしは思わずアップルティーを吹き出してしまった。

 わたしがむせていると、アレンが優しく背中を擦ってくれた。


 わたしはティーカップをテーブルの上に置いて、咳き込みながらも聞き返す。


「ゲホッ……な、なんでそんなこと聞いてくるの?」

「だってアリシアももう十六才でしょ? 少し早い気もするけど、良い人がいるんなら……」


 お父さんの代わりにお母さんがそう答えるけど、わたしはある部分に引っ掛かりを覚えた。


「ちょっと待って、お母さん。わたしまだ十五才……」

「え? 忘れちゃったの? 今日はアリシアの誕生日よ?」

「え? そうだったっけ?」

「そうよ?」


 ……本気で自分の誕生日を忘れてた。

 だけどあれだけ忙しかったら、忘れても仕方ないと思う。


「その顔……本気で忘れてたわね?」

「あ……あはは……」


 お母さんにジィ……っと細い目で見つめられ、わたしは気まずくなって視線を逸らす。


「それで? アリシアとアレン君は、互いに結婚する気はあるのか?」


 お父さんが気を取り直して、再びそう尋ねてくる。

 わたしはアレンと顔を見合わせるけど、わたし達の答えは決まっていた。


 わたしは両親の方に顔を向けて、その質問に答える。


「……わたし達は―――」






アリシアの返答は……。




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