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第67話 VSヴリトラ 後編

前回のあらすじ

ヴリトラ討伐作戦が始まった

 

 音のする方へと向かうと、そこではすでに激闘が繰り広げられていた。


 天士の人達は隊列を組んで、自分の得物や魔法でヴリトラを攻撃している。

 その攻撃はほんの僅かに、だけど着実にヴリトラにダメージを蓄積させている。


 対してヴリトラは、人型ではなく竜の姿で天士達を迎え撃っていた。

 わたし達との戦闘で負ったダメージは回復していないようで、左翼は全て無くなっており、左半身は焼け爛れていた。

 だけどその分肉体的なリミッターが外れているようで、以前戦った時よりも凶暴さを増していた。


 ヴリトラは自らの周りを囲う天士達に向かって、その強靭な尾を振り回す。

 その一振りを受けて、天士達は次々と吹き飛ばされていく。


 するとヴリトラが、片方しかない目でわたしを見据える。

 そしてその目に、憎悪の炎を宿らせる。


「キサマ……勇者! 死ね!」


 ヴリトラはそう言うと、赤黒いブレスを放ってきた。


「《フリーズバースト》!」


 アレンが氷壁を生み出し、そこにブレスが衝突する。

 氷壁がブレスを阻んでいる間に、その射線上から退避する。


 わたし達が退避するのと、氷壁が突破されるのはほぼ同時だった。

 氷壁は派手な音を立てながら崩れ去るけど、わたし達には傷一つない。


「総員、退避! 勇者殿の邪魔をするな!」


 オロチさんが大声でそう命令すると、ヴリトラの周りにいた天士達が後退する。


 わたしは前髪を留めていたヘアピンを聖剣の姿に戻して、それを構える。

 わたしの隣に立つアレンも、二本の剣を構える。


 そしてわたしは、聖剣をヴリトラに向けて啖呵を切る。


「魔王ヴリトラ! 今日ここで、貴方を倒す!」




 ◇◇◇◇◇




 アリシアが啖呵を切ると同時に、僕はヴリトラへと接近していた。ヴリトラの死角となる左側からだ。

 そして両手の剣を平行して、ヴリトラの左前足を斬りつける。


 ここ三ヶ月、ヴリトラの硬い鱗を断つための技術ばかり研いてきた。

 そして研鑽の結果、最近では岩石竜の硬い鱗をたった一太刀で断つことが出来るようになっていた。


 そして、今―――。

 僕の剣は何の抵抗も受けることなく、バターを切るようにヴリトラの硬い鱗を断ち、そのまま左前足を斬り飛ばした。


「グオオォォォ!!」


 足を斬り飛ばされ、ヴリトラが悲鳴を上げる。


「《フレイムバースト》!」


 そして追撃として、ヤツの左前足の切断面に火属性超級魔法を叩き込む。

 するとヤツは僕の方へと首をもたげ、大きく口を開く。僕を噛み殺す気なのだろう。


 だけどその未来はやって来なかった。


「《ボルテクスバースト》!」


 ヴリトラの顔面に、勇者が放った雷撃が命中したからだ―――。




 ◇◇◇◇◇




 ヴリトラがアレンを噛み殺そうと首をもたげていたので、その顔面に雷属性超級魔法を叩き込む。

 雷撃を受けて、ヴリトラは大きく仰け反る。

 その隙にアレンは、ヴリトラから距離を取っていた。


 ヴリトラはわたしの方を見ると、ソレだけで人を射殺せそうなほどの鋭い視線を送る。


「キサマ……勇者。この左半身に刻まれた傷の恨み、返させてもらうぞ!」

「わたしこそ! わたし達の世界にもたらした被害、精算してもらうわよ!」


 わたしはそう言い、聖剣を握り締めてヴリトラに接近する。

 ヴリトラはわたしを近付けさせまいと、その強靭な尾を振り回してくる。

 あの尾を喰らったひとたまりもない。


 だけどわたしには、とても頼りになる騎士ナイトがいる。


 尾とわたしの間にアレンが割り込み、両手の剣を交差させてその尾を真正面から受け止める。


「行け、アリシア!」

「うん!」


 アレンの言葉を受けて、わたしは再びヴリトラに接近する。


「魔王、覚悟!」

「死ぬのはキサマだ、勇者!」


 ヴリトラはそう言うと、首をわたしの方に向けてブレスを放とうとしてきていた。

 その射線上には、尾を受け止めているアレンもいる。


「くっ……!? 《花鳥風月》!」


 ブレスが放たれる前に擬似魔獣化して、放たれた後にこの状態でしか発動出来ない妖術魔法を発動させる。


 ヴリトラのブレスとわたしが模倣したブレスがぶつかり合い、拮抗する。

 わたしはその状態で、更に魔法を放つ。


「《ボルテクスバースト》!」


 拮抗していたところに雷撃が追加されて、その均衡が崩れた。

 赤黒いブレスに稲妻が一体化して、そのままヴリトラのブレスを喰い破る。

 そして魔王の顔面に命中した。


「ガアアァァァ!!」


 ヴリトラは雄叫びに似た悲鳴を上げるけど、倒れるまでにはいかない。

 わたしは擬似魔獣化を解除して、聖剣を握り直す。


 それから身体強化魔法で脚力を強化して、ヴリトラの頭がある位置まで跳び上がる。

 そして聖剣を、ヴリトラの右目に突き刺す。


「ガアアアアアァァァ!!」


 一段と大きな悲鳴を上げながら、わたしを振り落とそうと頭を激しく振る。

 だけどわたしも、聖剣の柄から手が離れないように両手で力強く握り締める。


 そして決着を着ける一撃放つ。


「《ボルテクスバースト》!!」


 残った魔力を全て込めた雷属性超級魔法を、聖剣を通してヴリトラの体内に直接叩き込む。

 その攻撃を受けて、ヴリトラはより一層のたうち回る。

 だけどわたしも魔法を放っている間は、聖剣から決して手を離さなかった。


 そしてその時はやって来た。


 魔法の発動が終わって、わたしは聖剣から手を離す。

 そしてそのまま地面へと落下していく。


「おっと……」


 だけど地面に落ちる前に、アレンがわたしの身体を抱き留めてくれた。

 ヴリトラの方に目を向けると、ヤツはピクリとも動かなかった。

 だけどやがてその巨体がバランスを崩し、ゆっくりと地面へと倒れ込んだ。


 しばらくヴリトラの方を警戒していたけど、起き上がる気配はなかった。

 するとそれを見たオロチさんが宣言する。


「魔王ヴリトラは倒れた! 我々の、勝利だ!」


 オロチさんがそう宣言すると、周りから割れんばかりの勝鬨が上がった。


 するとわたしを抱き抱えているアレンから、声が掛けられる。


「お疲れ様、アリシア。今はゆっくり休むといいよ」

「うん……そうするね……」


 アレンの言葉に、わたしはそう返事をする。

 度重なる魔力消費量の多い魔法の発動で、わたしの体力も限界だった。


 そして周りの喧騒を聞きながら、わたしは大好きな男の子の腕の中でゆっくりと目を閉じた―――。






魔王、撃破―――。




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