第66話 VSヴリトラ 前編
前回のあらすじ
アルルの仕事に同行した
こちらの世界にやって来てから、三ヶ月が経過した。
今日もいつも通り天士団の詰所へと行くと、なんだか慌ただしかった。
するとちょうど近くをアルルさんが通り過ぎたので、彼女を呼び止める。
「あ、アルルさん。何かあったんですか?」
「ん? ああ、アリシアさんとアレンさんですか、おはようございます。……ええ、ようやくヴリトラの居場所が判明したんです」
「え!? 本当ですか!?」
わたしは思わず大声を上げてしまった。
「はい。なので今、部隊の編成や他里の天士団への協力要請などでてんやわんやしてるんです。ですから今日の貴女達の仕事は無し、ということで……」
「はあ……そうですか」
「すみませんね、わざわざここまで足を運んでもらって……。後ほどお義兄……団長から連絡があると思いますので、それまでは自由にしててください」
「はい……それじゃあ今日は失礼しますね」
そう言って、わたしはアレンと共に詰所を出た。
「……いよいよだな」
アレンは神妙な面持ちでそう呟く。
「ええ、そうね……」
一度目は、完膚無きまでに叩きのめされた。
二度目は、あと一歩のところでこの世界に逃げられた。
そして、三度目。
今度こそ、決着を着ける―――!
◇◇◇◇◇
ヴリトラ討伐作戦が実行に移されたのは、それから一週間後のことだった。
幸いにも、その間ヴリトラの居場所が変化することはなかった。
今回の作戦では、隣の里である金牛宮の里の天士団と協力することになった。
そして作戦の総指揮を、オロチさんが務める。
オロチさんが集まった天士達の前に現れる。
わたし達がいるのは、二つの里の間に広がる平原だった。
「この場にいる天士達よ。今回の作戦のために集ってくれたこと、感謝する。拙者は今回の作戦の総指揮を執らせていただく、白羊宮天士団団長のオロチと申す」
そこで一拍おいて、オロチさんは続ける。
「我々は今回、異世界へと逃亡し、そしてこちらの世界に戻って来た魔王ヴリトラの反応を捉えることができた。今次作戦は、この魔王を討伐することである。皆、全身全霊を以て作戦に従事して欲しい」
オロチさんがそう締め括ると、金牛宮側の天士団の方から手が挙がる。
「質問してもよろしいでしょうか?」
その言葉に、オロチさんは頷く。
「ああ、いいとも」
「それでは……今回の作戦は前回の作戦とは違い、魔王の討伐と仰っていましたが、何か勝算がおありなのですか?」
その質問に、オロチさんは即答する。
「ああ、あるとも。……白羊宮の連中はすでに知っていると思うが、この場で改めて紹介しよう。……二人共、こちらへ」
オロチさんに呼ばれ、アレンと共に彼の近くへと歩み寄る。
そして、目の前に集まっている天士団の方へと目を向ける。
「今次作戦の切り札とも言うべき二人だ。女子の方が、異世界の勇者であるアリシア殿。男子の方が、彼女と同等の力を有するアレン殿だ。二人はヴリトラが逃げ延びた世界、つまり彼女らが元いた世界で、ヴリトラをあと一歩のところまで追い詰めた確かな実績がある。それもたった二人きりで、だ」
オロチさんの説明に、金牛宮側の天士達がどよめく。
それだけヴリトラという存在が、とてつもないほどの強敵だったのだろう。
オロチさんが右手を挙げると、そのどよめきも徐々に収まっていく。
そしてそのどよめきが聞こえなくなった時、オロチさんは声高に宣言する。
「これより、ヴリトラ討伐作戦を開始する! 今日こそ、暴虐なる魔王を完全に討ち滅ぼす!」
◇◇◇◇◇
その後、天士達は各々の持ち場へと着く。
わたしとアレンは、作戦上はオロチさん直轄の遊撃部隊だった。二人しかいないけど……。
作戦としては、まず両天士団の天士を総動員して、ヴリトラの体力を出来るだけ削る。
体力を削ったところで、遊撃部隊であるわたしとアレンを投入するらしい。
そしてそのまま――ヴリトラを討つ。
ざっと作戦概要を聞いた後、わたしはオロチさんに質問する。
「あの、いいんですか? 異世界人であるわたし達に、トドメを任せてしまっても……」
「ああ、構わない。ヴリトラを確実に討伐するためにはそうするしかないのだ。こちら側の面子など二の次だ。貴殿らのその力、頼りにさせてもらうぞ」
「任せてください。僕とアリシアで、ヴリトラを絶対に討ち滅ぼします」
アレンはわたしの肩に手を置きながら、自信に満ちた表情でそう答える。
わたしも気を引き締めて答える。
「はい。わたし達の全力を魔王にぶつけます」
「ふっ……頼もしい返事だな」
わたし達の返事を受けて、オロチさんはフッと笑みを零す。
すると遠くから、戦闘音が聞こえてきた。
「……行こう」
オロチさんはそう言い、音のする方へと歩き始める。
わたしとアレンも、彼の後を追う。
わたし達が進む先には――魔王が、いる。
魔王と決着を着ける時が来ました。
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