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第63話 魔王の行方は……

前回のあらすじ

オロチの職場に案内された

 

「まあ、身内話はこのくらいで……。アレン殿、アリシア殿、拙者についてきてくれ。アルルは……好きにしろ」

「はい、お義兄……団長」


 アルルさんは途中で言い直して、返事をする。

 そしてわたしとアレンは、オロチさんについていく。

 と、その前に……。


「アルルさん。お茶、ご馳走さまでした。美味しかったです」

「お口に合ったようで何よりです」


 アルルさんにお礼を言ってから湯のみを返すと、彼女は微笑を浮かべる。


 そしてわたしは二人の後を追った―――。




 ◇◇◇◇◇




 オロチさんに連れて行かれたのは、とある部屋だった。

 その部屋には数人の天士達が詰めていた。


「この部屋では、行方を眩ましたヴリトラの居場所を捜索している」

「え? 行方不明なんですか?」


 わたしがそう尋ねると、オロチさんは頷く。


「ああ。こちらの世界に再び現れた後、ヤツの魔力反応が忽然と消失したのだ。今はこの部屋に詰めている天士達が、全力を挙げてヤツを捜索している」

「あ〜……。魔力反応が消えたのはたぶん、ヴリトラが大怪我を負ってるからじゃないですかね?」


 アレンがそう言うと、オロチさんは彼の方に目を向ける。


「そうなのか?」

「はい。アリシアと二人がかりでヤツを追い詰めましたから、間違いないです」


 そう言うと、オロチさんだけでなくこの部屋にいる天士の人達もアレンの方へと目を向ける。

 いったい何事かと思っていると、オロチさんが口をワナワナと震わせる。


「アレン殿……それは、真か……?」

「ええ、そうですよ?」

「……我々が他の里の天士団と協力して、百人規模の大部隊を組んでやっとのことで封印したヴリトラを、たった二人で追い詰めたと言うのか……」


 そう言うオロチさんの目からは、光が消えている……気がした―――。




 ◇◇◇◇◇




 ―――というわけでわたしは今、詰所に併設されている訓練場で、腕に覚えのある天士の人達と対峙していた。

 ……どういうわけで? わたしにも分からない。




 というのは冗談で、あの後オロチさんから正式に、ヴリトラ討伐の協力要請を受けた。

 わたし達としても願ったり叶ったりだったので、二つ返事で引き受けた。


 その後オロチさんが詰所にいた天士達に、わたし達に正式に協力を要請したことを伝えたけど、何人かは納得していない様子だった。

 騎士団と同じく実力主義の世界らしいので、それも致し方ないかな? とは思った。


 そこでオロチさんが、そんなに異世界の勇者の実力を疑うのなら、実際に刃を交えて体感してみろと宣言した。

 そして腕に覚えのある天士達が、わたしに戦いを挑んできたというわけだった。


 ……わたし、今日はアレンと決闘して疲れてるんだけどなぁ……。


 そんなことを思いながら、わたしは彼らの挑戦に受けて立った―――。




 そんな回想をしていると、一番手にわたしと戦う天士の人が、審判役を務めるオロチさんに話し掛けていた。


「団長、さっき言ったことは本当ですかい?」

「ああ、本当だ。もしアリシア殿に勝利したら、その団員には一週間の休暇を与えよう。もちろん、団長権限で、だ」

「よっしゃ! 俄然やる気が出てきたぜ!」


 ……職権濫用な気がしないでもないけど、天士達のやる気が上がるのなら、別にいいか……。


 そんなことを思いつつも、わたしは得物を構える。

 それを見て、相手の天士も武器を構える。

 相手の得物はわたしと同じ長剣だった。


「それでは――始めっ!」


 オロチさんの合図と共に、戦闘が開始した―――。




 ◇◇◇◇◇




 訓練場の壁にもたれ掛かりながら、アリシアの戦いを見守ることにした。

 彼女と手合わせしない天士達も、僕と似たように訓練場の隅で観戦するようだ。


「大丈夫なんてしょうか、彼女? 確か……アリシアさん、でしたっけ?」


 突然右隣からそんな声が聞こえて、そちらに目を向ける。

 するとそこには、オロチさんの義妹のアルルさんがいた。


 彼女は心配そうな表情を浮かべていたので、僕は笑って答える。


「大丈夫ですよ、アリシアは強いですから。あんなナリでも一応、僕達が元居た世界の勇者ですから」

「いえ、そうは言いますけど……」


 アリシアを身近で見てきた僕の言葉でも、アルルさんは納得していないようだ。

 なので多少強引だけど、アルルさんには彼女の実力の一端を見せることにした。


 僕は左腰に吊るした鞘から剣を引き抜くと、それをアルルさんの首元に宛がう。

 その状態で、彼女に尋ねる。


「アルルさん。僕の剣、見えました?」

「……いえ、全く。反応すら出来ませんでした」

「アリシアは僕の剣に反応するどころか、僕と互角に斬り結ぶことが出来るんです。そちらの天士団の団員の中で、僕の剣に反応出来る人はどれくらいいますか?」


 アルルさんは少し考え込んだ後、僕の質問に答える。


「……恐らく、お義兄……団長が辛うじて、でしょうか?」

「……今更なんですけど、オロチさんのことはお義兄さんと呼んでも、別に問題ないのでは? 団員の方達にも知られているでしょう?」

「そうなんですけど、職場ではお義兄さんのことを団長と呼ばないと怒られるんです……お姉ちゃんに」

「あ……そうなんですか」


 ククルさんの意外な面を知ったなぁ……と思いつつ、僕は剣を納めアルルさんに謝罪する。


「すみません。突然剣を向けたりして」

「いえ、アリシアさんの実力を間接的に垣間見たと思えば、別に怒るようなことじゃないですよ」

「そう言ってくれると助かります」


 そう言いつつアリシアの方に目を向けると、彼女が最初の挑戦者を吹き飛ばしているところだった―――。






主人公二人>天士百人。


こう見ると天士が弱いように感じられますが、彼らは決して弱くはありません。

ただ、相手が悪いだけです。

天士は冒険者ランクに換算すると、Aランク相当の実力者です(団長はSランク相当)。




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