第60話 最強は誰?
前回のあらすじ
死線(?)をくぐった
白羊宮の里にある建物は皆木造平屋で、わたし達の世界にある皇国の建物にとても似ていた。
と言っても、わたしの皇国に関する知識は前世止まりなので、今もこのような造りかは分からないけど……。
そう思い、アレンに尋ねようとした寸前に、わたしは思い留まる。
今日一杯は、彼と口を利かないと決めていた。
すると、なんだかいい匂いが漂ってきた。
その匂いの大元を辿って行くと、甘味処のようなお店があった。
オロチさんもソレに気付いたようで、足を止める。
「む……ちょうどいいな。あそこの甘味処で少し休憩しよう。あの店は、拙者の行き付けの店でな。味は保証しよう」
「そうなんですか、楽しみです」
そしてオロチさんについて行き、その甘味処に入る。
席に着くとすぐに、オロチさんは店員さんに注文した。
「すまん、注文いいか」
「はいはい……あ、オロチさん、こんにちは。……あら? こちらの方々は?」
「拙者の客人だ。今里を案内している。……っと、注文していいか?」
「はいはい。いつものを三つでいいですか?」
「ああ、頼む」
「味はどうします?」
「そうだな……あんことみたらし、それときな粉を頼む」
「畏まりました。すぐにお持ちしますね」
店員さんはそう言うと、パタパタと店の奥へと引っ込んで行った。
二、三分経った後、店員さんはオロチさんが注文した品を運んできた。
お皿の上には、白く丸い物体が三個並んで串に刺さったモノが三本並んでいた。それが三皿。
その上にはお皿ごとにそれぞれ、黒い粘土みたいなモノと茶色いタレみたいなモノ、それと黄土色の粉がかかっていた。
それを見たアレンが、ポツリと呟く。
「これは……団子、ですか?」
「ああ、そうだが……。そちらの世界にも団子はあるのか?」
「ええ、まあ」
「そうか……それでは、どれを食べる? 貴殿らが先に選んでいいぞ」
「それじゃあお言葉に甘えて。え〜っと……僕はきな粉でいいかな」
「それじゃあわたしはコレで」
アレンは黄土色の粉がまぶされたお団子のお皿を、わたしは茶色いタレがかかったお団子のお皿を手に取った。
最後に残った黒い粘土みたいなモノがかかったお団子のお皿は、オロチさんのモノとなった。
そしてお団子を一本手に取って、タレがかかった白く丸いモノを一個、口の中に入れる。
丸いモノはもちもちとした噛みごたえのある弾力をしていて、茶色いタレは甘く、その中に微かにしょっぱさも感じる。
控えめに言って――とても美味しかった。
夢中になってお団子を食べていると、スッと横からきな粉がまぶされたお皿を差し出された。
そちらに目を向けると、隣に座るアレンがどこか優しい眼差しをわたしに向けていた。
「僕の残りの団子、アリシアにあげるよ」
「…………なに? ご機嫌取り?」
今朝のことはまだ赦してないので、ついついキツい口調になってしまう。
すると彼は首を横に振る。
「いや? アリシアがとても美味しそうに団子を食べるからさ。それをもっと眺めていたいと思っただけ」
……なんだってこう、アレンは他人が聞いたら恥ずかしくなるようなことを、平然と口に出来るんだろう?
わたしは頬っぺたが赤くなるのを自覚しつつ、アレンからお皿を受け取る。
「しょ、しょうがないわね。このお団子に免じて、今朝のことは水に流してあげる」
こんな単純なことで赦してしまう辺り、わたしはアレンに甘いと思う。……決して食べ物につられたわけじゃないよ?
するとアレンは、どこかホッとした表情を浮かべる。
「うん、ありがとう。アリシアと口が利けないのは、死ぬよりもツラいことだったからね」
アレンはまた歯が浮くようなセリフを、平然と言ってのける。
それを聞いて、わたしはますます顔を赤くする。
「……拙者はいったい何を見せつけられているんだ?」
対面に座るオロチさんのその呟きは、聞かなかったことにした―――。
◇◇◇◇◇
アレンからもらったお団子も食べていると、オロチさんが不意に尋ねてくる。
「そう言えば聞いたことがなかったが……。アリシア殿とアレン殿は、いったいどちらが強いのだ?」
その質問に対して、わたしとアレンは声を揃えて答える。
「それはもちろんアレンですよ」
「そりゃあもちろんアリシアですよ」
……わたし達の答えはバラバラだった。
「え?」
「うん?」
そしてわたし達はお互いに顔を見合わせる。
「いやいや、アレンの方が強いでしょう? なんたって世界最強の冒険者なわけだし」
「それを言ったらアリシアは勇者じゃないか。それに僕と互角に斬り結べるヤツが、僕より弱いなんてことないだろう?」
「勇者なんてただの称号でしょう? 『勇者=最強』なんてことはないもの。ならやっぱり、アレンの方が強いわよ」
「そう言ってのけることが出来るアリシアの方が、僕は強いと思うんだけどなぁ……」
「待った待った。それなら質問を変えよう。貴殿らの世界で最強の人物は、いったい誰だ?」
オロチさんのその質問にも、わたしの答えは一択だった。
わたし達はまた声を揃えて答える。
「アレンです」
「アリシアです」
そしてわたしとアレンはまた顔を見合わせる。
「「だから!」」
「……結局、どちらなんだ?」
オロチさんのその質問に、明確な答えを出せそうになかった。
するとアレンが、わたしの耳元に顔を寄せる。
「……ねぇ、アリシア。僕達って、本気になって刃を交えたことって今までなくない?」
「……言われてみれば、そうかも」
「……だからさ。この機会に、どっちか強いかはっきりさせない?」
「……いいよ。手加減したら赦さないからね?」
「……臨むところだよ」
アレンはわたしから顔を離すと、オロチさんに向かって言う。
「僕とアリシア。どっちが強いかは、今から白黒はっきりさせますよ」
最強はどっち!?
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




