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第52話 異世界

お待たせしました! 連載再開です!




前回のあらすじ

偽りの魔王を追いかけたら異世界に転移した

 

 眼下には雲海が空の果てまで広がっていて、空には大小様々な大きさの大地が浮かんでいる。


 そんな現実離れした光景に目を奪われ、思考が停止していると、隣に立つアレンに声を掛けられる。


「大丈夫、アリシア?」

「え? う……うん、大丈夫。……一応聞くけど、冒険者として世界中を旅してきたアレンは―――」

「こんな場所は僕達がいた世界にはないよ」


 彼のその言葉で、わたし達が今いるこの場所が、正真正銘の異世界であることが証明されてしまった。


 彼と手を繋いだままわたしが倒れていた場所まで戻ってくると、聖剣が地面に突き刺さっていた。アレンの二本の剣も刺さっている。


 たぶん、この世界に転移した拍子にわたし達の手から離れて、そのまま地面に刺さってしまったのだろう。


 そんなことを考えつつ、アレンから手を離して聖剣を地面から引き抜く。

 そしてヘアピンの形に変化させて、前髪を留める。


 アレンも二本の剣を両腰の鞘に納めると、わたしに向かって言う。


「ここがどこだか分からないけど、とりあえず人里を目指そうか」

「うん、そうだね……そうしようか」


 彼の提案に、わたしは首肯する。


 そしてわたしとアレンはその場を離れ、人里を目指して移動を始めた。

 だけどわたしは頭の片隅で、別のことを考えていた。


 ……わたし達は、元の世界に戻ることが出来るのだろうか?


 そんな不安が、わたしの胸中で黒く渦巻いていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 アリシアと並んで歩いているけど、周りの風景はそれほど様変わりしていなかった。

 辺り一帯を芝生ほどの背の高さの草が覆い尽くしていて、その中を僕達は突き進んでいる。

 それと一応、いつでもナニモノかの襲撃に備えられるように索敵魔法も展開している。


 だけど……。


 僕はチラリと隣を歩くアリシアに目を向ける。

 アリシアは見るからに元気がなかった。


 恐らく……というかほぼ確実に、元の世界に戻れるかどうか分からなくて不安に思っているのだろう。


 僕は僕で生来の性格なのか、未知の世界に来たことに心躍らせていた。

 アリシア同様、不安も僅かばかりあるけど、そちらの感情の方が大きかった。


 でも僕とは違い、アリシアにはそんな余裕はないようだった。

 だから心配になって、彼女に尋ねていた。


「アリシア、大丈夫? 顔色が良くないみたいだけど……」

「え……う、うん! 大丈夫大丈夫! わたしは全然平気だよ!」


 両手を振ってそう答えるけど、明らかに空元気だった。無理して強がっているとも言える。


 その反応が本当に心配で、僕は足を止める。

 するとアリシアも、僕につられる形で足を止める。


「アリシア。僕の前でだけは、無理に強がる必要はないんだよ?」


 僕がそう言うと、アリシアはこれまでずっと張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、琥珀色の瞳から無色透明な綺麗な雫を流し始める。


「あ……あれ? わたし、なんで……」


 アリシアはそう言って目元を擦るけど、彼女の意思に反して涙は後から後から溢れ出してくる。


「う……ううう……」


 アリシアは両手で顔を覆い、嗚咽を溢す。

 僕は彼女に近付き、彼女の身体をそっと抱き締める。

 そして小さい子供をあやすように、彼女の背中を撫で擦る。


「大丈夫、大丈夫だから……。アリシアは一人じゃない、僕がついてる。だから……不安に思うことなんて、何にもないんだよ」


 アリシアにそう優しく語り掛けながら、彼女を安心させるように頭も優しく撫でる。


 すると抑え込んでいた感情が爆発したのか、アリシアは大声を上げて泣き始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 しばらくしてからアリシアは泣き止み、僕から身体を離す。

 目元は赤く、泣き腫らした跡が残っているけど、その顔はスッキリしたように晴れやかだった。


「……ありがとう、アレン。胸を貸してくれて……。泣いたらなんか、スッキリしたよ」

「どういたしまして。アリシアが元気になったみたいで良かったよ」

「うん……そんな優しいアレンが、わたしは好きだよ」


 アリシアはそう突然の告白をすると、ちゅっと僕の頬にキスをしてきた。


 本人にとってはお礼のつもりだろうけど、すごく困る。

 こんなことされたら……ますます惚れてしまうじゃないか。


 頬が赤くなっているのを自覚しつつ、僕は気を取り直してアリシアに促す。


「そ……それじゃあ、行こうか」

「うん……」


 そして歩き始めようとしたその時、アリシアが僕の手を軽く握ってきた。

 スッキリしたとは言っても、まだ少し不安が残っているのだろう。


 そんなことを思いつつ、その柔らかい手をしっかりと握り締めながら、僕はアリシアと一緒に人里目指して歩き始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 それからまたしばらく歩いていると、索敵魔法に反応があった。


「ん……索敵魔法に反応があった。アリシア、警戒してくれ」

「うん、分かった」


 アリシアとそう言葉を交わして彼女から手を離すけど、彼女は名残惜しそうに僕から手を離した。


 そんな反応を可愛いなぁ……と思っていると、索敵魔法に反応があった存在が上空から降下してきて姿を現す。数は十ほどだった。


 その存在は僕達と同じように人の姿をしていたけど、相違点もあった。

 彼らの背中からは、竜のような翼が生えていた。


 まるで半魔獣化した竜人族のような姿だけど、ここが異世界であること考えると、彼らはこの世界の原住民だろう。


 すると先頭にいた男が、携えていた槍を構えて穂先を僕達の方に向ける。


「怪しい奴等め! 我々が排除してくれる!」

「ちょっと待ってください! 僕達はあなた方と戦う気は……」

「問答無用!」


 僕の必死の弁明を聞き入れられず、彼らは一斉に襲い掛かってきた―――!






未知との遭遇。




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