第47話 魔剣士VS勇者
前回のあらすじ
アリシアは新たな力を手に入れた
扉を開けて中に入り、室内を軽く見回す。
中は薄暗く、天井も奥行きもはっきりと認識することは出来なかった。
するとどこかから霧が発生して、僕の目の前に集まってくる。
そしてその霧は徐々に密度を増していき、見知った人の姿を取る。
その人は金色の髪で、瞳は澄んだ青色をしていた。
そして両手には、二本の長剣が握られていた。
まぁ……端的に言って―前世の僕、つまり勇者アレクシスが僕の目の前にいた。
ついでに部屋の景色も、勇者が魔王を討った森の風景に変わっていた。
……自分が一番の強者だと思う人物が現れるとは言っていたけど、まさか前世の自分だとは……。
はっきり言って予想外だった。
僕が予想していたのはアリュシーザだったけど、違ったようだ。
……というかコレは、僕は無意識の内に前世が一番強いと思っていたってことでは……。
そんなことを考えていると、アレクシスが戦闘体勢を取る。
それを見て僕も鞘から二本の剣を引き抜き、アレクシスと全く同じ体勢を取る。
ジリジリと摺り足で互いの間合いを確認し、緊張感が最高点に達した瞬間に同時に動き出す。
最短最速で距離を詰め、左右の剣を振るう。
僕の右手の剣はアレクシスの頭目掛けて振り下ろしたけど、彼の左手の剣によって防がれる。
逆に彼が振り下ろした右手の剣を、僕は左手の剣で防ぐ。
防ぎ防がれつつ、僕達は一旦距離を取る。
そして再び接近し、剣を交える。
振り下ろし、斬り上げ、袈裟斬り、薙ぎ、突く。
受け止め、流し、かわす。
僕とアレクシスの間で、四つの剣が生み出す火花が綺羅星のように輝く。
自分が相手だからか、攻撃方法も同じだった。
だけど僕とアレクシスには、決定的な違いがあった。
それは―――。
余計なことを考えていたせいか、アレクシスの突きが頬を掠った。
僕は慌てて、この剣戟に意識を集中させる―――。
◇◇◇◇◇
何合、何十合、何百合と剣を交え、僕の剣筋から余計なモノが削ぎ落とされていく。
そしてその剣筋は……勇者だった時と同じになっていた。
だけどそれでも、勇者を超えるどころか並び立ってもいない。
呼吸を整えるために、一旦アレクシスから距離を取る。
「ハァー……ハァー……」
意識的に息を強く吐いて、吸った時に少しでも多くの空気を体内に取り込めるようにする。
いつの間にか汗もかいていたようで、流れた汗が頬の掠り傷に滲みる。
アレクシスはまだ本気を出していない。
なぜならあの時の僕は、あの魔法を使えていたからだ。
そして恐らく、彼の次の手は……。
そんなことを考えていると、アレクシスは剣先を僕の方に向ける。
そして右手の剣からは豪炎を、左手の剣からは極冷気を放ってきた。
その魔法は―《フレイムバースト》と《フリーズバースト》だった。
「くっ……!? 《ギガファイア》! 《ギガアイス》! 《レジスト》!」
焼け石に水だけど、火と氷の上級魔法で出来るだけ威力を落とし、耐属性魔法で僕に襲い掛かった炎と冷気に耐える。
それらが消えた後、僕は剣を支えにしてなんとか立ち続ける。
耐え切れずに軽い火傷と凍傷を負ったけど、超級魔法が相手ではコレでもダメージはすごく軽い方だった。
満身創痍な僕を前にしても、アレクシスは動かない。いや……動こうとしない。
僕を倒す絶好のチャンスであるハズなのに……。
とその時、僕は学院長の言葉を思い出した。
彼は言っていたじゃないか。コレは『試練』だと。
ならアレクシスは……僕が前世を超えることを望んでいる。
そう思うと、フッと口元が緩む。
……まったく。偽者だとしても、お人好し過ぎるだろう、僕……。
それならば、その期待に応えるしかないじゃないか。
そう思い、僕は支えにしていた剣を地面から引き抜く。
そして今世での相棒達の先端を、アレクシスの方に向ける。
それから目を閉じて、ゆっくりと呼吸を整える。
そんな隙だらけの僕を前にしても、やはりアレクシスは動かない。
これからやることは、今までの僕では出来なかったことだ。
だけど何故だろう……なんだか出来る気がする。
呼吸が落ち着いたその時、カッと目を見開く。
そして左手を引いて右手だけアレクシスの方に向け、あの魔法を発動させる。
「―――《フレイムバースト》!!」
右手の剣から豪炎が発生し、アレクシスに襲い掛かる。
彼も《フレイムバースト》を発動させる―けど、僕の方が上回った。
そしてそのまま炎は直進し、アレクシスの右腕を丸ごと呑み込み炭化させる。
僕は右手を引いて、今度は左手をアレクシスに向ける。
間髪入れずに、もう一つの魔法も発動させる。
「―――《フリーズバースト》!!」
左手の剣から極冷気が発生し、再びアレクシスに襲い掛かる。
彼も同じ魔法で迎撃を試みるけど、さっきの二の舞だった。
極冷気はアレクシスの左腕を呑み込み、氷像へと変えた。
僕の攻撃はまだ終わらない。
両手の剣に豪炎と極冷気を纏わせたまま、アレクシスに最短最速で接近する。
「はあああっ!!」
そんな掛け声と共に、両手の剣をX字に振り下ろす。
アレクシスは最後の足掻きとして防御魔法を発動させるけど、そんなモノは紙同然だった。
防御魔法ごと、僕はアレクシスの身体を斬り伏せる。
X字に斬り裂かれたアレクシスの顔には……笑みが浮かんでいた。
「―――アリシアを、今度こそ、必ず……」
遺言が言い終わる前に、彼の身体は霧散した。
それと共に、森の中の風景から元の薄暗い部屋の中へと戻っていった。
アレクシスが言いかけたことには、見当がついている。
「……分かってるよ、アレクシス。どんな敵が来ようとも、僕は今度こそ必ず、アリシアを守り切ってみせる」
全盛期の力を取り戻した僕は、そう前世に誓いを立てた―――。
前世の力を手に入れた(取り戻した?)アレン。
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