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プロローグ

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・」


 鬱蒼と木々が生い茂っている森の中、何か大きな存在から逃げているものがいた。しかし、その進みはそのものが思っている速度よりもはるかに遅い。なぜこんなにも進みが遅いのか。視線も低く、やけに周りのものが大きく感じている。


「キェェェェェェェェ!!!」


 その大きな存在はとてつもなく大きな鳴き声をあげ、逃げているものに突進していく。大きな爪が逃げているものに突き刺さる。そこで逃げているものの視界は暗転する。





 

 ◇◇◇





 

「うわあああああ!!!」

「うるさいわよっ!!」

「ごめん、母さん」


 ひどい夢を見た。なにかとっても大きい生物に追いかけられて最後には殺される夢。


「不吉な夢だな・・・」

「所詮は夢でしょ。さっさと学校行きなさい。遅刻するわよ」

「へい」


 まあそうだよな。所詮は夢だな。いちいち気にしてたら仕方がないか。


 いつものリュックを背負っていつものように憂鬱な気分で学校へ行く。何も変わらない、何も。


 学校について自分の靴箱を開ける。


 ポロッ。


「懲りないな」


 自分の靴箱からお菓子のごみが落ちる。靴箱にはごみがたくさん詰められていた。


「よう、能無し。今日もごみ詰められてかわいそう。私が片づけてあげよっか?」

「必要ない。自分で片づける」


 犯人はたぶんこいつだが、別に怒ったりはしない。なぜか俺に嫌がらせをしてくる女。長身で長い髪を後ろでくくっている、目はきりっとしていて顔は整っている。名前は何だったかな。まあ、どうでもいいや。


「ふーん。つまんないの。なんか反応しろよ」


 ごみを片づけて何も言わずその場を去る。反応するだけ無駄だ。なぜ俺にこんなに嫌がらせをしてくるのかは謎だが、別に興味はない。これをされて傷つくやつもいるだろうが俺は別に気にしない。反応したらどうせ面白がってエスカレートして面倒くさくなる。それは避けたいな。時間の無駄だから。


「ねえ、ねえ、待ってよ」


 無視だ無視。


「ねえ、おいっ、待てって」


 この女は短気なのだろうか。無視しただけですぐ口調が強くなる。


「なんでなんも反応しないのよ。なんなのよ。気持ち悪いんだけど」

「別に」


 時間の無駄だ。この短気で意地の悪い女にかける時間があれば英単語の一つや二つ覚えるさ。

 

「なによそれ」


 特に返す言葉も見つからなかったから、またもや何も言わずその場をあとにする。今度は追ってこないようだ。何も言わず立ち尽くしている。

   

 教室に到着する。ドアを開けて中に入る。誰かにあいさつすることも誰かから挨拶されることもない。特別仲のいい友人もいないし、ましてや恋人なんかいやしない。ただ、ぼーっと授業受けて終わったら帰るだけ。


 俺は特別勉強ができるわけでも、運動ができるわけでもない。普通の人間だ。普通に進学して、普通に就職して、そのまま定年まで働いて、さっさと死ぬ。それだけ。自分の人生に何か期待しているわけでもないし、輝かしい未来とかも想像しちゃいない。


「あいつやっぱ静かすぎて不気味だしキモくね?」

「おい、やめろよ、聞こえたらどうすんだ」


 全部聞こえている。こちらから何かをしているわけでもないのに過剰に反応する。なぜそんな無駄なことをするのだろうか。意味がないことをする理由はなんなんだ?いや、こんなことを考えるのも時間の無駄か。


 授業中、俺は端っこの席で外を眺めていた。


(なんか今日は変な気分だな。空もなんか薄暗いし)


 午前の授業が終わり、昼休憩はすぐに時間が過ぎ、午後の体育の授業。更衣室で着替える。なぜかほかの男子たちは俺の近くでは着替えようとはしない。別に害を与えたりしないのに。


 「今日はサッカーをするぞ!」


 体育の教師が張り切って言う。この教師は昔、サッカーの育成チームに入っていたらしい。だから張り切っているのだろうか。


 俺は、サッカーみたいなチーム戦は苦手だ。どうにも連携が取れない。ほかのやつらは運動ができなくてもそこそこ連携が取れているのに。なんでだろうな。


「いっち、にっ、さん、しっ」


 体育委員の声が響く。


 何事もなく準備体操が終わり、少しリフティングの練習をした後、チームに分かれて試合をする。クラスでサッカーするときのあるあるなのかは知らないが俺みたいな下手くそはキーパーをやらされる。いかにもイキっているような男子に押し付けられてしまった。まあ、別に前に出て目立ちたいわけじゃないからいいけど。うまいやつらは隣でソフトボールをやっている女子たちの方をちらちら見ながら自分の実力をひけらかしてやがる。


 ただ、いつも通り、体育の授業を受けている。


 でも違和感を感じる。空気が悪いのか天気が悪いのか、なんなのだろうか。妙な気分だ。


 「なんか、あれこっち向かってね?」


 俺の隣にいるやつが突然空を指さし、言う。空を見上げると猛スピードでこちらに向かってくる物体があった。あれは、いんせ———


 ドゴオオオオオオオン!!!!!!!!


 その日、突如飛来した隕石により、グラウンドで体育の授業を受けていたクラスの生徒32名、体育教師男女1名ずつが命を落とした。

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