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2-7 正当な理由




「何でだよ。確かにパッと見じーさんと幼女のべたべたしまくってる図はヤバいけど。良かったことは良かったんじゃないのか」

 グウェンにとっては良かった。だが、彼女の新しい生にまで干渉することは、グウェンの独りよがりなエゴだったのかもしれないと思わないこともない。

「リラ嬢は元々、生まれた時から偏食気味だったという。恐らく、無意識ではあっても前世の記憶が身体に影響していたのだろうとは思うが」

 だが、それでもそれは今に比べればマシなものだったのだ。

「彼女は私と再会したことで、全ての記憶を取り戻した。そこで自分が食べ物を拒絶する“正当な理由”を見つけてしまった」

 それまではしっくり来ないながらも食べなくてはいけないものだったのが、そうではないのだと認識されてしまった。説明できる理由を彼女は手に入れてしまった。

 そのせいで、明らかに彼女の“偏食”には拍車がかかったのだ。手を付けられないレベルにまで発展した。



 本当は、前世など正当な理由になどなり得ないのだ。

 だってそれはもう終わったことだから。その身体は正真正銘人間のものだから。

 人間である以上は、食べるものは食べなくてはならない。食卓に並ぶ全ては、基本的には食せるものだし、食すべきものだし、そちらの方に正当性があるのだ。



 だが、彼女はそのことを解さない。自分の中で燻っていた違和感が解決されたことに、全ての意識や感覚を持って行かれてしまっているから。



「私と再会しなければ、ここまで酷くなることもなかったのにと、そう思いはする」



 こういう時、思う。

 リラ嬢は“彼女”ではないのだと。人間の、まだたった五歳の女の子なのだと。

 けれどグウェンはそれを認識しているのに、正解を見誤る。前世の記憶と今持つ身体を別個に扱えない。



 分かっている。リラ嬢は“彼女”ではない。

 けれど、ただの五歳の女の子でもない。

 境目がどこにあるのか、時折グウェンも分からなくなる。



「でもじーさんに会わなかったら、記憶を取り戻さなかったかもしれないんだろ。そうしたらリラは自分の中の違和感を説明する術を、納得する機会を一生持てずに、訳もわからず苦しみ続けたかもしれない」

「そうだな」

「一旦状況は酷くなったかもしれないけどそれが全てじゃないし、これから先納得して改善していけるかもしれないって考えたら、悪いことだって決め付けるのは早計じゃないか」



「君は優しいことばかり言うな」

 向けられたフォローにそう微笑み返すと、

「あ、でもオレは五歳児と年齢三桁~四桁疑惑のじーさんとのただならぬ関係は推奨してないから。オレの目が黒いうちは、厳しく取り締まるから!」

 照れ隠しなのか、拳を握りながら前のめりに忠告された。



 和馬は本当に可愛らしい人間だと、そう思う。



「私にだってそれくらいの分別はある。これでも私は人間のルールを重んじるタイプの吸血鬼なのだよ」

 リラ嬢が彼女でないときちんと区別するのなら、彼女はその身に相応しい人間の男をそのうちに選ぶかもしれない。そういうことも、頭に入れておかなければならない。

「人間のルールを重んじるタイプの吸血鬼、ねぇ」



 自分一人の屋敷に彼女を迎え入れてしまわなくて良かったと、グウェンはそう思う。

 話し相手がいるということは有難いことだ。

 気付きを得られ、頭と心を整理できる。とても大切なことだ。





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