作戦2
妄想殺人がまた始まった。
「その前に武器は何使う?」
「スマートフォンと鉛筆よ。あとは拳銃よ。」
「拳銃意外武器になるの?」
「スマートフォンは鈍器じゃなくてもいくらでも武器になるわ。何か困ったら近くにあるものを武器にする。」
「場所はどこにする?」
「今回も学校でいいよ。」
「分かったわ。そうと決まったなら始めるよ。」
私の手がアルファベットにくっつく。
妄想の世界に入る。私は学校にいた。まずはルーシーにミラを装って学校に来るよう命じた。もちろんミラのスマートフォンは盗んでいるし、パスワードも把握済み。
「もしもし、ミラ?校舎ついたけどどこにいるの?こんな時間に面白いものって何?」
私は何も答え無かった。喋ったら私だとバレてしまう。すぐに電話を切った。何度も電話をかけては無言電話をした。ルーシーは何回も続く電話に苛立っていた。
「サラ、電話をかけて。」
「良いわよ。何を言えばいい?」
サラに私の考えたセリフを教えた。ルーシーのスマートフォンが鳴り響く。
「何なのよ?ミラの奴…もしもし、ミラ?いるなら答えてよ。」
「その女は今始末するところなの。」
「ミラをどこにやったのよ!答えなさいよ!」
「その女は今、図書館にいる。その女の命を救いたいなら今すぐ図書館に来い。」
「図書館の何回なのよ?」
「教えないわ。せいぜい頑張ってね。」
サラは電話をしながらニヤついていた。その頃ルーシーは図書館の方に移動した。図書館はすでに私が開けた。
「ミラ、いるなら答えなさい。ミラ。人質の奴見つけたらぶっ殺してやるわ。とにかくパパに電話しないと。」
もちろん電話はつながらなかった。焦ってるルーシーにボールを投げた。床に置いた本で彼女は転ぶ。彼女が拾い上げると本にここにはいないと書いてあった。
「誰だよボール投げたのは。」
今度は足元に本がもう一冊あった。そこにはここにはいない、2階にいると書いてあった。
「2階にいるのね。」
2回に着くと、本がまた一冊足元にあり、3階にいると書いてあった。そんな彼女に電話をかけた。
「今、3階にいるの。フロアにある1冊の本が落ちてる。その近くであの女を拘束してる。せいぜい頑張りな。」
「ちょっと待てよ。」
ルーシーが話さないうちに電話がきれた。彼女は振り回されまくり、さらに苛立った。走って本を探すが中々見つからない。そして本につまずきまた転ぶ。
「今度は何?「私達は一回に移動した。あの女が出れないように図書館は施錠した。」だと?今度も嘘ついてるに違いないわ。」
そしてまたサラが電話をする。
「嘘なんてついてないわ。」
「ルーシー、助けて。早く。ナイフで刺殺されそう。早く!」
私はミラを装い、悲鳴をひたすらあげた。
「これでも助けない?もしあの女を助けるのをやめて脱出したり、指示を無視したらお前も一緒に殺す。」
「何言ってんだよ。」
「そんなに怒っていいのかな?」
「痛い!」
「ミラに何した?」
「痛い。」
「あんたが言うこと聞かないからボコボコにぶん殴ってるの。次反抗したら、どこかナイフで刺してやる。」
ルーシーは私達の演技にまんまと騙された。彼女が玄関先に行くと一つの本が落ちていた。表紙に15ページを開いてと書いてあった。さらに15ページを開くと、47ページを開いてと書いてあった。。47ページを開くと13ページを開いてと書いてあった。
「何なのよ、あいつ。あったわ。「生物と地学の棚の間に来て。」だって。もう何なのよ。」
だんだんルーシーは動きが鈍っていた。彼女が指示した場所に来ると私は硬い石を投げた。彼女は倒れてしまった。そして本棚を全部倒した。彼女は本棚の下敷きになった。ルーシーは動けなくなっていた。
「何すんだよ。おい、助けろよ。」
「サラ、今よ。」
「分かってる。」
私とサラは倒れている本棚に向かってたくさんの本を投げた。どんどん本が積もっていく。ついに山になってルーシーは声すら出せなくなった。それを写真で撮り、クラスメートに一斉送信した。私の妄想はこれで終わる。私の妄想は前と同じで残虐性があった。
「今回もスリルがあって楽しかったわ。結構才能あるわね。」
いけないことなのにサラに褒められて私は嬉しかった。
「それより、何で私の妄想の世界に入れるの?」
「私は世界には入ってないわ。全部ゾーイの考えたことじゃない。前に言ったよね。私、人が何考えてるか分かるって。」
「超能力とかじゃないの?」
「そう言われることはあるけど、人の心を読むのが得意なだけの。一日見たらどんなこと考えてるかすぐ分かる。つい最近身についた。」
私には彼女が何考えてるか分からない。でもサラは多くの人達に傷つけられて、苦難を乗り越えたことだけは分かる。
「ねえ、サラの両親ってどんな人?」
「私、両親いないの。ホームレスだったから、いるわけないでしょ。」
「聞いてごめん。傷つけたつもりはなかったの。」
「気にしてないけどね。私から両親を捨てたの。」
「どういうこと?」
「家出したの。もうずっと前の話だけど。それからずっとホームレス生活よ。もう両親の顔も忘れた。」
両親に会いたいかどうか聞こうとしたが、これ以上聞いたらサラの気分が悪くなると思いやめた。
ハーパーがノックした。
「お嬢様、夕飯の時間です。食べる前に必ず手を洗いなさい。」
水道では手を洗いつつ、お互い水をかけあってふざけていた。
「お嬢様。そんな無駄使いいけません。タオルをご用意したのでこちらで拭いてください。」
「ハーパー、気がきくのね。」
「私はあくまでメイドの仕事をしているだけです。サラお嬢様の同居を受け入れたのメイドとしての判断です。」
「そんなメイドいないでしょ。」
サラは笑っていたが、ハーパーは無表情だった。私達はすぐに夕食を食べた。珍しくデザートもついていた。クリームブリュレだった。
「デザートなんて珍しいね。」
「たまには甘いものだって作ります。」
「今度教えてよ。」
「かしこまりました。材料が揃っている時に教えます。」
ハーパーは相変わらず真面目だ。時々口うるさい所はある。
しばらく学校に通うとフランクが不登校になっていた。誰とも連絡が取れなくなっていた。カッコつけて、犯罪にでも手を染めたのだろうか。
ある日、学校に着くとルーシーとミラにさっそくいじめられた。私が強いのは妄想の世界だけ。すぐに教室に入ると、またフランクはお休みだった。フランクが休みのせいか、男の主犯格はアダムになった。
「皆様、授業始める前に落ち着いて聞いてください。」
「十分落ち着いてんだけど。」
「もしかして授業休みとか?」
「休みの連絡でしょ?」
皆、はしゃいでいた。
「静粛に。そんな話ではなく、もっと重大な話です。もうご存知の方もいますが、今朝フランク・ギビンズ君が自宅の前で飛び降り自殺をして亡くなりました。」
「何だよそれ。そんな自殺するような奴じゃないだろ。」
「嘘なんて一言もついていません。」
「何でよりよってフランクが死ぬの?」
「ゾーイ、何かお前復讐とかでもしたんじゃないか。」
私は妄想の中で殺人をしていたので焦ったが、直接は関与していない。周りに睨まれて固まってしまう。
「アダム、そんな言い方ゾーイに失礼よ。まだ何が原因でそうなったのか分からないの。警察が今事情聴取しているところなの。何か心当たりある人は先生にすぐ言ってください。」
しかしながら私は同時にいじめっ子が1人いなくなったことに安心した。
授業が終わると取り巻きの男子達が話していた。
「まさかアイツが自殺するなんて。」
「まあ俺達もあいつに言いように使われてから、そんな死に方して当然じゃないか?」
「それ言えてる。」
「流石にそれは言いすぎだろ。」
「だけどフランクがいなくなっても、アダムがクラスを牛耳ってるもんだろ。」
主犯格と取り巻きの関係なんて、そんなもんなのかもしれない。お互い都合の良い人達。まだクラスはフランクの話題でもちきりだった。あっという間に一日は終った。




