変化
ある日の休日、両親が久しぶりに家に帰ってきた。サラの靴を適当な場所に隠して、サラにはクローゼットに入って貰った。
「ゾーイ、入っていい?」
「まだ部屋片付いてないから待って。」
部屋をキレイにして母親を部屋にいれた。ハーパーはサラのことを両親には話さなかった。
「久しぶりね。元気?お母さん、色んな会議の通訳してるから中々家に帰れなくて、ごめんね。」
「別に良いよ。もう子供じゃないんだし。」
「学校はどうなの?」
「大したことはしてないけど、何とかやってるよ。」
母親に適当な嘘をついた。
「良かったわね。勉強も頑張ってるし、新作のタブレットプレゼントするわ。」
「ありがとう。」
プレゼントなんて久しぶりだった。一人っ子なので小さい時はよくいっぱい貰っていたけど、今はほとんど貰ってなかった。
「今日は3人でご飯に行こうか。」
レストランに私達は行った。
「お父さん、久しぶり。」
「ゾーイ。ちゃんと勉強してるか?」
「何とかね。」
「お前は特に勉強しないと未来なんてない。苦労したくないならとにかく勉強しろ。」
父親に褒められたことはなく、悪い成績を取ればけなされていた。
「分かった。」
「分かれば良いんだ。メイドはどうだ?上手くやってるか?」
父は私のいない所では顔に魅力がないから、勉強しないとどんな仕事にもつけないし、ろくな結婚が出来ないと言ってる。
「一日家政婦いなくても、自分のことは自分で出来るよ。」
「私達はゾーイのことを大変にならないと思ってメイドを雇ってるのよ。」
久しぶりに会うのに、成績とかの話ばかりで楽しくない。
「同じクラスのミラをもっと見習って、もっと努力しろ。何もかも完璧だろ。お前は何も取り得ないんだから、ミラをもっと見習って勉強しろ。」
私と会うたびに、ミラと私をいつも比較してくる。私がミラみたいな娘なら、父はもっと私を可愛がっていたんだろう。ミラは私と違って顔も良くて、男の子にもモテて、勉強も出来て、スポーツも出来る女の子。彼女の両親はそんな彼女を常に褒めては甘やかしている。
「何で何も取り得ないと思うの?」
「何も結果を出せてないからだ。そんなの聞かなくても今にも分かるだろ。いつまでも子供の女性じゃないんだ。」
私の変化は父は少しの変化くらいにしか思っていない。説教ばかりしてるけど、私になんて最初から期待してないなんてもう分かりきってる。私はうんざりして、ずっとサラの人形を見ていた。サラの人形を撫でると、サラの頭を撫でている感じがした。
「ゾーイ?何見てんだ?」
「ちょっと考え事してただけだよ。」
食事がどんどんテーブルに並べられる。
「ゾーイ、この人形自分で作ったの?」
「そうよ。服を直すついでに、人形も作ったの。」
「昔から裁縫とかが好きなのね。」
「お母さんより得意だけどね。」
「お母さんはそこまで出来ないわ。ゾーイのもの作り好きはおばあちゃんによく似てるわね。」
「プロのデザイナーには程遠いけどな。勉強不足だから仮にお店を開いても経営にも苦労するだろ。お父さんの言うとおりに生きれば良いんだよ。」
私は父のようになりたくないと内心では思っている。アドバイスしてるつもりなのかもしれないけど、こんな娘持って恥ずかしいと思ってるのがバレバレだ。
「そんなのやってみないと分からないわ。もしかしたらこの子も将来成功するかもしれないのよ。」
「どうだかね。」
楽しくないレストランの食事は終った。次の日両親は仕事に戻り、私とメイドとサラの奇妙な共同生活に戻る。
「ハーパー、サラのこと追い出したりしないよね?」
「そんなのしません。メイドとして適切な判断でサラお嬢様をここにいさせてます。」
「両親にバレたら、一発で追い出されるから、絶対に言わないでよ。約束だよ。」
「かしこまりました。」
クローゼットを開けるとサラが疲れていた感じだった。
「いつまで私をクローゼットに閉じ込めるの!」
「ごめん。でもサラの為でもあるの。両親にバレたらまたホームレス生活に戻るのよ。またあんな危険な目にあいたいの?」
「別に。あんな生活大したことない。自分の身が大丈夫だったんだから。」
サラはやっぱり強かった。それにサラと離れたくなかった。
「ゾーイ、両親と会ったのに何か楽しそうじゃないわ。」
「そう見える。」
「顔見れば、何考えてるかくらい分かるよ。」
詳しくサラに事情を話すことになった。
「私がそんな父親持ったら、家出したくなるわ。そう言う奴らは社会人として立派な振る舞いを見せてるけど、実際は中身がペラペラな奴らだもんね。その父親もターゲットにしてみたら?」
「そんなのメチャクチャだよ。」
あれから1週間が経った。学校に着くと、いつもと変わりのない悲惨な日常だった。フランクがわざとぶつかってきた。その様子を皆で笑っていた。彼が私が立てるように手をさしのべたと思ったら、私のことをひたすら引きずり回した。皆でその様子を写真で撮る。
「床しか友達いないんじゃないの?」
「何それ?惨めにも程があるでしょ。」
「もっとやれ。」
私がいじめられてる様子を見る人達がどんどん増える。先生達が来ると皆すぐに立ち去った。
「ここで何してる?」
「いえ、転んだだけです。」
教室に入ると、皆で私を見て噂話をしている。
「ゾーイって、あんな顔でシュガーダディーがいるのよ。」
無理矢理合成で作られた写真がホワイトボードに貼ってあった。援助交際をしていないのに、デマを流されてしまった。さらに皆のスマートフォンが鳴り響く。
「ねえ、あんた親父と援交してるの?」
「ていうかあんたの事を援助するダディーがいるなんて、世の中物好きもいるのね。」
ルーシーが私の前にスマートフォンを見せる。
「あんた他にもダディーがいるのね。」
合成写真が皆の携帯に一斉送信された。
「私はそんなことしてない。」
「こいつ援交してるなんて犯罪者だよ。顔も汚ければ、やってることも汚いのね。」
自分達は親に車など買って貰ってるけど、同じことを言えるのかと内心思った。
「私は本当にやってない。」
「嘘つくな!」
ルーシーに私は押し倒された。
「顔だけ見せなければいけるのかもね。」
「何それ?」
私は女子トイレにこもった。サラの人形をひたすら見つめていた。
「サラ、来てくれる?」
そんなことを言ってもサラは来ない。誰がトイレに入った。
「ねえ、あの写真誰が撮ったの?」
「写真を撮ったのは私だけど、ただの合成よ。」
ルーシーと取り巻きの女子だった。おそらくメイクを直しているんだろう。
「ルーシー、悪だね。でも面白い傑作だった。」
「あんな女に男が出来ても、まともな男が寄りつかないなんて目に見えてるでしょ。この前、アダムに偽の告白されててあの期待してた顔見た?」
「あれも同じくらい傑作だったよ。本当に彼氏出来たことないんだね。というか、男の子とまともに話したこと無いんじゃないの?」
中々トイレに出れそうな雰囲気では無かった。いっそのこと消えてしまいたいけど、そんな勇気もない。これ以上何が待ってるのかも予想できない。
誰も見ないだろうけど、トイレの壁にサラのイラストを描いた。描き終わるとサラから電話が来た。
「もしもし?」
「今日ちょっと帰りが遅くなるの。ハーパーに言ってくれる?」
「分かった。」
そんなある日、フランクは学校を休んだ。私はいじめの主犯格が一人いないから安心していた。しかしルーシーとミラは私に酷いことをしてくる。また家に帰るとサラに勘づかれる。
「その顔は相当酷いことされたのね。ターゲットの名前を一人パズルで書いて。」
「分かった。」
今度はルーシーの名前を並べた。
「あの援交のデマを広げた犯人ね。」
「今回でもう終わりにしたい。」
「もう戻れないわ。始めよう、妄想殺人を。」
二人の手が重なり合う。




