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アメリカンガールズと妄想殺人  作者: ピタピタ子
13/17

誕生日

テーブルにケーキと紅茶が並ぶ。

「このケーキ、サラお嬢様と作りました。」

「カフェのケーキよりは美味しいはずよ。」

ケーキを自分の口まで運ぶ。程よい甘さが口の中に広がる。

「ハーパーの几帳面さのおかげで、上手く出来上がったわ。」

誕生日だけど、両親は二人ともいない。母は夜に帰ってくる。高校に入ってからは、誕生日を一緒に祝わなくなった。サプライズされるまで、自分の誕生日を忘れていた。誰も祝ってくれないと思っていたから嬉しかった。

「全部、サラお嬢様が企画してくれました。」

「サラありがとう。」

私はサラに抱きついた。30秒間、1分間、そして3分間サラを抱き続けた。

「苦しいよ。」 

「ごめん、嬉しくてつい。」

パーティーが終わると皆帰った。サラをクローゼットに隠して、今度はお母さんと誕生日パーティーをした。

「ゾーイ、おめでとう。」

「お父さんは?」

「今日も仕事よ。」

「私の誕生日なのに?いつもいないよね。」

母は静かになった。私を見つめる。

「お父さんがいなくても、私がいるからね。ずっとそばにはいられないけど特別な日くらい一緒にいる。」

父とは一体何なんだろうか。私の中で疑問が浮かび上がる。

次の日、学校に行くとまた校内が大騒ぎになった。シンディーが私に声をかける。

「ゾーイ、おはよう。昨日のニュース聞いた?」

昨日は誕生日で何もニュースを聞いてなかった。

「何の話?」

「ミラがある男に刺し殺されたみたいなの。」

昨日の夜、ミラの自宅に不審な男が侵入して彼女を刺殺した。男は今朝逮捕されて、取り調べ中だ。

「何でうちのクラスばかりなんだろう?」

「確かにそうよね。」

他のクラスメートも話に入る。

「犯人はクラスの誰かだったりして。」

「やめてよ。」

「そうじゃなくても、ヤバイ奴らが街にいるんだよね。」

クラスメートの何人かは恐怖で震えている子もいた。

「フランクの場合は自殺だよ。何が起きたかは分からないよ。」

皆をおいて、トイレに行った。普段よりトイレが入りやすくなった。トイレの壁にまたサラの絵を描いた。

「学校でも一緒だよ。」

壁に描いたサラを撫でる。トイレを出るとイーサンと会った。

「今日、俺の友達とカフェとか行かない?」

「良いよ。うちの高校の女の子じゃないけど、一人呼びたい子がいるんだ。呼んでもいいよね?」

「うん。」

放課後、サラと待ち合わせして、イーサンともう一人の男の子と合流した。

「私の友達のサラよ。」

「よろしく。」

彼女はイーサンともう一人の男子に握手をする。

「まずはカフェでも行こうか。」

カフェに寄ってすぐにコーヒーやスイーツを頼んだ。

「こうやって、4人でカフェなんてはじめてだわ。」

「私もよ。お二人とはとはもう長い付き合いなの。」

「数日前、知り合ったばかりなんだ。」

イーサンが答える。

「そう。」

サラが話を切り出した。

「イーサン、私あんたと1回あったことあるわ。」

サラはイーサンをじっと見た。

「君と僕が?そんな子はじめてだと思うけど。」

「会ったつもりがなくても、記憶の奥底には残っているものよ。」

「とにかく君とは会ったことないよ。それより、ゾーイのクラス大変だな。」

「何が?」

「もうクラスメートが3人も死んでるんだぞ。これ以上良くないことが起きないと良いが。」

「私は大丈夫よ。」 

「その通りね。ゾーイは人の恨みを買うような子じゃない。」

「確かに人気者って羨ましく思うけど、良いことばかりじゃないな。」

「人気者?皆怖いからそう言ったふりをしてるだけ、本当の友達だなんてこれっぽっちも思ってないわ。」

サラがそう言うと二人は驚いた。カフェを出るとすぐに帰宅した。

「そう言えば、イーサンに会ったことあるってどういうこと?」

「適当についた嘘よ。」

「何で嘘なんかついたの?」

「特に理由なんてないけど。何か問題でもあるの?」

「別にそう言うわけじゃないけど、気になったんだ。」

家について部屋の片付けをした。ホコリを払っては掃除機をかけた。

「掃除手伝おうか?」

「一人でやるから。」

「そう。分かったわ。」

ものの整理をしてると、アルバムや写真などが出てきた。私が幼稚園に通っていた時の写真だった。家族3人で写っている写真だった。この時は凄い笑顔だった。まだお父さんも私に優しかった。


「お父さん、見て。絵が出来たよ。」

「お、どれどれ?もしかしてパパのこと書いたのか?」

「うん。パパだよ。隣がママだよ。」

昔は絵が出来上がっては、父に見せていた。昔の私は今の私より可愛いかった。今の自分をこの写真のあとに見ると、劣化してると思った。

「今日は絵を頑張ったから、好きなおもちゃ買ってあげる。」

おもちゃを一緒に買いに行ってはものすごく楽しんでいた。私は昔と違い、店内で走り回るような子供だった。

「ゾーイ、待ちなさい。言うこと聞かないと置いていくよ。」

「そんなの嫌だ。パパと帰りたい。」

この時は私もお父さんと一緒に過ごす時間が楽しかった。

中学時代、絵のコンクールに入賞した時、お父さんにいち早く見せた。

「お父さん、絵のコンクール入賞したの。」

「ふーん。そうなんだ。だから何だ?それでお前のその入賞程度じゃ世の中生き残れない。絵の世界はお前が思っている以上にすごい厳しいんだ。絵で生きようとするあさはかな考えはやめろ。それにもっと学校の成績とか気にするべきだ。今のお前は昔のように取り柄もないんだから。」

この時から父は私のいないところで、私の外見について悪く言っていた。もちろん、私は聞きたくなくても聞こえていた。それから父に絵を見せることはなくなったし、コンテストに応募することもなくなり、ただ机で勉強する日々をおくっていた。その時も学校では一部の人達に嫌われていた。父に愛されることをもう完全に諦めていた。何を言っても無駄なんだろうと自分に語りかけた。


「ゾーイ何してんの?」

「ビックリした。」

「おどかすつもりなんてなかったわ。」

「いきなり部屋に入って来たもんだから。」

私の写真をじっと見る。

「この写真の女の子、ゾーイなの?」

「そうだよ。」

「可愛いね。」

「サラの小さな時の写真も見たいな。」

「私は持ってないわ。小さい時のことがあまり鮮明に思い出せないの。それに両親なんていなかったから。」

「ごめん、変なこと聞いて。」

「大したことじゃないわ。良いこと教えてあげる。」

「何?」

「やっぱりやめた。今言ったら楽しくないわ。」

「何よ。教えてよ。」

笑いながらサラのことを押し倒した。お互い小さい子のようにくすぐりあって思わず笑ってしまった。

「その時になったら分かるよ。」

「分かったよ。」

サラを見て笑った。彼女は私にいつも光を与える。私もサラにサラの人形を持ち歩いてたり、学校のトイレにサラの絵を描いてることを内緒にした。知られたくないわけではないが、すぐに知られたら面白みがなくなるから、あえて言っていない。

「ゾーイも何か秘密にしてたりしてね。」 

「そんなことないわ。」

「一瞬動揺した顔だったけど、大したことではなさそうね。」

サラにかかれば誰が何考えてるなんてお見通しなんだろう。

夜、ベッドの上に寝転がり、イーサンのことを考えていた。自分の身体をゆっくり撫で回しながらイーサンのことを考えた。首元に口紅を当てる。もちろん色はしっかり残った。暗くてもはっきりと。まともに話したことないのにドキドキした。今日はいつもと違う満月の夜だった。猫達がどこまでも遠くに向かって鳴き叫んだ。私の耳にまでよく響いた。

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