98.知ってはならなかった真実!
生物誕生の場所のことは、色々と議論があるようですが、ココでは汽水域説で話を進めさせていただきます。
ユキは、カップラーメン二箱を抱え上げると、
「ありがとう。それでさあ、セクロピアから是非って言われているんだけどー、私がいる別世界に来てみる?」
と私に言って来た。
たしかに、その別世界は気になる。
それに、そこでユキがどうやって生活しているのかも興味がある。
なので、私は、
「行ってみたい!」
と即答した。
でも、まさかユキの召喚主の大天使セクロピアから招待されるとはね。
光栄に思うよ。
「了解」
「でも、お店のことも有るし、一時間くらいかな?」
「まあ、時間軸が違うから、こっちの世界の時間軸で五分後くらいには戻れるようにするよー」
「そんなことできるんだ! 助かる」
「じゃあ、行くよー」
その直後、私の目の前は真っ暗な闇に覆われた。
早速、ユキの異世界間転移が発動したってことだ。
そして、それから十秒くらいした後、私は、赤茶けた大地の上に立っていた。
ここがユキの言っていた別世界だ。
空には太陽と、大きな衛星が一つ。
その衛星は、月よりも大きく見えた。
ただ、クレーターで出来た衛星表面の模様が、随分と月に酷似している気がするんだけど、気のせいかな?
まあ、衛星の模様のことは、一先ず置いといて。
ユキは、この世界の海では波が荒いって言っていたけど、たしかに、こんな大きな衛星を持っていたら、それも当然な気がする。
潮の満ち引きとかも地球とは段違いだろうし。
「本当に、ユキが言っていた通り、赤茶けた大地しか無いんだね。一応、山とか川はあるけど」
「そうだよー。でね。ここは、地球を治めている女神ラメラータの管轄下だから、本来は魔法が使えないんだけどー」
「そうなの?」
「ラメラータの世界では魔法は原則禁止なんだってー。でも、私をここに送り込む時に、私が生きて行くのに必要最低限の魔法だけは与えなきゃマズいだろうってなって、それで魔法付与が許可されたんだってー」
「そ……そうなんだ」
「それと、今回、アキを連れて来るにあたって、セクロピアが特別に、アキの魔法は維持してくれたって」
「そ……そうなの?」
「うん。じゃないと、魔力で動く人形じゃなくなっちゃうからー」
「たしかに、それだと単なる人形だね」
「普通の性処理用人形だねー!」
「お願いだから、その表現はヤメて!」
さすがに、私も、その初期設定は忘れたいんだよ。
とは言え、今はヴァナディス専用の性処理用等身大美少女フィギュアだけどさ。
ただ、丁度この時だった。
突然、私の『ステータス画面覗き見機能』が発動したんだ。
それと、何故か強化魔法も既に発動していたんだけど、何でだろ?
取扱説明書:アキ-108号は相手のステータス画面を覗き見することが出来ます。これは相手の性的嗜好を理解するためです。
要は、ユキに何らかの変化があって、それで、彼女のステータスをキチンと把握するようにって意味で勝手に覗き見機能が発動したんだと思うんだけど……。
たしかにユキのステータス……と言うか、彼女の持つ能力に私は驚かされた。
何故って、そこに記載されていたのは……。
転移魔法
異世界間転移魔法(プレアース⇔ブルバレン限定)
強化魔法
無酸素耐性
このうち、転移魔法と異世界間転移魔法は分かる。
元々、私の店に転移魔法で来ていたし、今回は、このプレアースってところに来ているわけだからね。
でも、戦いもしないのに、なんで強化魔法を持っているんだろ?
それ以上に驚いたのは無酸素耐性。
これって、どういうこと?
そう言えば、植物が生えていないってユキは言っていたっけ?
だとすると、もしかして?
「ねえ、ユキ。この世界って、マジで植物が一本も生えていないじゃない?」
「そうだよー」
「酸素って?」
「無いよー」
やっぱりだ。
だから、無酸素耐性を持たされているわけだし、当然、オゾン層も無いから有害な紫外線がジャンジャン降り注ぐから強化魔法が必要ってことだ。
それで、私の方でも強化魔法が発動したってことだろう。
人外でも、一応、紫外線を防止した方がイイだろうからね。
ただ、妙にイヤな予感がしてきた。
と言うか、この上なく最低最悪な仮説が私の頭の中に浮かんで来たんだ。
「ねえ、ユキ。ここって、地球と同じ宇宙にあるけど、私達が地球で生きていた時代と時間軸が違うんだよね?」
「そうだよー」
「何年くらい違うの?」
「たしか、セクロピアは38億年前って言っていたかなー」
「ここで出たゴミは、どう処理するの? 私かユキに渡したカップラーメンの箱とか容器とかビニールとか?」
「それらは、家のダストシュートに入れると、勝手にマントル層まで届くことになっているよー」
つまり、そこで高温に晒されて基本的には分解すると……。
なんだか、臭いモノには蓋をしろみたいな感じで、全部、この星の奥底に隠しちゃえって感じがするけど、まあイイか。
下手にユキに焼却処理とかをさせるよりは間違いない気がする。
「料理とかはするの?」
「家に魔法のキッチンが備え付けてあるから、一応できるよー」
「食器洗いとか洗濯は?」
「するよー」
「排水は、どこに行くの?」
「両方共、マントル層だってー」
これらも地下奥深くに隠しちゃえってことか。
でも、まあ、ここまでの質問はジャブに近い。
ここからが本題だよ!
「お風呂は?」
「備え付けてあるよー」
「その排水もマントル層行き?」
「そうだよー」
つまり、ユキの身体から洗い流された表皮常在菌は、この世界では高温に晒されて処分されるってことだ。
でも、その方が、まだマシだった気がするけど……。
「トイレは?」
「水洗式だよー」
「その汚水は何処に行くの?」
「たしかねー。それだけ、近くの川の下流に行くって聞いてるー」
「もしかして、その川は汽水域に通じてない?」
「良く分からないけどー」
そもそも、コイツじゃ汽水域って意味が分からないかも。
じゃあ、言い方を変えよう。
もっとダイレクトに近い聞き方にする。
「あとさぁ。ここにユキが連れて来られた目的って何か聞いてる?」
「たしかねー。セクロピアからはー、なんとか菌ってのが欲しいからって言われたんだけどー」
「もしかして、それって、真正包け……」
取扱説明書:アキ-108号は、言いたい言葉を、無意識のうちに下ネタと言い間違えることがあります。
危ない危ない。
言い間違えるところだったよ。
「……じゃなくて、ええと、真正細菌とか?」
「そうそう。そんな感じの名前だったよー。でも、別に、ここで普通に暮らしていればイイだけだから、何も気にしないでって言われたよー」
多分、イヤな予感は、間違いなく当たっていると思う。
恐らく、その『プレアース』って名前からして、ここは38億年前の地球だと思う。
だから衛星の模様が月と酷似しているんだ。
だって、月そのものだからね。
酷似していない方がおかしい。
月が大きく見えるのは、私達が生きていた時代よりも、ずっと近い位置で月が公転しているから。
実は、月は少しずつ、地球から遠ざかっているんだよ。
あと、この世界……と言うか、この星が地球と同じサイズだって言うのも当然の話だ。
太古の地球なんだから、現代の地球と大きく違っている方がおかしい。
一応、この時代と私達が暮らしていた時代では、隕石とかが降ってきた分、総重量は違うはずだろうけど、何倍も違うってことは有り得ないだろうからね。
そして、ユキの身体から排泄された腸内細菌こそが、ダ女神達の狙いじゃないかな?
つまり、その中の一部の細菌から、この世界に誕生する後の生物へと、ダ女神達の手でムリヤリ進化させて行くってことだ。
言い換えると、地球に生息する生物は、基本的に元を辿ればユキのウンコだったってことになる。
前世の私も例外じゃない。
ユキ自身もだけど……。
なんか、イヤな現実を突きつけられたよ。
知らない方が幸せだった気がする。
まあ、ユキは前世で男共をはべらしていたレベルの美人だし、中には自分達の祖先がユキのウンコって知って喜ぶ変態もいるかも知れないけどさ……。
でも、私は、その手の人種じゃないからね!
その類の人達の趣味なんか、絶対に理解したくないんだからね!
この後、私は、ユキの転移魔法で、この世界をアチコチ見て回ったけど、マジで生物が一切生息しない死の世界だってことを再認識させられたよ。
ここが地球だなんて、本当に信じられない。
こんな時代が地球にもあったんだね。
あと、ユキのウンコが到達する海は、たしかに汽水域だった。
ここから、全世界に生物が広がって行くってことか。
なんだか、もの凄くイヤなモノを見た気がするよ。
生物誕生前の地球を見られたこと自体は、メチャクチャ貴重な体験をしたと思うんだけどさ……。
古細菌に近い生物の中に、真正細菌に属するプロテオバクテリアの一種が入り込んでミトコンドリアとして細胞共生したものが真核生物の祖先になったとか言われているようです。




