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97.百光年って宇宙規模だと多分ご近所様?

 それから、一週間ほどが過ぎた。

 ユキも来ないし、ラフレシアの召喚者も来ない。

 一先ず、現段階では、いつもの日常と言える平和な日中だった。


「アキ」


 背後から私を呼ぶ声がした。

 この声は、お母さんだ。

 多分、異世界間扉をくぐって来たんだろう。


 もしかして、これからカッシーナ村のマナミ達の居酒屋に行こうってことかな?

 でも、それにしては涙ぐんだ感じの声だけど?


 何かあったのかなと思って私は後ろを振り返ったんだけど、この時、お母さんの目からは、怒涛の如く涙が流れていた。

 滅多なことでは泣かないお母さんにしては珍しいけど、ナニがあったんだろう?


「どうしたの、お母さん」

「ラヤが異世界に旅立ったみたい」

「えっ?」

「それも、突然、消えちゃったらしいのよ」

「それって、どう言うこと?」

「ピレンが言うには、ヒールスライムが治療するのをラヤは横で見ていたんだけど、突然、身体が透けて行って、そのまま消えちゃったって」


 もしかして、いきなり異世界に転移したってこと?

 たしかに、そろそろラヤが次の異世界に転移する頃だとは思っていたけど、いきなり過ぎるよ!


 正直なところ、私は、てっきり使いの者でも来て、

『これから転移します!』

 ってなるんじゃないかって思い込んでいた。


 あるいは、

『これから転移するよ!』

 って通達があって、みんなと別れを惜しむ時間が与えられるとかね。


 それで、お母さんが異世界間扉をくぐって私を迎えに来てくれて、そして、ラヤにお別れの挨拶をするって展開になるって、勝手に信じていたんだ。

 これには、私自身も、ショックを隠せなかったよ。


 お母さんも、ラヤが、こんな風にいなくなるなんて思っていなかったみたいだね。

 かなりショックを受けていた。



 でも、ラヤの異世界巡りは、ダ女神達がやらせていることだからね。

 ダ女神達が人間の心情を汲み取ってくれると思っていたこと自体が間違っていたのかも知れない。



 ただ、前世で私が死んだって聞いた時と今で、お母さんは、どっちが悲しいって感じているんだろう?

 ちょっと気になるな。

 でも、今は言わないでおこう。



「ラヤが消えたところに、手紙が四通あったって。私とフルフラールとピレン、それから、アキ、アナタ宛てに、ラヤから」


 私は、お母さんからラヤからの手紙を受け取った。

 そこには、

『私の天敵で美人な義姉、アキさんへ

 私をシルリア世界に召喚させるように願った人が、フユミさんだと知った時は、本当に驚きました。まさか、アキさんのお母さんに呼ばれるなんて、私にとっては斜め上の超展開でした。

 でも、同時に不思議な縁だとも思いました。

 アキさんとは、最初は敵同士でしたけど、今では義姉妹だって思っています。

 それと、フユミさんとアキさんと引き合わせることも出来て、異世界間の扉も女神様に設置してもらえて、本当に良かったと思っています。


 ~中略~


 フユミさんのことをヨロシクお願いします。

 それから、私もフユミさんも基本的に不老ですし、余程のことが無い限り死なないと思います。

 アキさんも、多分、滅多なことでは死なないでしょう。

 生きていれば、きっと、いつか会える時が来ると思います。

 何百年先か、何万年先か分かりませんけど、その時は、またヨロシクお願いします。

 ラヤ』

 と書かれていた。


 たしかに、ラヤからの手紙に書かれている通り、ラヤもお母さんも私も、余程のことが無い限り死なないだろう。

 だったら、この世界のある宇宙、もしくはお母さんのいる宇宙に、ラヤが何らかの用事で来た際には会えるかも知れない。



 ラヤとの最初の出会いは、たしかに、この上ないレベルで最悪だった。

 敵軍兵士の首を、片っ端から魔法で刎ねて行くわけだからね。

 簡単に、国を一つ落としたし。


 それが、今では破壊神から聖女に変身し、私をお母さんに再会させてくれただけではなく、お母さんに、会いたい時に何時でも会える環境まで与えてくれた。


 しかも、お母さんの面倒も見てくれて。

 私の方こそ、本当に出来のイイ妹のように思っていたよ。



 今日は、ちょっとショックが大きい。

 悪いけど、私は店の奥に引っ込んだ。

 心が落ち着くまで休ませてもらう。



 お母さんも、さすがに仕事をする気が出ないみたいだ。

 この時ばかりは、仕事人間のお母さんも、全身からドンヨリ雲が湧き上がっているかのようだった。


 …

 …

 …


 翌日、

「来たよー」

 働かない女、ユキが私の店に来た。


 でも、今は、一応、商業ギルドに運送業者を紹介してもらえて働いているんだっけ?

 コイツも働く女になったってことだ。


「また、ラフレシア関係?」

「違う違う。セクロピアからの伝言で、ラヤのその後についてだよー」

「マジで!」


 これは、正直気になる。

 もしかしたら、意外と近いうちにブルバレン世界と同じ宇宙に来るかも知れないしね。

 そうなら嬉しいけど。


「先ず、今、ラヤがいるところはペルムの世界って言って、その前にいたシルリア世界と同じ宇宙にあるところだよー」

「そうなんだ。じゃあ、シルリア世界に、すぐ戻れるの?」

「それが80億光年離れていて、戻るのはムリだってー」

「そうなの?」

「あとねー。そこでの仕事が終わったら、シルリア世界を治める女神が治めている別の宇宙に飛ぶらしいよー。たしか、トリアスって言ってたかなー。その後、ジュラ、クリテイシャス……」


 それって、どこかで聞いた名前だけど?

 たしか、カナコが行った先って、ユキが言っていたんじゃなかったっけ?


「そのクリ〇〇ス世界って、オールドナントカの世界から戻って来た後、カナコがイッたとこだよね?」

「クリ〇〇スじゃなくてクリテイシャスだってば。それから、オールドナントカじゃなくてオルドビス!」

「そうだった。ゴメンゴメン」

「本当に難聴なんだからー」



 取扱説明書:アキ-108号は、聞いた単語と語呂が近いHな単語しか思い浮かばないことが多々あります。



 取扱説明書:アキ-108号は、女性ヘイトな聞き間違いをすることが多々あります。



「でも、クリテイシャス世界って、カナコが行った先でしょ?」

「そうだよー。そこでのラヤの仕事は、結構大変じゃないかって言われてるよー」

「そうなんだ。」

「あと、伊勢天馬と甲斐誠治って大学の頃にいたでしょー?」

「ああ、いたねぇ」

「あの二人もクリテイシャス世界に行ったらしいよー」


 マジで『伊勢(いせ)甲斐(かい)』が異世界召喚されたよ!

 しかも、天馬と誠治で文字を入れ替えたら『天誠馬治(てんせいまじ→転生マジ)』だからね。

 やっとオヤジギャグ的伏線が回収されたって感じだよ。

 厳密には転生じゃなくて転移だけどさ。



「そうなんだ。じゃあ、ラヤとカナコと伊勢と甲斐でパーティを組むのかな?」

「その辺は分からないけどー。あと、ラヤだけど、クリテイシャス世界の後にはパレオジェン世界、その次にネオジェン世界に行くらしいよー。そうそう。ネオジェン世界は、アキが殺しちゃった青年が転生した世界と同じ宇宙にあるんだってー」


 あの大学院生ね。

 殺しちゃって悪いことしたって思うけど、でも、あれは彼に異世界転生する義務があって、あのタイミングで死んでもらわなければならなかったわけだし、天界が私に殺させたんだよね?

 もっとも、そのお陰で私は、この世界に転生させてもらえたんだけど。


「その青年の話は置いといて。自己嫌悪に陥るから。それで、ラヤは、この世界と同じ宇宙には来ないの?」

「ネオジェンの後に、クァターナリーって世界に行く予定らしいんだけど、そこがブルバレン世界と同じ宇宙で、しかも、結構距離的にも近いところだよー」

「近いってどれくらい?」

「百光年」

「はっ?」


 それって、人間からすれば途方もなく遠いんだけど?

 ダ女神達のレベルだと近いんだろうけどさ。


「同じ銀河の中にあるんだよー」

「そりゃあ、そうなんだろうけど……」


 うろ覚えだけど、銀河系の直径が十万光年くらいじゃなかったかな?

 昔、SF小説を読んでいて、そんな記載があった記憶があるよ。


 そのスケールで考えれば、百光年は同じ銀河の中にあるだろうし、宇宙の規模から考えれば、かなりご近所さんなんだろうけどさ。

 でも、とてもじゃないけど、私の転移魔法でも到達できる位置に無いよ。



 取扱説明書:アキ-108号は、出張サービス(エロ)を効率よく行えるように転移魔法が使えます。最大移動距離は2キロメートルです。



 取扱説明書:アキ-108号は、一度に50回まで連続転移が可能です。一回の連続転移での最大移動距離は100キロメートルになります。



 取扱説明書:百光年の移動には、約九兆五千億回の連続転移が必要になります。



「それで、クァターナリー世界の後は?」

「まだ決まってないみたいだよー」

「そうしたら、そこでの仕事が終わったら、ここに来れるのかな?」

「そこまでは聞いてないよー。でも、いつかは会えるだろうって、セクロピアが言ってたよー」


 なら、高確率で再会できるだろう。

 一応、セクロピアは大天使だもんね。

 大天使が大ウソをつくとも思えない。

 でも、それが、何百年先なのか何万年先なのかは分からないけどね。


「情報ありがとう。ところでユキの方は、仕事はどんな感じ?」

「まあ、ボチボチかな」

「小松照代が来た時は顔を出さなかったからさ。忙しいのかなって思って」

「あの日は、ちょっと気がのらなくて……」


 多分、あの展開を読んでいたんだろう。

 結局のところ、面倒に巻き込まれたくないから、こっちが何とかするまで放置……って言うか、無視したってとこだね。

 やっぱり働かない女は健在だったか。


「そうなんだ。それで、家賃とかは?」

「今は、こことは違う世界に住んでいるから家賃は無いよー」

「えっ? それって初耳なんだけど?」

「数年前に、セクロピアがねー、別の世界に家を建ててくれて、そこに住んでるのー」

「別世界?」

「そうだよー。たしか、プレアースって言ってたかなぁ? なんでも、私達が前にいた宇宙と同じ宇宙にあるらしいんだけど、時間軸が違うって言ってたよー」

「もしかして、そことここを時空で繋いだ特殊ゲートを通って来るってこと?」

「ん-とねー。私の場合、その世界とこの世界に限定してだけど、特殊魔法で異世界間転移が出来るのよー」

「マジで?」


 もしかして、それって、私の身の周りの人間の中で、最もチートな能力な気がするんだけど?

 あのラヤでさえ、自分の意志で異世界間を移動することなんて出来なかったし。


「でねー。水道代も光熱費も要らないんだけど、食料だけは確保しないとイケなくてー」

「その異空間には、他に誰が住んでいるの?」

「私だけだよー」

「一人で住んでるんだ! それで、その別世界って、どれくらいの広さがあるの?」

「地球と同じサイズだって、セクロピアが言ってたよー」


 なんだか、ムチャクチャ広いんだけど?

 そこに一人で住んでいるって、それはそれで凄いわ!

 超土地持ちみたいな感じじゃない?


「で、そこにユキの家以外には何があるの?」

「何も無いよー。赤茶色の土地が延々と続いているだけなのよー。川はあるけど、魚も住んでいないし」

「海は?」

「一応、あるよー。でも、波が荒くて泳げないけどねー」

「植物は?」

「生えてない。虫もいないし、だから、とても静かでイイところだよー」


 たしかに静かだと思うけどさ……。

 まあ、捉え方は、人それぞれだけど、多分、私だったら気が狂いそうな気がするなぁ。

 聞いていて、なんか、生物発生前の地球みたいな感じだし。


 でも、そこで生きて行けるってことは、一応、酸素はあるんだよね?

 それに、この世界には自在に来れるわけだし、他人と一切断絶ってわけでもないか。



「じゃあ、今日は情報料で何か食べ物が欲しいなー」

「リクエストは?」

「簡単に食べられるモノー!」


 そう言えば、コイツって料理できたんだっけ?

 料理は作るモノじゃなくて食べるモノ派だった気がする。

 ってことは、結局これかなぁ。


 私は、

「出ろ!」

 物質創製魔法で、毎度の如くカップラーメンを二箱出したよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ネオジェンの後に、クァターナリーって世界  絶好の空耳ポイント!  オネ○ョタとか、ふたな○又はクタ(クタ)○ナニーはたまたクタ(クタな)ナニとか、本当にひでーネタが来るかと構えてました…
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