96.アドバイザー!
この日の夜も、ラヤの家に突撃した。
勿論、美味しい夕飯を恵んでもらいにね。
完全に物乞い状態になっているな、私とヴァナディス。
この時、私は、今日起きた事件……小松照代の話だけはしないって決めていた。
ラヤは元々、ラフレシア側の超破壊神だったわけだし、今更、ラフレシア側の新破壊者の話をするのも何かと思ってね。
私がラヤの家に行くと、今日もお母さんから、開口一番、
「日本酒お願い!」
って言われたよ。
でも、マジで飲み過ぎないように気を付けてよね!
って言っても、病気にならない身体を貰っているから肝臓を壊すことも無いだろう。
ただ、それを分かっているからだろうね。
日本で生きていた頃に比べてお酒を飲む量が増えている気がするよ。
よく、酒を浴びるように飲むって言われるけど、それを超えていないかな?
もはや、流し台に捨てるくらいの勢いでお酒が無くなっているように思えるんだけど?
でも、今日のところは、日本酒好きなところに感謝だね。
そこから日本酒つながりで、話題はカッシーナ村の話に持って行けそうだよ。
ここで、
『今日、ナニがあったの?』
って聞かれたら誤魔化すのが面倒だもんね。
「そう言えば、お母さん。この日本酒だけど、マナミがカッシーナ村の店に置くことにしたんだよ」
「そうなの?」
「前に大陸側ゲートを設置した港町に行ったでしょ?」
「ああ、あの雰囲気が今一つの?」
「そう。あそこから、一旦、大陸側ターミナルゲートを別のところに移したのよ。それがカッシーナ村」
「前に、そんなこと言っていた気がするわね」
「でも、カッシーナ村にはマジで何も無くてね。それで、そこにマナミが私の店と同じような店を開いて、この日本酒を常時置くことにしたのよ」
「じゃあ、万が一、アキに日本酒を出してもらえない時は、そこまで買いに行けばイイってことね」
「別に馬鹿飲みしない限りは出してあげるわよ」
「ありがと」
「でね。あっちの世界でも、結構人気なんだよ、このお酒。あと、マナミは私と違って他の銘柄も知っているから、もっと色々と飲めると思う」
「それは、ちょっと興味があるわね」
これは、いきなり次の休みの日とかにカッシーナ村まで行きそうだね。
予めマナミには伝えておこう。
「でも、何も無い村にゲートを置くのって、リスキーだったんじゃない?」
「そうなのよね。設置するまでは楽だったけど、その後が大変だったみたい」
「でしょう? どうやって観光客をその村まで呼ぶか、ハードルが高い気がするけど?」
「それで、日本酒の登場ってわけなのよ。ブルバレン世界では、カッシーナ村でしか日本酒が飲めないからね」
「アキの店では売っていないの?」
「うん。売らないことにした」
「ディスプロシ島にも置いていないの?」
「置いてないよ。それから、カッシーナは海岸線の村なんだけど」
「じゃあ、魚が美味しいところ?」
やっぱり、食い付いて来たよ。
サカナだけに。
まあ、魚が好きって言うよりも、お母さんの場合は酒の肴が好きなんだけどね。
「まあね。ただ、岩場だらけで船が付け難かったから、以前は素潜りで、その日、自分達が食べる分の魚を獲るだけだったんだけど、最近ではディスプロシ島の人達にも手伝ってもらって船着き場を作ってね。それで漁に出るようになって、獲る魚の量が結構増えたんだよ。勿論、客に振る舞うように獲る量を増やしたんだけどね」
「そうなんだ。でも、マナミちゃん達がプロデュースしているのよね?」
「うん」
「だったら、日本酒に合う魚料理とかが出るのかしら?」
「勿論。それが狙いみたい」
「なら、絶対に行く!」
「でも、ブルバレン世界のお金って持っていないでしょ?」
「それだったら、アキのツケってことにすればイイから」
「えぇぇっ?」
別に、私はお金には困っていないし、最悪の場合は、
『上玉性奴隷を買うお金!』
って言えば金貨が出せるから問題無いけどさ。
でも、いくら母子でも、私にたかるのが前提ってのも、余り嬉しくない気がするなぁ。
だったら、いっそのこと、ブルバレン世界でお母さんに酒代をキチンと稼いでもらうって言うのはどうかな?
それなら、私も文句は言わないよ。
「じゃあさ。いくつか薬を出してもらえない? それを私の店で売って儲けた分を、酒代に回すから」
「なるほど。それで、酒代を稼げと。で、何の薬がイイ?」
「常備薬なら何でも」
「なら、風邪薬に鎮痛剤に整腸剤、下剤。そんなモンでイイ?」
「無難な選択だね。それでお願い」
「じゃあ、出ろ!」
お母さんの『薬に特化した物質創製魔法』が発動した。
飽くまでも地球の既存薬を作り出すだけで、新しい薬を創製するわけじゃないから、創薬とは違うんだけど、異世界人からすれば創薬スキルって思えるんだろうな。
そして、私の目の前には、薬が入ったダンボール箱が大量に出された。
しかも、ダンボール箱を開けて驚いた。
全部、私が日本にいた頃に、家に常備されていた薬だよ。
パッケージも同じだし、一日何回何錠とか日本語で書かれていた。
これなら全部私の方で説明できる。
私が何も見ないで説明できる薬って、ED治療薬と早漏治療薬くらいだもんね。
取扱説明書:アキ-108号は、Hに必要なモノなら何でも魔法で作り出せます。また、Hの道具を何でもそつなく使いこなすことが可能です。その道具に関する知識も豊富です。
「ありがとう、お母さん」
「礼は要らないわよ。それより、それを売って私の酒代を稼いでよね」
「分かってるわよ」
実際、この薬は助かる。
いくら私が治癒魔法を使えても、具合の悪い人が全員、私のところに来られるわけじゃない。
それに、鎮痛剤は嬉しい。
生理痛だけは、私の力でも治せないんだよね。
取扱説明書:アキ-108号は、傷ついた男性を完全に癒す能力を有します(心身共に)。相手が男性の場合は、異性愛者でも同性愛者でも治します。
取扱説明書:女性でも同性愛者の場合は、癒しの能力が発動します。
取扱説明書:しかし、アキ-108号は、女性同性愛者あるいは男性に懇願されない限り、一般女性には癒しの能力を発動できません。
でも、別に女性だから治せないってわけじゃないよ。
生理痛は、病気じゃないから治せないってこと。
本当は、下半身に関係するから生理痛の薬って言えば鎮痛剤が出せるって思っていたんだけどさ……。
取扱説明書:生理中は超安全日と思っている男性が多いようですが、女性側は陰部を清潔に保つ必要があります。正しいHを行うため、アキ-108号は生理中の性的行為を推奨しません。
取扱説明書:そのため、アキ-108号からは、生理中の女性へのフォローはありません。
ところが、私は生理中の女性は眼中に無い仕様みたいでね。
残念だけど鎮痛剤が出せなかったんだよ。
でも、鎮痛剤があれば、色々と痛みを和らげることが出来る。
絶対に需要はあると思うよ!
ちなみに、痛みって言っても、変なプレイの意味じゃないからね!
「で、アキさん。フユミさん。そろそろ夕食の用意をしたいのですが」
こう言ったのはラヤ。
そう言えば、食事を恵んでもらいに来たのに、まだオーダーもしていなかった。
「ゴメン、ラヤ」
「でも、出すのは一瞬ですから。それで、ナニがイイですか?」
「やっぱり、うな丼!」
これだけは、ラヤがいる間じゃないと食べられないからね。
ブルバレン世界には鰻がいないから。
今のうちに食べておかないと後悔する。
当然、ヴァナディスも私に倣って、うな丼って言うかと思ったんだけど……、
「では、私は水餃子に焼き餃子に揚げ餃子で」
何気に餃子が気に入っていたようだ。
でも、まさか、ヴァナディスが、そう言った食べ比べをしてくるなんてね。
予想もしていなかったよ。
フルフラールとピレンは、相変わらずイタリアン。
コイツ等、こればっかりだな。
そう言う私も、彼女達からは鰻ばっかりって思われているんだろうけど。
そして、お母さんは、
「焼き鳥盛り合わせ。半分タレで、もう半分は塩で」
完全に気分は居酒屋になっているよ。
「分かりました。出ろ!」
そして、ラヤの便利な物質創製魔法食料バージョンで、望みの品々が出てきた。
今日、ラヤが食べるのはアユの塩焼きに揚げ出し豆腐に牛肉の串焼き!
これを見て、お母さんが、
「私も!」
早速、追加注文していたよ。
でも、ラヤがいなくなったら、お母さんの舌と胃袋を満足させるのって難しくない?
私……と言うか、料理上手なヴァナディスに、お鉢が回ってきそうだよ。
…
…
…
翌朝、早速私は、連続転移魔法を駆使してカッシーナ村を訪れた。
勿論、行く先はマナミの店ね。
お母さんが、日本酒を買いに来るかもしれないって伝えておこうと思ってさ。
「おはよう。マナミは?」
「奥にいます」
出迎えてくれたのはナヴィア。
ディスプロシ島の女性で、ヴァナディスの次に綺麗な(HPが高い)娘。
痩身だけど、均整が取れた身体つきをしていて、器械体操は勿論、新体操とかフィギュアスケートをやらせたら、絶対に綺麗って思う。
フィギュアって言っても、私やマナミとは違う意味ね。
私は、店に入ると、そのまま奥へと向かって行った。
まるで、『先っぽだけ』って言っていたのに、遠慮なく奥の方にまで入ってイッたかのように……って変な表現しちゃったよ。
取扱説明書:アキ-108号は、普通の言葉をエロい言葉に変換するのが得意です。
こんな機能は必要無いんだけど……。
我ながらムダな機能が多いなって思うよ。
棚の前にマナミ発見!
「マナミ、おはよう」
「おはよう……って、どうしたの? こんな朝から」
「ちょっとお願いがあってね」
「お願いって、ラフレシア関係とか?」
「そうじゃなくて、お母さんの件でちょっと……」
早速、私は、マナミに昨夜の話をした。
すると、マナミからの返答は、
「だったら、アキのお母さんに、少し手伝ってもらおうかしら」
とのこと。
私の少し斜め上のことを考えていたっぽい。
「手伝うって?」
「一応、私とケイコで、それなりに居酒屋の方のメニューを充実させていたんだけど、やっぱり改良が必要って思ってね」
「改良?」
「いくら私達がオヤジっぽい趣味をしていても、完全に中年層の趣味になっているわけじゃないってこと。なので、アキのお母さんからメニューについて、何かアドバイスがもらえないかなって思って」
「じゃあ、お母さんにアドバイザーになれってこと?」
「そう言うこと。それで、働いた分は現物支給ってことで」
つまり、マナミが出したお酒と、マナミ達がプロデュースしている居酒屋の料理がお母さんの給料ってことだ。
でも、お母さんの食欲は半端ないよ?
カッシーナ村の居酒屋が食いつぶされなければイイケド……。
って、そこまでバカ食いはしないか。
でも、これでラヤがいなくなっても、お母さんの舌と胃袋を満足させることが出来そうだよ。
まさに一石二鳥ってとこかな。
「じゃあ、その旨、お母さんに言っておく。ありがとう、マナミ」
「こっちこそ。それと、アキのお母さんに飲み過ぎとか食べ過ぎの薬とかを出してもらえると助かるんだけど。この村専用で」
「それも相談しておく」
「よろしく~」
つまり、この村に来た人達は、マナミ達の居酒屋で既に暴飲暴食しているってことか。
言い換えれば、私が思っている以上に、この村は繁盛しているってことだろう。
さすがケイコとマナミだ。
「じゃあ、用件のみで済まないけど、私は戻るね」
「了解。アキのお母さんには、来てもらえる時に、いつでもイイから」
「分かった」
そして、私は連続転移で自分の店に到着すると、すぐさま、ラヤの家とを繋ぐ異世界間扉に一直線!
扉をくぐると、私はラヤの家の中でお母さんが開いている薬屋へと向かった。
以前は、ラヤの家の外に設置した小屋で、お母さんは薬屋を開いていたんだけど、ラヤが別の異世界に飛ぶって決まった後、ラヤの家の中を改造したんだ。
客室スペースを潰して、そこに、お母さんの薬屋を移設したらしい。
「お母さん」
「あら、アキ。どうしたの? こんな朝から」
「マナミのところに行ってきた。是非来てってさ」
「本当?」
「あと、居酒屋メニューのアドバイザーをして欲しいって。給料は、お酒と料理の現物支給になるらしいけど」
「それは、ありがたいわね」
「あと、飲み過ぎ食べ過ぎの薬も欲しいって。多分、カッシーナ村のお客さん達用だと思うけど」
「なら、毎日食べに行っても大丈夫そうね。じゃあ、そのうち時間に余裕があったら行くことにするわ。でも、その時は、アキに案内してもらわないと」
「分かってる」
一先ず、これで昨夜の件は片付いた。
あとは、お母さんが私の家に来るのを待つだけだね。
と言うわけで、私は再び異世界間扉をくぐって自分の店へと引き返した。




