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37.ターゲット?

 移動開始から十日目。

 ようやく私達はコルダタ連邦ハウトゥイニア町に到着した。


 時刻は、既に16時を回っていた。

 一先ず、宿探しだ。


 私は、近くにいた女性に声をかけた。

 見た感じ、私と同じくらいの年齢かな?


「済みません。この辺に宿はありますでしょうか?」

「旅行の方ですか?」

「ラージェスト王国の方から来ました」


 アデレー王国の名前はマイナーだからね。『ラージェスト王国の方』って言った方が、この世界では一般に理解してもらいやすい。


「随分遠くからいらしたのですね。宿でしたら、ここから北の方角に少し行ったところにあります。私も、そっちに用事がありますのでご同行しましょう」

「助かります。有難うございます!」


 見知らぬ町で案内していただけるとは、これはラッキー。

 荷物はアイテムボックスの中だし、盗まれる心配はないはず。



 その女性は、まあ、見た感じ美的には中の下くらいかな?

 いやいや、今の私はヴァナディスばかり見ているから感覚がおかしくなっている。その辺を勘案すれば、多分、上の下くらいの見た目だろう、うん。

 明るくエネルギッシュな雰囲気に包まれた娘だ。


 しかも、どこか懐かしい感じがある。

 以前、どこかで会ったことがあるのかな?



 突然、私のステータス画面が開き、アラートが鳴り出した。

 いったい、何があったのだろうか?


 一応、画面は私にしか見えない設定になっているし、アラートは私にしか聞こえない設定になっている。

 なので、ヴァナディスにもパラスにも、そのエネルギッシュな女性にも状況はバレていないはず。

 ただ、ミチルさんだけはレッドドラゴンの魔力で感知しちゃっていたみたいだけどね。



 アラート発生の原因がステータス画面に記された。

 それによると……。



 女性の名前:ケイコ。

 ステータス:転移者、ラフレシア側救世主。

 特殊能力:不老不死。

 アラート理由:ケイコの性癖は自分の下半身に疑似男性器を装着して男性になりきり、女性型の等身大玩具を犯すこと。決して自分に挿入するのではない。ただし、現段階では自立型の魔玩具を使った経験は無し。



 ええと……。

 私は二重の意味でフリーズした。


 一つ目は言うまでもない。

 この偶然出会った女性が私達のターゲットであるケイコだったこと。


 そして、もう一つはケイコの性癖。

 これってさぁ。

 私、襲われるんじゃ?


 表面上は平静を保っていたけどさ、私は心の中では両手で頭を抱えていたよ。

『うぎゃー。これって、最低最悪な敵だよ!』

 って言いながらね。

 勿論、表の声には出していないよ。



 つまり、ラフレシアは私を手籠めにする者としてケイコを選んだってことか。

 女性だけど同性愛者に近い(?)感性を持っているから、もしかしたら女王様モードには反応してくれるかもしれないけど、どうだろう?


 これって、無抵抗の女性型等身大フィギュアを犯して喜んでいるわけだからさぁ。支配欲ってそれ相当に強いんじゃないかな?

 そうすると、女王様も屈服させたいとか思っているかも。



 マジヤバな相手を召還しやがったよ、ラフレシアのヤツ!

 完全に私の天敵じゃん!

 クソッ!

 それだけラフレシアも本気で私を潰そうとしているってことなんだろうね。


「ここです」

「わざわざ送り届けていただき有難うございます」

「では、また何か機会がありましたら」

「はい。その時には、よろしくお願い致します」

「こちらこそ。では、失礼します」


 ラフレシアの手下の割には、非常に丁寧で礼儀正しい女性だったなぁ。

 でも、人間は仮面の下に何を隠しているか分からない。

 とにかくチェックインすると私は、

「ミチルさん。パラス。緊急会議するから来て!」

 二人を私とヴァナディスの部屋に呼んだ。



 実は、チェックイン後に四人集まるのは、この旅で、これが初めてだったりする。

 今までずっと、宿では二人部屋を二つ借りて、私とヴァナディス、ミチルさんとパラスの各ペアで泊まっていて、互いに別の部屋には干渉無し状態だったからね。

 双方共に、耐久Hバトルに突入するからね。

 でも、さすがに今は、そんな状況じゃないもんね。



 ミチルさんとパラスが私達の部屋に来た。

 一先ず、テーブルをはさんでソファーに座った。

 配置は言うまでもないけど、私とヴァナディスが隣同士、それでもってミチルさんとパラスが隣同士ね。


「アキちゃん。多分、さっきの女性のことだよね?」

 こう言ってきたのはミチルさん。

 さすが、鋭いね。


「はい。彼女のステータスの一部をキャッチして私の中でアラートが鳴ったんです。彼女の名前はケイコ。ラフレシアが召還した転移者。不老不死とのことです」

「やっぱりね」


 ミチルさんは、多分、強大な魔力で察知していたんだろう。なので、全てが予想通りと言った表情をしていた。

 不老不死のことまでもね。


 一方のヴァナディスとパラスは、

「「ええぇー!?」」

 大声をあげて驚いていたよ。



 ただ、その直後、興味津々な顔でパラスが、

「それで、そのケイコが持つ異常な性癖って?」

 と聞いて来た。


 まあ、私が転生してくるよりも先に、こっちに転移していた私の大学の同期がケイコの件で話していたことを、この四人で情報共有していたからね。

 勿論、ケイコが変な性癖を持っているってことも。

 なので、多分、聞いてくると思ったよ。


「ええとね……。自分の下半身に疑似男性器をつけて男になりきってね……」

「うんうん」

「等身大の女性型人形を犯すことだって」

「はぁっ?」

「ただ、今のところは自立型の人形を使った経験は無いらしいけど」

「なにそれ?」


 パラスの目が汚物を見るような雰囲気に変わったよ。

 やっぱり、相当変だよね、ケイコの性癖って。



 ただ、もっと強く反応していたのはヴァナディスだった。

 珍しく全身から怖いオーラを放っていた。

 しかも、ワナワナと小刻みに震えている。


「アキさん」

「はい?」

「絶対に使われないでね!」

「そりゃあ、勿論」

「絶対だからね!」

「はい……」


 これは、相当ケイコのことを敵視しているね。

 そりゃあ、私の危機だからね。


 さすがにヴァナディスも、この瞬間だけは触れるモノなら何でも壊しそうな恐ろしい雰囲気をバリバリに放っていたよ。



 でも、それだけ私のことを想ってくれているってことだろうからね。

 素直に喜ぶことにしよう。


「じゃあアキちゃん。ターゲットが分かったわけだからさ、明日から聞き込みを始めよう。彼女は、こっちに転移して来て、一か月以上経っているわけだからさ」

 こう言ったのはミチルさん。


「そうですね。では、また明日、よろしくお願いします」

 これで一先ず、ミチルさんとパラスは自分達の部屋へと戻っていった。



 で、部屋に残った私とヴァナディスだけど、なんだか空気が重い。

「絶対にケイコになんか渡さないからね!」

「はい……」

「絶対だからね!」


 そう言うと、ヴァナディスは私に遠慮なく襲い掛かって来た。

 今日は、ミチルさん達よりも私達の方が超激しい大バトルになりそうだ。

 勿論、H()()()()ね♡


 …

 …

 …


 あー、昨夜は凄かった。

 宿にチェックインした翌朝から、私達四人は、手分けをしてケイコの聞き込み調査をスタートした。


 堕天使ラフレシアに召喚された悪の側の救世主のはず。

 当然、聞き込み前は、悪魔の如く悪事を重ねて不評だろうと思っていたんだ。



 ところが、あるオバサンからは、

「ケイコちゃん? 働き者でイイ子だよ。一か月ちょっと前に、この街に来たんだけどさ。明るいし、優しいし、割と美人だし。まあ、アンタら方が美人だけどね。でも、まあ、あれだけイイ娘ならうちの息子の嫁にしたいくらいだよ!」

 と言われたし、また、他にも、

「真面目で信用できる娘だよ。仕事をしていればさ、どこかで絶対にトラブルとか起こるじゃん。そう言った時に、凄く真摯に対応してくれるんだよね」

「人間性高いよ。あんな娘をうちでも雇いたいよ!」

「パワフルだね。ホント、いつ休んでいるんだろうって思うくらい働くね」

「うちのばあさんが倒れた時に面倒見てくれてね。その後も色々世話になっているよ」

「あんな女性を嫁に欲しい!」

「大好き!」

 などなど……、非常に評判が良い。



 あれっ?

 なんか、予想と現実が全然違っていない?

 どう考えても悪事を起こすために召喚された人間と大きくかけ離れているんだけど?


 本当に、ケイコって私達のターゲットなんだよね?

 正直、疑問が生じてきたよ。



 そして、ハウトゥイニアに来て丁度一週間が過ぎた日のことだった。

 私とヴァナディスは公園でケイコの姿を見かけた。

 この時、ケイコはベンチに座っている老人女性と何かを話していた。


「立てないんですか?」

「もう、全然身体が言うことを聞かなくてねぇ。立つのが辛いんだよぉ」

「そんな身体は、いっそのこと、こうしちゃえばイイ!」


 そう言うとケイコは、右腕を老人女性の方に突き出した。

 魔法を使う気だ!

 しかも無詠唱。

 すると、老人女性の身体は一瞬、宙に浮いたかと思うと、ベンチに腹ばいに寝かされた。


 その直後、

「ベキベキッ! バキッ! ゴキッ!」

 まるで骨が折れるような激しい音が老人女性の全身から聞こえてきた。もしかして、これって全身の骨を砕いたとかじゃないよね?


「うわぁ……」

 思わず声を出す老人女性。


 コイツ、とうとう本性を現したか!

 そう思って、私とヴァナディスは、慌ててベンチの方に駆け寄った。


 すると、

「あー、スッキリした!」

 そう言って老人女性がベンチから立ち上がった。しかも、打って変わって身体が軽そうに見えた。

 これって?


「みんなにもやってくれているって聞いているよ。ホント、済まないねぇ」

「じゃあ、もし、また辛くなったら言ってください」

「そうさせてもらいますね、ケイコさん」


 そう言うと、老人女性はスタスタと公園を後にした。さっきまで立つのが辛いって言っていたのに、ムチャクチャ元気になっているよ。

 いったい何だったんだ、これ?

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