26.三千人で合計約十万だって!
あのドンチャン騒ぎから三日後、私達はディスプロシ島に向けて移動を開始した。
私とミチルさん、それからディスプロシ島の10人娘の合計12人の大所帯。
しかも、連続転移で出る場所は、しばらく海上になるから途中休憩も難しい。
あっ! でも、船でも作れば何とかなるか。
ただ、連続転移を何回もやると、みんなゲロゲロになるからね。
でも、強力な転移魔法を使える者なら、誰もゲロゲロにさせずにディスプロシ島まで一瞬で送り届けることが可能なはず!
この日、ゾウサンガパ国王陛下……ええと、ビスカス国王陛下ね……に命じられて陛下の部下で転移魔法が使えるフロギスが来てくれた。
国王陛下が、先日、謁見した時にお約束してくださったことを実行されたのだ。フロギスを貸してくださるってね。
彼の力なら、多分、一気にディスプロシ島まで行くことが可能だよ。
マジで助かる。
「じゃあ、準備はイイですか?」
「OKです!」
「では、行きますよ! 転移!」
そして、次の瞬間、私達はディスプロシ島の海岸に無事到着していた。
私達が出たところは岩場だった。
たしかに、この島は岩場がほとんどで砂浜が余りないとは聞いていたけど、せめて最初は砂浜から入りたかったな。
ただ、砂浜があると言っても、波が荒くて海水浴には向かないらしいけどね。
「送り届けてくれて有難う」
「では、ご健闘を祈ります。私はこれで」
そう言うと、フロギスは転移魔法でアデレー王国へと戻っていった。
一応、陛下付きの魔法剣士だからね。他に抱えている業務が色々あるらしいんだよ。その合間を縫って来てくれていたんだ。
ニオベ達の話では、ディスプロシ島は、人口三千人程度。
それでいて、これだけ高HPな年頃の女性が10人もいるのは、確率的には凄いことなんじゃないかな?
この岩場付近でも、この時間帯なら普段は釣りをしているオッサン達がいるはずとのこと。なのに、人の気配が全く無い。
私は、正直、嫌な予感がした。
海岸沿いの道を歩いて行くと、道の脇に見たことのある植物群を発見した。
「こ……これって!」
気色悪い食虫植物の群生地帯。
とんでもない数だ。100や200じゃ済まない。
間違いない。
魔王は、島の人達からHPを抜き取っていたんだ。
もしかすると、島民全員がヤラれているのかも知れない。
マジで最悪だ。
私は、
「HP最大!」
持ち前の超HP……ハレンチパワーを最大値まで上げた。
背後に突き刺さる凄まじき嫌悪の視線。
二十個の目から放たれる負のエネルギーだよ。
さすがに私もキツイ。
でも、これから島民達を救おうって言うんだからさ。
少しは彼女達も自重してほしいところだよ!
それにしても、端から順に捕虫葉に指を突っ込んで行くのは大変だ。
もっと、簡単にやれる方法は無いだろうか?
うーん……。多分、無いよね。
ここは仕方が無い。
私は、端から順に、それらの植物の捕虫葉に指を突っ込んで行くことにした。
すると、
「ボン! ボン! ボン!……」
次々に人間の姿に戻って行く。
私のHPがドンドン減って行くけど、元の値が半端じゃないからね。
三千人で、HPの平均が30としても十万に満たない。
私のHPは二百万。
なので、きっと余裕で何とかなるよ!
人型に戻った人々は、
「助かったのか、俺達?」
「奇跡だ!」
「ニオベ! お前も無事だったのか?」
「レナ? ヴァナディスも?」
救出されたことに喜び、さらに10人の娘達との再会に喜んでいた。
中には、感極まって涙を流す人々も……。
驚いたことに、この人達、ニオベ達と違って服を着ている。地植えにされるのと鉢植えにされるので何か違いがあるのかな?
まあ、今は深く考えるのはやめよう。
服を出さなくて済んだことを良しとしよう。
ただ、私の姿が目に入ると、
「姉ちゃん、イロッペエな!」
「俺の嫁になんねえか?」
「Hしよ、H!」
もう早速、言い寄ってくる男達。
しかも言い方がダイレクトだね。
超低俗だよ。
一応、ニオベ達が、
「順に魔王の魔法を解除してくれているんです!」
「邪魔しないでください!」
と言って、その野郎共を私から引き離してくれたんだけどさ。
でも、ニオベ達が私に向ける視線は、とても怖かったよ、うん。
しかも、その一方で、
「何、あの女!」
「ムカつく!」
「死ねばイイのに!」
超アンチな島の女性陣。
ニオベ達よりも、さらにツーランク以上は強烈であろう、負のエネルギーに満ちた視線を送ってくれていたよ。
あのさぁ。
アナタ達のことを助けてあげたのは、一応、私なんだけど。
そんな言い方って無いよね?
それに、まだ救出中なんだけど。
言われる覚悟はしていたけどさ、やっぱり気持ちがドンドン萎えて行くよ。
もう途中でやめて帰ろうかな?
でも、ここで止めたら、この島まで来た意味が無い。
私ってホント、お人好しだよね。
全部で三十分くらいかかったけど、ここに群生させられていた人達を全員、人間の姿に戻してあげた。
その間、ずっと女性陣からの罵声を浴び続けていたんだけど……。
ここに群生させられていた人達は、合計で700人ちょっと。
HPは二万くらい減ったけど、まだまだ全然余裕だね。
ここで、私は一旦、HPを100まで下げた。
一応、ヴァナディス達に負けないように50までは下げなかったんだ。
島の女性達の視線は、まだ少しだけ冷たいけど、随分緩和した感じだ。
一応、私が自分達を救出してくれたって認識はしているみたい。
さっきまでは、その認識すら飛んでしまうほどの負の感情しか持っていなかったってことだね。
「あのう、一応、礼を言っておくわ。有難う」
たださあ。そんな言われ方をしても、全然嬉しくないんだけどね。
でも、さっきまで超アンチな罵声を投げかけていただけに、私にどう言って自分達のことをフォローすれば良いのか分からないんだろうね。
「他の島民達は?」
「気に入られた三人の娘以外は全員、植物の姿に変えられました」
「やっぱりね。ニオベ!」
「はい?」
「レーダーお願い」
「分かりました」
やっぱり、HPが100だとニオベの視線が冷たい。
一応、こっちの言うことを聞いてはくれているんだけどさ。無意識に、そうなっているんだよね、きっと。
私は、ニオベの案内で島の奥に向かって歩き出した。
道の途中に、例の趣味の悪い食虫植物が、疎らに生えているところもあれば、群生しているところもあった。
それから家の中に生えているのもあったし、庭に生えているのもあった。
私は、順にそれらの捕虫葉に指を突っ込んで、ひたすらHPを分けて行ったんだ。
「助かったぁ!」
素直に喜ぶ男性もいれば、
「姉ちゃん、いくら?」
Hしか頭にない低俗男もいたし、
「なに、この女!」
超アンチでムカつく女もいたけど……って言うか、基本的に女性は、全員がこんな塩対応だったけどね!
ニオベのレーダーで探知できる島民を全員救出した頃には、既に日が暮れていた。
さすがにニオベもエネルギーを使い果たして、これ以上の救出活動は出来なくなっちゃったんだけどね。
でも、ほぼ全員救出できたっぽい。
それにしても、やっぱり三千人は大きいね。
私のHPは、合計で十万程度下がったよ。
まあ、予想通りだね。
とは言っても、元の数値が二百万って超バケモノ級の値だからね。
下げ率としては、全然大したことは無い。一割にも満たないよ。
でも、超高HPのままじゃ落ち着いて話もできない。
っと言うか話をさせてもらえない。
女性は敵視しかしてこないし、男性はエロしか考えてこない。
仕方なく私は、一旦HPを下限値の50まで下げた。
これならニオベやパラスと変わらないから普通に話ができるよね?
男性達の目は、さっきまでと比べれば随分まともだけど、でも、やっぱりHな視線を送ってくる。
まあ、HP50じゃ普通よりもエロいもんね。
一方、女性達の視線は、かなり落ち着いた感じだ。
少なくとも罵声は消えた。
ニオベ達のお陰で、HP50には、多少なりとも慣れがあるんだろうね。
「助けていただき、有難うございます。それと、助けていただいたのに大変失礼な発言をしておりましたこと、ご容赦ください」
賢そうな顔をした若い女性が代表して私に謝罪した。
HPは49か。
パラスとニオベの丁度中間だね!
ってことは、もしパラスの代わりにこの女性を鉢植えにしていたら、島外に出された女性10人のHPの合計は666になっていたはずだよね?
何故666にしなかったのかな?
まあ、後で魔王に聞いてみよう。
「私はアキ。お名前を伺っても良いですか?」
「ユリと申します」
「これで、島民は全員でしょうか?」
「あと一人だけです。若い男性が一人」
「探すのは明日になるけどイイかしら?」
「レーダーが機能しないのですから仕方ありません」
「他は?」
「魔王に囲われた三人だけです」
「そう……。それにしても災難だったわね」
「はい。ニオベ達10人のHPを抜き取って島の外に送り出した翌日、その三人以外の島民全員から、魔王はHPを全て抜き取ってしまったのです」
「でも、なんでそんなことを」
「分かりません。ただ、これで1センチ大きくなったとだけ言っていました」
「1センチ?」
「はい」
訳が分からないよ。
まあ、沼尾のヤツは、元々訳が分からないヤツだったけどね。やっぱり、魔王イコール沼尾な感じだよ、もう。
ただ、HPを十万も吸い取ったわけだから、魅力的な男に変わっているんだろうか?
いやいやいや。アイツが魅力的な姿になったのなんて想像できないよ。
まあ、どんな姿になっていようと、私がアイツに惹かれることだけは絶対にないけどね!
ある意味、楽しみではあるか。
と言うわけで、一先ず、今日の営業は終了。
魔王の住む処に攻め込むのは明日にすることにした。




