211.報告ラインがおかしくない?
レイコは、長屋のような建物の一室に通された。
そこには、ちょっと偉そうにした中年の男性兵士の姿があった。
「ダンテ様。怪しい女を連れて参りました」
レイコを連れて来た兵士が、その中年男性兵士に言った。
ちょっと偉そうにした中年……ダンテは、レイコを連れて来た兵士の上司らしい。
「うむ、ご苦労。それにしても一般人の女が、こんなところに一人でいるとは珍しいな。で、女。お前の名は?」
「レイコ」
「何処から来た?」
「東京だけど?」
「聞かぬ地名だが、ドコの国の村だ?」
「はぁっ? 村じゃないけど。日本の首都だし(法律で定められたわけじゃないけど)」
「日本? 聞かぬ国だが……。もしかして、お前のいた星の名は?」
これにはレイコも溜息を吐いた。
レイコは、ここが地球の何処か……と言うか、普通に言葉が通じるので日本の何処かと思っていたし、少なくとも別の星とか別の世界に行かされたとは考えてなかった。
それに、東京と言えば世界中で知られた地名だ。
仮にココが日本でなかったとしても、兵士レベルの人間が東京を村と認識するとは、余りにも無知無教養過ぎるとしか彼女には思えなかった。
「地球に決まってるじゃないの!」
「地球だと?」
「ええ!」
さすがにレイコの口調のきつくなる。
彼女からすれば、ここの兵士が地球と言う単語を知っていて当然なのだ。
しかし、それを知らなそうな感じに思える。
余りの無知さにレイコは苛立ちを覚えていた。
「だとすると……。多分、間違いないだろう。明日、総統に会って頂く」
「総統?」
「我がゴーランド共和国のステルガ総統だ」
「ゴーランド共和国?」
そんな国名は聞いたことがない。
ただ、あの暗闇で聞いたマンドラゴラとか言う男性の言葉が正しければ、一応、これまでの遣り取りの辻褄が合う。
もしかすると、本当にここは地球以外の星……異世界なのでは?
ようやくレイコも、そう思い始めた。
…
…
…
今の時間軸に戻る。
一方のアキ達……私達の方だけど……。
魔獣の骨発電の話を聞いた直後のことだ。
「アキ。大変!」
慌てた表情でヴァナディスが部屋に入ってきた。
「どうかしたの?」
「うん! 血まみれの男の人が店の前に来て、イキナリ倒れて」
「えっ? マジで?(ウンチまみれの人が?)」
「うん! 血がドバーって出てて、服にもいっぱい付いてて」
「そんなにいっぱい出てるの?(ウンチが?)」
「うん! 血で店の前も大変なことになってて」
「またかー。もう、この間のウンコの呪いの件が片付いたばかりなのに、また店の前がウンコだらけって」
「えっ? 違うけど?」
「へっ?」
ヴァナディスが、
『何言ってんの、この人?』
みたいな目で私のことを見たよ。
これって、もしかして私、またやっちゃった?
ええと、この場合、
『股がHなコトやっちゃった』
じゃなくて、
『再びアホなコトやっちゃった』
って意味だからね!
すると、ケイコが、
「あのさ、ヴァナディス。前に『ウン』を付けちゃイケないのは『こ』だけじゃなくて『ち』もだからね」
とヴァナディスに言った。
これを聞いてヴァナディスは、右手で口を押さえて、
「あっ!」
と声を出した。
ナニか思い当たる節があるみたいだった。
「ゴメン、アキ。血だらけの男の人が店の前で倒れて、周りも血だらけになってるってこと。なので、治療をお願いできるかな?」
「そう言うこと?」
「うん。血だらけ……じゃなくて、血だらけの人は軍服を着てるんだけど」
ヴァナディスが、『うん』の直後に『血』って言ったのを言い直したよ。
話の流れから、さすがに今回のは、
『ウンチだらけ』
じゃないって私にも理解できたけどね。
「分かった。店の前ね」
私は、店の前に急行した。
すると、そこには確かに軍服を着ていて、血だらけになった知らない男性が倒れていた。
怪我の状況を確認する意味で、私は、その男性のステータスを覗き見したんだけど……。
その男性は転移魔法が使えるっぽい。
ただ、銃で撃たれていたよ。
この世界には、銃って無かった気がするんだけど?
弾は貫通。
最後の力を振り絞って、ここまで何とか転移してきたみたいだ。
しかも、かなり血を失っていて、失血死直前っぽい。
「ヒール!」
私は、その男性に向けて急いで治癒魔法を放った。
取扱説明書:アキ-108号は、傷ついた男性を完全に癒す能力を有します(心身共に)。相手が男性の場合は、異性愛者でも同性愛者でも治します。
十秒もかからずに、その男性の外傷は消えた。
ただ、傷は消えても、失った血は戻らないから……ってのが一般には定番……。
なんだけど、私の姿が目に入ると、その男性の下半身は、イキナリ臨戦態勢に入ったよ!
これなら、多分、血液量に問題は無さそうだね。
取扱説明書には書いていなかったけど、多分……いや、ほぼ確実に私の治癒魔法は血液量も復活させるレベルなんだろうな。
仕様を考えると……、すぐにナニが出来るようにってことで。
目の前の奴も、さっきまで失血死直前だったくせに、下半身が、はち切れんばかりにビンビンになっているし。
「噂には聞いていましたが、ここまで綺麗で色っぽいとは……想像以上です。アキさんですね?」
「はい」
「私はラージェスト王国の少佐でモランダーと言います。実は、ラージェスト王国の東の果て、カパミネアにゴーランド軍が攻め入りまして」
こう言いながら、モランダーは必死に股間を押さえていた。
今、私はHP……ハレンチパワーを100に設定している。
最大値の二百万からすれば、かなり抑えているわけだけど……。
でも、これだけのHPを持つ女性を目の前にするなんて、普通は無いだろうからね。
ビナタの住人以外は、股間が反応して当たり前ってことだ。
逆に、ビナタの連中は高HPに慣れちゃって、HP100でも普通にしていられるけど……、ある意味、男性機能としては危ない気がする。
「たしか、ゴーランド共和国は鎖国していたのでは?」
「そうです。しかし、何艘もの船を使って百人程度ですが軍隊が上陸しまして。それも、女性だけの軍隊でしたが……」
「女性だけって、珍しいですね?」
「はい。ただ、見たことの無い武器を使っていまして。その武器にやられて、私は怪我を負いましたが、何とか、このことをアキさんに報告したく、最後の力を振り絞って、この地まで転移してきました」
ええと……。
ここからだとカパミネアって、かなり遠いよね?
それを血だらけの状態で転移してきたんだ!
それはそれで凄いな。
たださあ。
今回の件は、普通は、軍の上層部に報告するんじゃ無いの?
なんでコッチに来たんだろ?




