21.女王様ブーツ以外の靴は出せないのかなぁ?
人型に戻った二人に、私とニオベは、急いでスポーツドリンクを飲ませた。
あの花屋の店主は、もう枯らすつもりで二人に水をあげていなかったみたいだね。二人とも可哀そうに……。
一応、自力で飲めるみたいで良かった。それができなかった口移ししなきゃならないところだったよ。
別に美女同士の口移しなら絵になるからイイって言う人もいそうだけどね。
でも、二人とも立ち上がるだけの力はない。
完全に脱水症状を起こしているよ。
何日、水やりを断っていたんだ、あの女店主!
続いて私は、
「服と靴、出ろ!」
急いで二人に着せる服と履かせる靴を魔法で出した。裏路地とは言え、屋外で全裸はマズイもんね。
靴は、相変わらず女王様用だけど……これしか出せないと思うからね。
これだけは勘弁して頂戴!
それから、
「ソープマット、出ろ!」
久しぶりに私はソープマットを出した。テラさんを助けた時に出したヤツね。
一応、二つ出した。それぞれ一人ずつに寝てもらうため。
それを敷いて……、勿論、膨らましてね。その上に二人を寝かせた。
服は、一先ず着せるのではなく、二人の上にかけた。
それから、別に言わなくても分かると思うけど、寝るって言ってもHな意味じゃないからね!
別に、この娘達とHな遊びをするために出したんじゃないんだからね!
それにしても、私の物質創製魔法が随分と役に立っている。
Hに関連するモノしか出せないって制限があるけど、その制限が意外とユルくて助かっている。
後は、一先ず様子見か。
そう思ったところに、
「済みません。お金ってあります? 宿を探してきたいんですけど」
こう言ったのはパラス。
私は、
「お願い」
と言うと、一先ずパラスに金貨1枚を渡した。100,000Wenあれば問題ないよね?
とにかく何処でも良いから、この二人を休ませるところを急いで確保しなければならないもんね。
それから少しして、HP67の娘とHP65の娘が身体を起こした。何とか動けるようになったっぽい。
でも、まだ体調は今一つだ。長く歩けるような状態でもないだろう。
「有難うございます。まさかHPを分けていただけるなんて思っておりませんでした。それに飲み物までいただいて」
「お礼なんてイイわよ。とにかく、助かって良かった」
「私はアイカと申します」
HP67子ちゃんは、アイカちゃんって言うのね。
「私はレイラです。助けていいただき有難うございます」
それからHP65子ちゃんはレイラちゃんね。
「二人とも吐き気とかない? 服は着れる?」
「大丈夫です」
「私も大丈夫です」
二人は、凄くゆっくりだけど、何とか服を着ることができた。
でも、本当に人通りが無くて良かった。
この二人も高HPなだけあって綺麗だよね。
デブス専に嫌われただけのことはあるよ。
もし、男が近くを通ったら、絶対に手を出そうと……いや、喜び勇んで飛び掛かってくるだろうね。
もっとも、そうなったら私が女王様モードで何とか撃退するけどさ。
でも、面倒事は無い方がイイもんね。
一時間くらいしてパラスが戻ってきた。
走ってきたみたいで息切れしている。多分、随分と宿を探し回ったんだろうな。
「一泊一人6,000Wenですけど、宿が取れました。宿泊者は五人でイイですよね?」
「イイけど、まだ昼だし、もう入れるの?」
「体調不良者が二名いるってことで、OKしてもらいました。ただ、場所が街の中央の方で、ここから結構遠いんですけど」
でも、まあ仕方が無い。
宿だもんね。人通りが多いところにあるよね、普通。
なら、街の中央とかにあってしかるべきだよね、うん。
「転移!」
再び転移魔法を使って、私達は町の中央付近まで一気に移動した。
「あそこです!」
パラスが、そう言いながら宿を指さしてた。
偶然にも宿は目の前。
私達は、急いで宿の中に入っていった。
既にパラスが手続きを済ませてくれてくれたようで、私達は、そのまますんなりと部屋に通された。
五人で一部屋だ。ちょっと大きめの部屋で、これなら五人でも泊まるには十分な広さがある。
アイカとレイラには、早速ベッドで横なってもらった。
別に変なことするわけじゃないからね!
でも、まさか残りの3鉢も、アイカとレイラみたいな扱いを受けていないよね?
それどころか、もっとヒドイことをされていないよね?
正直、私は不安になった。
「ねえ、ニオベ。他の鉢の行き先は分かる?」
「私のレーダー魔法によりますと、ここからさらに北に150キロほど離れたところに一鉢あります!」
「分かった。じゃあ、パラスはアイカとレイラのことをお願い。私はニオベと一緒にもう一鉢を探しに行ってくる」
「分かりました。では、お気をつけて」
アイカとレイラはパラスよりもHPが20近く高いけど、今のところは嫌ってはいないみたいだね。
HPが60のオーダーなら大丈夫ってことかな?
それはさて置き、早速、私は連続転移で次なる目的地へと急いだ。
もう一人も今日中に何とか助け出したい。
150キロ離れていると、一回の連続転移では到達できない。100キロ地点で一度魔法は終了し、そこから再び連続転移に入り直す。
でも、ほんの僅かの時間で150キロも離れたところまで移動できるんだもんね。この能力にも感謝しているよ!
よくよく考えると、私を作り出した魔導士エロスは、とんでもない天才魔導士なんじゃなかろうか?
性なる魔玩具の発明家程度に落ち着いてしまっているところが、非常にもったいない気がするよ。
二度に分けた連続転移を終えた。
ここは、レンチと呼ばれる町。コロナに比べると少し涼しい気がする。
飽くまでも町の名前はレンチだからね!
ハレンチじゃないから、勘違いしないでよね!
「あの家です!」
ニオベのレーダーですぐにお目当ての家が見つかった。
ただ、ニオベが指さしていたのは花屋とかじゃない。普通の民家だ。
ってことは、買われていたんだ。
ちょっと面倒だな。イイ人だったら助かるけど……。
「ごめんください」
「はい?」
出てきたのは若い男性。
少しオタクっぽい雰囲気だな。
それに余り人との交流を望んでいなさそうな空気が出ている。
本来であれば、私は関わり合いたくない人種だね。
「珍しい植物をご購入されたと聞き、ちょっと見せていただきたいのですが」
「いえ、そんなモノはございません」
「食虫植物なのですが」
「お引き取りください」
男性が強引にドアを閉めようとした。
この対応は、間違いなく持っているな。
誤魔化し方がヘタクソだよ。
でも、どうして隠そうとするんだろう?
理由は分からないけど、回収が最優先。
私は、とっさにその男性の手を握った。
そして、
「(HP全開&女王様モード!)」
対男性用最大の武器を使う。
私のHPが1,999,868まで上がった。
アイカとレイラに与えた分、ちょっと数値が下がっているけど、普通に考えたら有り得ない超高値だ。
その男性は、理性が飛んだのか、急に私のことを思いきり抱き締めた。
しかし、
「放しなさい、このブタ野郎!」
私が女王様モードのセリフを口にした途端、
「お許しください、女王様」
その男は私から離れてその場に土下座した。
相変わらず便利な能力だ。
ただ、今回は男性だったから服従させることができたけど、女性だったら面倒だよね?
次はミチルさんにも同行してもらうかな?
「食虫植物を持っているはずよね?」
「はい。こちらでございます!」
その男が家の奥から鉢植えを一つ持ってきた。
間違いない。例の植物だ。
「何故、私に噓をついたの?」
「この植物を持っていることで、変な噂が立つと困ると思ったからです。ただでさえ僕は対人関係が苦手なのに、呪いの植物を持っているとか勝手なことを言われたりしたらイヤだなと思って、つい」
「まあ、気持ちは分かるけど……、ただ、この植物は魔法で姿を変えられた人間でね」
私は、そう言いながら、この男性の前で植物の捕虫葉に指を挿入した。
すると、
「ボン!」
例の如く、ニオベ達の時と同様に鉢が割れて植物は人間の女性の姿に戻った。
勿論、デブス専に思い切り嫌われたくらいだから美人ちゃんだよ!
ただ、全裸なんだよね、やっぱり。
男性の前で、全裸で出てくるのは、ちょっと可哀そうな気がしたよ。
でも、早く元に戻してあげたかったってことで勘弁してね。
次の瞬間、私のHPは1,999,868から1,999,804に下がった。
ってことは、彼女のHPは64ってことだね。
一方の男性は、このまさかの展開に驚いて、
「これって、どう言うこと!?」
と大声をあげた。
まあ、その反応は普通だと思うよ。
でも、近所から誰かが来たら面倒になるからね。
声を張り上げないでほしかったな。
仮にも全裸の美女がいるんだからさ。
余計に変な噂が立つ可能性があるよ。
レイプ未遂とか、勝手に変な話を作りたがる人が、世の中には沢山いるからね。
ただ、万が一だけど、この男性が、この美人ちゃんの所有権を主張したら困るよねぇ。
これだけの美人だからね。
むしろ主張してもおかしくない。
もし私が男だったら、
『僕が買った植物が美人ちゃんに変わったんだから、この美人ちゃんは僕のだ!』
って言うよ、絶対。
そして、毎晩Hなことをして楽しむんだぁ!
ええと、とにかく回収。
仕方が無いから、お金で解決しますか。
「魔法を解除しました。済みませんが、この女性は解放させてもらいます。ただ、無償と言うわけには行かないでしょうから、アナタには金貨十枚を渡しましょう」
つまり、1,000,000Wenね。
勿論、男性が駄々をこねだしたら女王様命令で解決しようと思ったけどね。
でも、そこまでする必要はなかったみたいだ。
さすがに1,000,000Wenに目がくらんだっぽい。
その男性は、
「分かりました」
素直に金貨を受け取って、その女性を解放してくれたよ。
有難う、感謝するよ!
私は、HPを50に下げると、
「服と靴、出ろ!」
物質創製魔法で服と、例の如く女王様用ブーツを出して、この美人ちゃんに渡した。
HP全開のままだと、この美人ちゃんが私から服とブーツを受け取るのを拒否しかねないからね。
「これを着て」
「あ……有難うございます」
そして、その女性が服を身に着けるとすぐに、
「転移!」
私はニオベとその女性を連れて連続転移に入った。さっさと、この男性の前から姿を消した方が良いと思ったからだ。
『やっぱり気が変わった。美人ちゃんを置いて行け!』
って言い出されたらイヤだからね。それで、さっさと逃げたんだよ。