18.飲み過ぎ注意!
ミチルさんが早速、家の中から鉢植えを持ってきた。たしかに昨日のニオベと同じ姿をした植物だ。
間違いない。
私は、HP(ハレンチパワー)を最大にした。
やっぱりニオベの視線が痛い。どうしても女性だと本能的に敵対スイッチが入っちゃうんだろうね。
ただ、ミチルさんに超フェロモン魔法が効かないのは助かる。もし、ここでミチルさんが発情したら面倒だもんね。
でもさ。本当は超フェロモンが効かないって言うのも、女性としては、ちょっと悔しいんだけどね。
なんだか魅力を一切感じてもらえないみたいじゃん?
まあ、それはさて置き、私は急いでパラスの捕虫部分に指を挿入した。
ニオベの時と同じで、瞬時に私のHPが1,999,952/1,999,952に下がった。
ええと、ニオベを助けた後にひと眠りしたんで、デフォルトの2,000,000/2,000,000に戻っていたんだよね。
その次の瞬間、鉢が粉々に壊れて気色悪い植物は一人の女性の姿へと変わった。
やっぱり、この娘……パラスも綺麗だと思う。
HP……ハレンチパワーは48/48で、ちょっとだけニオベよりも低値。
容姿の方も、悪く見積もっても女子校で、クラスで上から二番目に綺麗なレベルだと思う。本当にニオベにちょっとだけ劣るって程度かな。
でも、ニオベよりも僅かとは言え格下の美貌なら魔王のお眼鏡には到底適わないってことだもんね。
うーん。贅沢な野郎だな、魔王って。
ニオベだけじゃなくて、パラスも私を睨んでいる。うーん、これは仕方がないよね。責めるわけにも行かないよ。
これがHP2,000,000の宿命だもんね。
あっ! 今は1,999,952か。
私は、急いでHPを50まで下げた。
すると、ニオベとパラスの表情が和らいできた。
このハイパーHPって、本当に何とかならないかな。この数値だけで女性からの支持率が常に底辺だもんね。
「昨日、HPが50減ったはずなのに、本当に戻っているんですね?」
ニオベは、私のステータス画面を見て驚いていた。
通常、ステータス画面は本人にしか見えないように設定されているみたいなんだけど、今回も特別に見せるように設定を切り替えていたんだ。
何故って、ニオベもそうだったけど、パラスだって、私がHPを二百万も持っているって知っていなかったらHPを奪うことに罪悪感を覚えてしまうからね。
なので、私は、わざとステータス画面を見せたんだよ。
それと私は、
「服と靴、出ろ!」
魔法でパラスに合いそうな服を出した。
あと、靴は、やっぱり女王様用のブーツね。
これしか出せない気がするからさ。
これで勘弁してね。
それにしても、
『Hなプレイの関するモノなら何でも出せる』
って能力の定義が、本気でユルくて助かっているよ。
それだけ、世の中の人々は何でもHな方に転用し過ぎているってことだけどね。
でも、今回は、この能力に甘えさせてもらう。
今まで出してこなかったモノなんだけどさ、今回は超高級なスパークリングワインを出すことにした。
しかもロゼ。
ビンの飲料は何でも出せるけどさ、今回のヤツは、
「ホストクラブで頼むヤツ!」
って言ったら簡単に出たよ!
しかも一度に十本も。
ってことは、多分、世の人々がH目的で貢ぐ宝石類とかブランド物のバッグとかも出せるんじゃないかな?
八百屋をやめて別の店に切り替えようかな?
私は一旦、
「転移!」
ミチルさんとニオベとパラスを連れて……そのスパークリングワインも持って自分の店に移動した。
私が転移魔法を使えることに、今度はパラスが驚いていたよ。
でも、転移魔法ってそんなに珍しいものなのかな?
そんなことより、スパークリングワインを出すのは、お店に戻ってからにすべきだった。結構な荷物だよ、これ。
そして、私の店に到着。
一先ず、ここで私は人を待つ。
「じゃあ、私のコネを使ってお城に行くからね!」
ただ、私がこう言った隣でパラスが、
「でも、お城に行った3鉢を助けるって……、そのうち二人は、余り気が乗らないんだよね」
と言葉を漏らしていた。
取扱説明書:アキ-108号は、男性の声なら、どんな小声でも聞き逃すことはありません。
取扱説明書:その分、女性の声を聞き逃すことは多々あります。
取扱説明書:しかし、その女性が聞かれて欲しくない言葉は聞き逃しません。
ホント、女性に対しては性格悪い仕様だな。
いつもなら聞き逃してしまうはずであろう言葉を、私はキチンとキャッチしていた。
その二人と何かあったのかな?
私は、
「えっ? 何で?」
と聞いてしまったけど、するとパラスは、
「会えば分かります」
と言ったきり黙り込んでしまった。
うーん、取扱説明書の通り、聞かれて欲しくなかった言葉なんだろうな。聞き流してあげといた方が良かったかもしれないね。
それから少しすると、品の良い馬車が私の店の前に止まった。
多分、今日あたりリンドラー公爵夫人が来るんじゃないかなって思っていたんだ。やっぱり来てくれたよ!
「いらっしゃいませ!」
「あら、今日は賑やかなのね」
「はい」
「お店のお手伝いの方かしら?」
「実はですね……」
私は、事のあらましを公爵夫人に説明した。さすがに人間を植物の姿に変えることには驚いていたけどね。
でも、
「アキちゃんのHPで治したの?」
むしろ、二人を私が治したことに、公爵夫人は驚いていた。
まあ、普通は魔王の魔法を解除するなんて出来ないイメージの方が強いだろうからね。
ただ、今日は公爵夫人にどうしても会いたかった。
実を言うと、彼女への依頼料として、さっきの超高級なピンクのスパークリングワインを出したんだ。
「リンドラー公爵夫人にお願いがあります。彼女達の仲間が、昨日、ゾウサンガパ家のメイドに買われて行ったそうなんです」
「なるほどね。それで私に仲介役に入って欲しいってとこかしら?」
さすがだね。
ご自分の立場をよくご理解されていらっしゃる。
「そうです。それで、こちらのスパークリングワインをと思いまして」
「そんな、気にしないでもイイのに。でも、アキちゃんがくれるってことは、例の物質創製魔法よね?」
「はい」
「結構なモノなんじゃない?」
「ええ、まあ」
私は、グラスを渡すと、早速、そのスパークリングワインを注いだ。
さすがに、こんな高級品を使ってタワーはやらないよ!
でも、全て事が上手く行った後なら、やってもイイかな?
勿論、自分へのご褒美で!
なんか、ミチルさんが変な目で私を見ている。
勿論、Hな目つきじゃなくて、
『なんてものを渡しているんだ!』
って言いたげな感じ。
そりゃあ、一本でン万円するもんね。このスパークリングちゃんは。
一方のリンドラー夫人は、
「これ、おいしい!」
ガツンガツン飲んでくれました。
「せっかくだから、みんなも飲んで頂戴」
このリンドラー公爵夫人のお言葉に、
「「イイんですか!?」」
なんか、ニオベとパラスが反応していたよ。
やっぱり飲みたいんだね?
「じゃあ、アキちゃん。グラスを持ってきて頂戴!」
リンドラー公爵夫人にこう言われて、私はグラスを店の奥から持ってきた。そして、私達も、しっかりそのお酒を飲みました。
でも、まだお日様が高いんですけど。
こんな時間から飲んでイイのかな?
そして、私達は酔った勢いで(?)、リンドラー公爵夫人の馬車に乗せてもらって、お城へと向かうことになった。
公爵夫人の従者が転移魔法使いだからね。一瞬で、私達はお城の前に到着していたよ。
門番は顔パス。
さすが公爵夫人だね。
そのまま、私達はお城の中に通された。
謁見室に到着する頃には、珍しくリンドラー公爵夫人の足元がふらついていたよ。
どんだけ飲んだんだ?
そう言えば、十本出したうちの三本が空いていたと思う。
多分、公爵夫人が一人で二ビン空けたな!
いったい、いくらすると思っているんだろう?
でも、余程美味しかったんだね!
国王陛下は、別に私を見ても欲情してこない。
だけど、国王陛下の隣では、御后様が私に熱い視線を送っている。
そう言えば、この国の国王も御后様も同性愛者だったっけ。
御后様の隣……国王陛下の反対側にはアスタトス王子の姿があった。ただ、彼は私の姿を見て震えていた。
まだ、トラウマが抜けていないんだね。
それにしても、こんな状態でリンドラー公爵夫人をビスカス国王陛下の前に出させることになるとはね……。
スパークリングちゃんを渡すのは依頼達成の後にしておいたほうが良かった気がする。
「陛下、ごめんなさいね。私も、こんなに酔っちゃうとは思わなくて」
「大丈夫かい?」
「ええ。それで、今日はアキちゃんが陛下にお願いがあるってことで、私が同行させてもらったんだけど」
「アキ殿が? どうかしたのか? 年金のことか?」
「いえ、実は……」
私は、再び事のあらましを説明した。
そして、私は、このお城にあるであろう不気味な食虫植物3鉢を譲っていただけないかとお願いしたんだ。
すると、
「分かった。たとえアキ殿の依頼でなくても、魔王に姿を変えられてしまった人間であるなら、その者達を人間の姿に戻すことが最優先だ。誰か!」
ビスカス国王陛下は、側近の者に、昨日購入した不気味な植物を取ってこさせた。
私の目の前に並んだ3鉢。
たしかに、さっきまでのパラスと同じ姿だ。
ただ、この3鉢を目にした途端、パラスが不機嫌な表情に変わった。
やっぱり、このうちの二人と何かあったんだろうね。
でも、急いで助けてあげないと。
私はHPを最大にした。
さっきパラスに渡した分が差し引かれるから、今、ステータス画面に記された私のHPは1,999,952/1,999,952だけどね。
やっぱり、ニオベとパラスが私を睨んでいる。
それと、珍しくリンドラー公爵夫人が敵を見るような目で私を見ている。やっぱり、公爵夫人だって私の最大HPを目の前にしたらそうなるよね。
ただ、ビスカス国王陛下は無反応。
女性には興味無しだもんね。
でも、敵を見るような視線も見せなかった。ビスカス国王陛下のテリトリーは男性同性愛者だから、私の敵にはならないってことなのかな?
良く分からないけど。
それから、何故か背後から皇后陛下が私に抱き着いて来た。このお方は女性の同性愛者だから、こうなっても仕方が無いのか!
さらにアスタトス王子が座り込んで私の右足を抱き締めている……って、おい!
トラウマはどうなった!
まあ、今は仕方が無いか。
この状況を、一先ず私は無視することにした。
そして、この目の前に置かれた3鉢に、順に私はHPを分け与えた。まあ、捕虫葉に指を突っ込むだけだけどさ。
すると、
「ボン! ボン! ボン!」
3株の異様な植物が美しい女性の姿に変化した。




