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14.自動首刈り機!

 それから一週間後、アデレー王国・ラージェスト王国の連合軍がノーソラム共和国軍と激突した。

 私とミチルさんは転移魔法で戦場から数キロ離れた丘の上に転移して、そこから様子を見ていた。

 別に一般人の私は、国や軍から戦いに呼ばれたわけじゃないけどね。


 でも、リニフローラ神が私に期待されていることって、ラヤが暴れるのを抑えること?

 そんなこと、私にできるのかな?



 戦いは、ノーソラム共和国軍が圧倒的優勢。

 今やノーソラム共和国軍の総司令官となるラヤは、颯爽と馬にまたがり、自ら軍の先頭に立って連合軍を面白いように攻撃する。


 たしかにラヤは、堕天使の手によってカワイイ系美人に変身しているね。

 あれが、元男子なんて想像できないよ!



 攻撃って言っても、矢を放つとか剣を振るうわけじゃない。

 たった一言、

「死ね!」

 と言って、敵軍の兵士の首を趣味の悪い魔法で刎ねるだけだ。


 端から順に兵士達の首が飛んで派手に血しぶきをあげて行く。

 そして、そのまま首のない死体が次々と倒れて行く。

 ある意味、豪快だ。

 こんなショーは絶対に見たくなかったね。



 一列目が全員死んだ。

 次は二列目。

 そして、三列目……。


 毎秒四人ずつ首が飛んで行く超スピード。

 一分間で二百四十人。


 たった一人を相手に、一時間で一万四千人以上が絶命するペースか。

 五万の兵を潰すのに数時間。実際には、その前に兵が逃げ出すだろうね。カリセン王国が簡単に全面降伏するわけだよ。



 地球なら、もっと危ない兵器はある。例えば核兵器とか……。なので、ラヤの魔法よりも効率の良い殺戮が地球では可能だけどさ。

 でも、この世界には核なんてモノは存在しない。

 武器と言えば剣とか槍とか弓矢が主流。


 まあ、近代現代と言うよりは中世レベル。

 そんな中で、魔法で容易に人を殺してゆく。

 まさに恐怖の魔法だ。



 その場にいる兵士達からすれば、まるで見えない刃物が順番に自分達の首を刈っているようにしか思えないだろう。

 さすがに、こんなものを目の当りにしたら、いくら戦いに飢えた兵士達でも士気が一瞬にして消え失せる。

 次は自分かと思うと恐怖の余り逃げ出す。

 そんなの当然だろう。誰だって戦うことへのモチベーションなんかより、自分の命の方が大事だから。


 軍が激突してから連合軍が機能しなくなるまでに、半日すらも必要としなかった。そもそも開戦から僅か数十分で兵士全員が逃亡したからね。

 明らかに敵前逃亡だけど、でも、さすがに、これを咎めることは誰にもできないだろう。



 連合軍側は最後尾にいた数人の司令官レベルの者達だけが残された。さすがに彼らは立場もあるし、開戦早々逃げ出すなんてマネは出来なかったんだろうね。

 ラヤは馬上で不敵な笑みを浮かべながら、そんな彼らに向かって突き進んで行った。


 そして、

「あら? イイ男ね」

 どうやら、ラヤのターゲットになったのはアスタトス王子。

 軍の最後尾にいたんだ、こいつ。

 王族ってこともあって、形式上、司令官の一人にされていたんだろうね。


 これでも、結婚適齢期の王子様。

 それに、一応、見た目も悪くない。彼をイケメンの部類と評価する女性も少なからずいるだろう。

 ラヤからすれば、そんな男性が自分の目の前で自分に怯えながら動けないでいる。



 今なら、何をやってもアスタトス王子は自分に抵抗できないってことを分かっているんだろう。

 あの魔法を持っている限り、この世界のラヤは、やりたい放題状態だもんね。


 ラヤは、馬を降りると、

「死にたくなかったら私に奉仕しなさい」

 と言って、強引にアスタトス王子と唇を重ねた。

 むしろ奪ったと言うべきだね?



 ラヤは、地球にいた頃、心が女性だったけど身体は男性だった。

 それが今では身体も女性。しかも結構なカワイイ系美人に作り替えられている。それでイイ男を相手に思い切り楽しもうって魂胆だろうね。


 しかも、自分が襲う側なのを楽しんでいる雰囲気もある。

 余程、支配する側に憧れていたんだろうね、こいつ。


 地球でラヤが、どんな立場……イジメる側にいたのかイジメられる側にいたのか、或いはクラスの中心にいたのか端の方にいたのか、そう言った細かいことは知らないけどさ。



 一方のアスタトスも、カワイイ系美人に襲われて喜んでいるっぽくない?

 表情が変わっているよ。

 怯えていたのが、一転して女王様を崇める下僕に成り下がっているよ!

 M属性だったか、こいつ!



 それにしても、随分、好き勝手やってくれたね、この中二病!

 たくさんの兵士の首を刈りやがって、人の命を何だと思っているんだ!


 それと、アスタトス王子はアンタのモノじゃない!

 私の下僕だからね!



 って言うか、この世界のノーマルな男性は、全部私のカワイイ下僕だ(予定)!

 殺された兵士達も私のだ(予定)!

 いくら私の治癒魔法でも、殺されていては治せない。

 この野郎。思い切りムカついたよ!


「転移!」

 気が付くと私は、ラヤの前に移動していた。

 珍しく、私も相当頭に血が上っていたんだろうね。自分でも無意識のうちに動いていた感じだよ。


 そして、勢い付いた私は、

「離れろ、このクソ女!」

 とラヤに向かって言い放っていた。


 すると、

「なに、このHな女。気に入らない。死ね!」

 ラヤの首ちょんぱ魔法が私を襲ってきた。

 その直後、

「ブチッ!」

 見事に私の首が飛んだ。


 これを目の当たりにしたアスタトス王子は、

「アキィィィィィ!」

 号泣しながら私の名前を叫んでくれた。

 まさに衝撃映像って感じだろうね。目の前で人の首が飛ぶんだよ!


 …

 …

 …


 でもさ……。


 …

 …

 …


 私って人間じゃないんだよね。

 首と胴体が分かれているけど、私は死んでいない。


 もっとも、普通の人間と生死の定義が違うんだけどね。()()()()()()()()なら、まだ私は絶命したことにならないんだ。



 ラヤと私の目と目が合った。

 ちょっと脅かしてやろうか。

「ケケケケケケ!」

 ちょっと不気味に笑ってやった。


 首と胴体がおさらばしているのに気色悪く笑うなんて、完全に魑魅魍魎の類いとしか思えないだろうからなぁ。

 案の定、ラヤのヤツ、ビビっているよ!


 そして私は、首を拾い上げると、

「アンタに私を倒すことはできない!」

 と言いながら自分の首を胴体にくっつけた。

 この『首と胴体をくっつけるところ』って、昔、何かのアニメで見たような光景だな。


 ただ、これだと首を乗っけただけって思うでしょ?

 でも、違うんだな。



 取扱説明書:アキ-108号は大人の玩具なら何でも修復魔法で直せます。



 取扱説明書:アキ-108号自身も例外ではありません。



 つまり、私自身が粉々にされるとか焼かれて完全に炭になるとかで修復魔法が発動できない状態にでもならない限り、私は死ぬことはないってこと。


 そして、私は久しぶりに武器……一本鞭を手にした。

 勿論、能力で出したヤツね。


 十本鞭とかの方が見た目は豪快だけど、実は一点に力が集中するって意味では一本鞭が一番痛いんだよね。


 今回は、絶対に気持ち良くしてあげない。

 奉仕とか労わる心なんてあるものか!

 痛みと苦痛を味わえ!


「HP最大! 女王様スイッチオン!」


 それから、一応、超高速稼働機能は使わないことにする。

 あれを使うと空気摩擦に服が耐えられないからさ。一瞬にして全裸になっちゃうのはティラノ君との戦いで立証済みだもんね。

 さすがにHP最大の状態でストリップショーはしたくない。



 あれっ?

 アスタトス王子が変な目で私を見ている。

 たしかに私はHP最大値にしたけど、でも、ちょっとベクトルが違う。

 Hな意味での変な目じゃない。


 って言うか、化け物でも見ている感じの目だよ。

 明らかに私を見て恐怖を感じているんじゃないかな、これ。


 そりゃそうか。

 首を刎ねられたのに生きているし、首は繋げるしね。

 正直、人間業じゃないもんね。

 人間じゃないからしょうがないんだけどさ。



 さすがに恐怖が性欲を上回ったか。

 そうなると、こっちがHP2,000,000になっても欲情してこないんだね。


 そう言えば、以前、ティラノ君の時にも恐怖が性欲を上回るってあったっけ。

 今後のためにキチンと覚えておこう。


 まあ、今はアスタトス王子のことは置いといて。

 私は、

「ええい!」

 ラヤに向けて思い切り鞭を振り下ろした。


「パシッ!」

 うーん。イイ音!

 しびれるぅ。


 さらに私は、何回もラヤに鞭を打ち込んだ。

「パシッ! ピシッ! ペシッ!」

「痛い! やめて! 許して!」

 うーん。許してあげない。

 一瞬で多くの人を簡単に殺しやがって。



 救世主(サタン側)……と言うか破壊神気取りで好き勝手やらかした中二病の自称少女……。彼女の魔法の質を考えたら、ここで止めを刺さないと、また殺戮を繰り返す。


 でも……。

 残念だけど、私はラヤを痛めつけることしかできない。ラヤを葬り去る機能は付いていないんだ。

 所詮、私は性なる魔玩具に過ぎないからね。


 だけど、このままじゃマズいよね?

 今、ラヤは恐怖で固まっているけど、キレ出したら、この場に居る人間が無差別に首を刈られる気がする。

 それこそ、アスタトス王子も例外じゃないかも。

 そうなる前に何とかしないとイケナイ!



 この時だ。

 私の背後から凄まじいエネルギー波を感じた。

 反重力魔法だ。


 魔法のターゲットはラヤ。

 この強烈な魔法を受けると、ラヤの身体は後方に大きく弾き飛ばされた。

 とんでもない衝撃だよ。

 これじゃ、多分、全身の骨が砕けているし、痛いのを通り過ぎて全身が麻痺しているだろうね。



 さらに彼女に向けてムチャクチャ大きな火炎球が放たれた。

 この火炎魔法に身を包まれて、悲鳴を上げることすら出来ぬまま、ラヤの身体は一瞬で灰になった。

 辛うじて骨が残っただけだ。


 あれだけ派手に暴れまわっていた割には、意外と呆気無い最期だった。

ラヤを主人公にした話が『中二男子が堕天使に召喚されて異世界にTS転移して破壊活動したけど、その後、女神様の手で別の異世界に転生したら聖女と呼ばれるようになりました(治癒魔法発動中!)』です。

そちらも、よろしくお願いします。

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