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13.中二病患者が出たよ?

「じゃあ、今日のところは、これで引き上げるわ」

 リンドラー公爵夫人は、そう言うと馬車に乗り込んだ。


 ただ、お抱えの転移魔法使いが凄いんだろうね。馬車が動き出して数秒後に転移してその場から消えたよ!

 これなら遠方から来るのも楽ちんだね!



 それから数か月が過ぎた。

 一週間に一回は、お店にリンドラー公爵夫人ご自身が来て大人買いしてくれる。今では完全に常連さんだ。

 それから、公爵夫人は、私との約束を守ってくれているようだ。

 私が人間ではないことを本当に誰にも話していないっぽい。


 でも、いずれはバレるんだろうな。

 彼女が話さなくても、魔法で私の正体を感知する人が現れてもおかしくないからね。

 一応、医者なら医療魔法発動時に私の正体に気付くってことになっているし。


 まあ、バレたらその時に考えよう。

 でも、このことを知ったら、私の周りにいる男共は、

『避妊しなくてOK!』

 とか言って集団で襲い掛かってきそうだよね?

 万が一そうなった時は、女王様スイッチを入れて絶対服従させてやる!


 でも、純粋に私のことを愛してくれる男性がいたら、当然嬉しいけど、その場合、その男性は対物性愛者ってことになるのだろうか?

 私は人間じゃなくて等身大美少女フィギュアだからね。

 まあ、あまり深く考えないことにしよう。



 それから、リンドラー公爵夫人から聞いた話だけど、アスタトス王子とメリル姫のご婚約が正式に決まったらしい。

 互いに本人の意思じゃないけど、まあ、それが、この時代の王族ってヤツだろう。その辺のところは双方共に割り切って受け入れているみたいだ。


 それともう一つ公爵夫人から聞いたところでは、七首のレッドドラゴン……ええと、宇都宮さんのことね……。

 そのレッドドラゴンがラージェスト王国のアルミナム山からいなくなったらしい。山から飛び立つところを何人もの人が見たらしいんだ。

 そのまま戻ってきていないってことだ。


 でもまあ、何処に住もうと宇都宮さんの勝手だもんね。

 今世では精神的に健康であってほしいな。


 うつにならないようにね。

 この世界でもうつ病はあるからさ。テラさんみたいに。

 もし、そうなった時にはダポキセチンで良ければ処方するからね!



 そんなある日のことだ。

 私と同じくらいの背丈で、瘦せ型の男性が私の店に来た。

 ただ、彼は私の超フェロモン魔法が効いていないっぽい。私を目の前にして平然とした表情をしていたんだ。

 珍しいな。


 変な話だけどさ。超フェロモン魔法が効かないって言うのも、なんだかちょっと悔しい気がする。

 ぱっと見た感じ、中性的な感じなんだけど、だからと言って男性機能が退化しているってことはないよね?


「お客さん、このお店は初めてですね」

 なんか、イカガワシイ店の店員のセリフみたい。


「会うのは初めてじゃないけどね」

「どこかでお会いしましたっけ?」

「直近ではアルミナム山かな」

「へっ?」

「その前は、株式会社ブラック・オーガニゼーション」

「ええっ!」


 私が前世で働いていた会社だよ、それ!

 なぜ、その会社名を?

 名前の通り、本当にブラックだったからな、あの会社。

 それで宇都宮さんはうつ病になって自殺したわけだし、私だって責任転嫁されて、あそこで働くのがイヤになったってのはあるもんね。


 でも、それを知っているってことは、この人、地球からの転生者?

 果たして誰だろう?


「この姿で会うのは初めてだからね。僕だよ、宇都宮満(うつのみやみちる)

「宇都宮さん?」


 あれっ?

 こっちでは宇都宮さんの姿は七首の赤い龍じゃなかったっけ?

 それに前世と姿が違うんですけど?


「一応、龍の魔力で人間の姿になることはできるんだ」

 なるほど……。

 たしかにアルミナム山からレッドドラゴンが姿を消しているはずだよ。だって、ここにいるんだもん。


「そうなんですか。便利ですねぇ」

「ここでは、ミチルって名乗っているよ。なので、これからは宇都宮じゃなくてミチルって呼んでくれ」

「分かりました。で、ミチルさんは、こちらには旅行か何かですか?」

「いや、この辺に住もうかって思っているよ。知り合いのアキちゃんが近くにいれば互いに心強いかなって思って」

「たしかに私としても近くに知り合いがいた方が心強いです」

「ただ、アキちゃんが思っているほど平和な意味合いじゃないんだ」

「へっ?」

「実はね、ちょっと面倒ごとが起きてね。アキちゃんに力を貸してもらうことになりそうなんだよ」

「私に……ですか?」


 一体なんだろ?

 また、変な話じゃなきゃイイんだけど……。


「実は、この世界の女神様が僕のところに現れてね」

「ラメラータでしたっけ?」

「それは地球のある宇宙の女神様ね」

「そうでしたっけ?」

「こっちの世界の女神様はリニフローラ様」

「リニフローラ?」


 初めて聞く名前だよ。

 そもそも、こっちの女神様には会っていないような気がする……って言うか、自殺現場でシーシアって天使に会っただけだよ。

 たしか、シーシアはラメラータを女神じゃなくて神って言っていた気がするけど?


「ラメラータって女性でした?」

「いや、性別は本来無いらしい。なので、相手によって男性の姿になったり女性の姿になったりするって。僕の場合は精神が病んでいたからマイルドな雰囲気にするために女性の姿だったんだと思うけどね。それで、今は女神様って呼んでいるだけだよ」

「そうですか……」


 じゃあ、もし私が転生時に神様に会っていたら、どんな姿をしていたんだろう?

 超イケメンかな?

 もしかしたら、マスコットキャラクターみたいな感じかも!

 別に今更だけど。


「それで、リニフローラ様が仰るには、この世界の堕天使……むしろサタンというべきかな……。堕天使ラフレシアが地球から一人の自称少女を召還したらしいんだ」

「自称少女?」

「身体は男性だけど心は女性。性同一性障害らしい。それで、綺麗な女性の姿に変えてもらうことを条件に、この世界に召喚されたんだ」

「へー。転生ならぬ転性ですね」

「でも、今回のは、厳密には多分、転生じゃなくて転移」

「転移? 転生とどう違うんですか?」


 異世界物は、前世で読んだことはあるけど、余り詳しくないんだよね。

 細かい定義とかは知らなかったし。


「僕やアキちゃんは死んでこっちで生まれ変わっているじゃん。だから転生。今回の人は、どうやら死んで生まれ変わったってわけじゃなさそうなんだ。生きている状態で、性転換魔法をかけられた上で、こっちに移動してきたらしい。それで転移なんだ」


 そうだったんだ。

 今まで、転生と転移をゴチャ混ぜで捉えていたよ。


「ふーん。でも、地球から来たってことは、私達の仲間ですか?」

「それが、ちょっと違う方向に行きそうなんだ。僕達のように人生をやり直すんじゃなくて、救世主って名目で転移したっぽいんだよ」

「救世主?」

「ただ、問題は、リニフローラ様が転移したんじゃないってことね。堕天使……サタンが転移したってのがポイント」

「あっ!」

「つまり、この世界を救うんじゃなくて破壊するため」

「たしかに!」

「降り立った国はノーソラム」

「なにそれ? もしかして、それってヤバイ国じゃ!?」


 ノーソラムは、一応、名目上は共和国になっている。

 でも、事実上は独裁者が好き勝手やっている国。

 しかも軍事国家。

 絶対に関わり合いたくない国だ。


 地理的には、ノーソラム共和国は、カリセン王国を挟んでアデレー王国とは丁度反対側に位置する。

 ただ、カリセン王国自体が余り大きな国じゃないからね。もし、ノーソラム共和国が何かをしでかすと、アデレー王国にもすぐに余波が飛んできそうだ。


「もしかしなくても、この世界で一番ヤバイ国だね」

「つまりヤバイ軍事国家とサタン側の救世主が手を組むことになるってこと?」

「だね」


 ええとね、宇都宮さん……じゃなくてミチルさん。

 それってさ。正直、『ちょっと面倒ごと』ってレベルじゃない気がするんだけど……。

 むしろ、『ムチャクチャ面倒ごと』って気がするよ。


「その救世主(?)ってどんな人か分かります?」

「リニフローラ様からの情報では、この世界ではラヤって呼ばれているらしい」

「ラヤ?」

「多分、アルファベット表記だとRajahだと思う」

「自ら王の名を騙るか、そいつは!」

「あと、地球では、まだ中学二年生だったって話だね。それで救世主になれるって言うんで喜んで異世界転移を受け入れたみたい」

「中二病かい!?」

「僕もそう思うよ。しかも、異世界転移でチートな力も与えられたって話だしね」

「なんか、厨二にチート能力を与えたって、本気で面倒になりそうですね。どんな力か分かります?」

「それが……、首ちょんぱ魔法だって……」

「はっ?」

「つまり、首を刎ねる魔法らしい」


 ってことは、生かすも殺すも自由自在ってことか……。

 うーん、実に中二病な魔法だなぁ。


「その首ちょんぱ魔法の対象となるのは人間だけですか?」

「例外は神様と御使いだけみたいだね。ドラゴンである僕ですら例外にならないっぽいからね。迂闊に近づくことすらできない。とんでもないよ」

「…………」


 そんな状態で私に力を貸して欲しいって、どう言う意味?

 もしかして、ミチルさんは、そんな物騒な中二病患者と私を戦わせる気?

 少なくとも私の治癒魔法じゃ中二病患者は治せないからね。精神疾患だけは治せないんだよ!


「それでリニフローラ様から、アキちゃんのところに行くように言われたんだ」

「はぁっ?」


 戦わせる気だったのは、ミチルさんじゃなかったぁぁぁぁぁぁ。

 神様からのリクエストかよ!

 でも、勝算なんてあるのかな?



 カリセン王国がノーソラム共和国に全面降伏したのは、その僅か一週間後だった。

 首ちょんぱ魔法への恐怖から兵士達の士気が一瞬で消え失せて敵前逃亡する者が続出。戦闘開始から僅か数時間で、国として降伏を決断せざるを得なかったようだ。


 このままアデレー王国に突入してくるかと思っていたけど、ノーソラム共和国の軍隊は、そこから進路をラージェスト王国側に切り替えた。

 一応、ラージェスト王国もノーソラム共和国と隣接しているからね。

 ラージェスト王国のすぐ南側に、左から順番にノーソラム、カリセン、アデレーと並んでいると思ってもらえばイイよ。

 恐らくノーソラム側は、一気に超大国ラージェストを制圧して絶対的な力を手に入れようって考えたんだろうね。



 ラージェスト王国からすれば、強大な力を持つレッドドラゴンが姿を消したところにラヤを中心とした軍隊の侵攻。

 しかも、ラヤの反抗する者は魔法で首が飛ぶ。

 こんな魔法は、みんな初めて聞いただろうね。


 当然、ラージェスト王国の人々は、レッドドラゴンが去ったことを、

『この戦争の予兆だったんだ!』

『神のご加護が消えたんだ!』

『ドラゴンでさえラヤを恐れたんだ!』

 と、まあ、勝手にラヤのことと結び付けて不安を煽っていた。

 まあ、ミチルさんがアルミナム山から消えたこととラヤの侵攻は、一応、リンクしているんだけどさ。


 そして、ラージェスト王国からアデレー王国に軍の要請が来たのは、それから二日後のことだった。

 転移魔法があるからね。連絡が来るのは早いよ。

 もっともアスタトス王子とメリル姫がご婚約されているから勝手に同盟国扱いだしね。

 これはアデレー王国としても断れないよね?

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