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直ぐ様戦闘、とはならなかった。
だが、英雄憑依のウインドウは開いたままである。用心、なのだろうか。いや、目の前のベラからは猫のような印象を受ける。気まぐれで気分屋。気に入っていたオモチャも、気に入らなくなったら壊してしまうような印象だ。
それこそケイごとき、猫がネズミを狩るより容易に殺すだろう。
「で、どれくらい欲しいんです?」
「あら、素直ね。お姉さん、嬉しいわ。取り敢えず貰えるだけ貰える?」
「鹿肉を2頭分、ではどうです?魚は食べるつもりだから焼いていたんですし。」
「アタシは目の前のお魚も食べたいのよ。美味しそうだし、いい匂いだもの。」
「では魚は1匹でいいですか?」
「他の娘がいいと言うならね。」
・・・。いいと言ってくれる雰囲気ではない。
「交渉とは駆け引き・・ですよね?要求だけされてますけど。」
「乙女はワガママなの。」
キランと星が出そうな笑顔で返された。
周りでは「隊長が乙女・・?」と忍び笑いが漏れている。
「周りの方の意見は違うようですけど。」
「大丈夫よ。死にたくない部下なら笑うはずないもの。」
笑いはピタリと消えた。
「皆さん笑ってましたから、魚を食べられる人は貴女1人しかいませんね。」
「あら、交渉が上手ね。・・。色をつけて銀貨20枚ってとこね。」
銀貨の価値がわからない。
「近くに負傷した女騎士の方がいます。保護をお願いできますか?」
「騎士と言うからにはアタシ達側の人ね。お兄さんには得にならない要求。でもアタシ達も戦地で厄介事は御免だわ。」
「保護を交渉に入れると?」
「怪我の程度は?」
「治療は済んでます。後は休養だけですね。」
「動けない人がいると迷惑なのよね。・・・。その騎士は家名持ち?」
「かめい?」
「名前は聞いてないの?」
「えーと、カノンボールだか、キャノンボールだか。」
「??ボール家?聞いた事はないけど。でも家名持ちかぁ。」
「問題が?」
「身分として無能でも騎士になれる家名持ちが嫌い。あっちも実力と実績で騎士の地位を手に入れた平民騎士が嫌いってやつね。」
「うわぁ。」
わかりやすい対立構造に顔をしかめる。
「平民は護るものといいながら、平民が力を持ったら排除の対象なのよ。戦場の壁扱いならいい待遇の方よ。意味なく戦場に置き去りにされたりするから。」
色々な恨みもありそうだ。
「つまり?」
「その条件はダメって事ね。」
つまり金銭と肉との交換だけで終わる、という事だ。ケイの中にあの女騎士を見捨てるという選択肢はなかった。
「わかりました。先程の内容で交渉を。」
「そうね。今、調理しているお肉も貰えるなら2日だけ荷馬車に乗せてあげる。その変わり、お金はあげないわよ。」
・・・。嘘だろ。1匹分のうさぎの肉を大きな葉で包んで土に埋め、その上で火を炊いて蒸し焼きにしている。匂いとかわかるレベルじゃない。
「わかりますか?」
「場所はわかんないけど肉の匂いがするからね。空腹を舐めちゃいかんよ。」
笑いながらのご回答である。
「わかりました。厚待遇を期待します。」
「さて諸君。お兄さんと負傷した『騎士様』を迎えに行きたまえ。優しいお兄さんの事だ。焼けた魚や隠し持ったお肉を分けてくれるかもしれないよ?残りの交渉は各自でなぁ。」
「え?」
最後に爆弾が待っていた。




