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ASeSiN0〜刺客〜  作者: くらしかる
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4/6

償い

Gdgd注意

私はスメルトと名乗る彼女をジュネーブの本部に連れ帰ることにした。途中色々あったが、彼女に逃げる素振りはなく、まるでロボットの如く忠実についてきた。故に彼女に手錠等の措置を取る必要もなかった。

彼女の行動は明解なようで不可解だった。彼女は従順だ。乗れと命令する前に乗車しているし、ついて来いと言わなくても近くにいる。それだのに、フォローやヘルプはしてこない。敢えて取り上げなかったP2000を巧みに操り、自分の脅威のみ着実にヘッドショットで倒していく。しまいにはどこからともなくUziを拾ってきてそれはもう器用に扱うのだ。しかし、そんな彼女の銃口が本来脅威であるはずの私に向くことは一瞬たりともなかったのだ。

そしてもう一つ不可解なのは、確保したときに彼女が身につけていた武器はwelrodとP2000の他にもう一つあった。その小柄な少女の体にはどうも不釣り合いなAK47だ。実は私はwelrodしか取り上げていない。彼女はこの大きな突撃銃をいつも背中に背負っていながら、旅路の中で、幾らシビアな状況になろうと、AKが火を吹くことは一度もなかった。Uziの扱いからして「撃ち方を知らない」なんていう理由ではないだろう。他に理由はあるはずだ。


そして私は悩んでいた。いつ、彼女にあの事を伝えるかを。


アルプスの山々の間を縫いながら、レマン湖(ジュネーブの東側に位置する湖)にたどり着いた私は、本部にGhostを"保護"した旨を伝えた。激高する上司を後で説明すると落ち着かせ、私はまたジュネーブに車を走らせた。

永世中立国であるスイスも先の強大な恐慌のまえに荒廃の一途を辿り、ジュネーブのかつての栄華の面影を証明するのは手入れの届いていない建物くらいしかなかった。未だ核が悪用されることがないだけまだマシだ。

ところで、我々の本部はある家の地下にある。とある白い木造の一軒家のしたには射撃場などを含めたコンクリートの地下空間が存在するのだ。最初からこのトゥルムに身を置いていた訳ではないので、誰がどのようにしてこれを作ったかは知らないが、B3Fまでエレベーターで繋がれた地下空間はそこにある。

入り方は割と簡単だ。玄関から伸びる廊下のつきあたりにキッチンがある。キッチンは見た目こそ普通のそれと変わらない。シンクやコンロ、食器棚やテーブルのあるごく一般のそれだ。見た目は....だが。

右側にヒンジの付いた冷蔵庫を右側についた隠しスイッチに手をかけて引っ張ると、そこに階段が出現する。階段を降りて床下に降りたところにエレベーターがあって、それで地下空間へ行くといった具合だ。


彼女と二人きりで広いエレベーターに乗る。殺しに来たときの暗視ゴーグルと変声機の代わりに、野盗の"落し物"であるターゲットハンサーのついた多機能ゴーグルと赤いバンダナで完璧に顔を隠している。なぜ顔を隠すのか聞いても答えない、というか基本彼女は喋らない。徹底して無口なのである。彼女の声を聞いたのは一度だけ、スメルトと名乗ったあの時だけだ。

最下層のB3Fに着くやいなや上司であるマクレーンが複数の部下と複数の銃口と共にやってきた。

本能的にホルダーからM93Rを取り出し対抗する。肝心な彼女は何も動じず、銃すら構えることもしなかった。

「ラファーガ、お前、銃口向ける先が違うだろう?隣にいるそいつに向けろ。」


「無理というならばここで殺す。奴を撃て。」



私はラファーガと名乗った彼女についてきた。経緯がどうであれ、誰かと二人旅というものはショーンとの時間以来なので、どことなく懐かしくも寂しい。

この寂しさはどこからくるのだろうか。本当にショーンではない誰かと二人旅しているからだろうか、いや違う。本能的にそう判断する。なぜ私は寂しいの?寂しくないときから誰もいなかった。ショーンを除いては。だけど、ショーンを失ってしばらくも寂しくなんてなかった。なぜなぜなぜ。頭に反芻するこの疑問を解決するだけの手立てを私は持ちかねていた。

彼女が目的地とする場所には心なしか傾いた木造の白い家がたっていた。玄関を潜るとまるで生活感があるようでない小奇麗な廊下が続いている。つきあたりはキッチンになっており、何やら冷蔵庫から階段が出現したり、地下に伸びるエレベーターがあったり、本当によくわからない家である。

そして極めつけはエレベーターの扉が開くやいなや視界に飛び込んでくる星の数ほどの銃口のお出迎えである。本当に職員総出のお出迎えと言った感じだ。熱烈な、ね。


リーダーらしき男が彼女に命令する。

「無理というならここで殺す。奴を撃て」


いつしか耳に残したこの言葉。ショーンと私の最初の問答のこの言葉。


"無理というならここで殺す。奴を撃て"


あのとき、悪意なき殺意と共に私を襲ったこの言葉は、今度は明らかな敵意と憎しみをつれて私を襲った。

彼女の銃口は少しずつ下に向いていった。もはや反旗を翻すのも時間の問題か。逃れる術はない。さて、どうやって死ぬのだろうか。手足を一本ずつ撃たれて失血か、それとも眉間を一発か。目の前の憎悪の渦を加味すると、後者である可能性はないか。じゃあ、これからの激痛に備えるとしよう。


「56人目」

唐突に彼女が口を開く。「3分だけ」そう言って私に向き直った彼女は手に持つM93Rのグリップをこっちに向けて差し出す。

そしてさらに続ける

「ショーン オドネル。私の56人目のターゲット。」

目の前が真っ白になる。

「ヘッドショットで殺害。」

まさか....。

「そう、彼を殺したのは私よ。」

あのとき、スコープの向こうにいたのは...。私が本当に殺すべきは....。こいつ....。

あのとき、慟哭と共に溢れ出た殺意がどんどん膨張していく。

目の前のハンドガンをむしり取る。同時に無数の銃口がこちらに向く。でもそんなこと気にしてられない。こいつを殺すんだ。おそらく私の側頭部には赤い点が密集しているのだろう。「ダメよ」誰かがあの集団を制止する。今、私はここでこいつを殺せる。すぐにでも。この引き金を引けば3発の鉛弾がこの腐った脳みそに風穴を開けてくれるのだ。

"生きるために殺せ"

頭をよぎるこの言葉

私はM93Rを投げ捨てて、ホルダーに収まるP2000を取り出した。そしてその冷たい銃口をやつの額に押しあてる。

"生きるために殺せ"

またよぎる。言葉を振り切ってトリガーに手を伸ばす。

"生きるために殺せ"

"生きるために殺せ"

"生きるために殺せ"

反芻するあの言葉が膨大な力となって引き金を押し返す。


「その子を殺したって生きられないわよ」

群衆の銃口を一声で降ろさせたあの声が私をとめにくる。何か私を諭し、私に救いを差し出すようなその声は私の力を奪っていった。

いや、ダメだ。例えここで死んだとしても、ショーンの復讐は遂げるんだ。

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

頭の中で増幅する殺意に身を任せる。殺せ、今こいつを殺せるんだ。さあ、早く。引き金を引くだけでいいんだ。


「生きるために殺せ」


その言葉は突如、私の鼓膜をそして理性を刺激した。先の私を止めようとしたその声が私を縛る。


「ショーンはそんな殺し方望まないわ。」

ショーン?今確かにこの声の主はショーン、彼の名を口にしたのか?

「ショーンは理性に生きた男なのだから、殺意にモノを言わせて引き金を引くその殺し方を彼は愚かと言うでしょう。」

彼は常に理性に支配されていた、それはまぎれもない事実だ。そして彼は衝動というものを尽く嫌った。


ターゲットハンサーは彼女の顔を、頭部をただ冷たく赤く表示する。


「生きるために殺せ」

そう小さく呟くと、私の銃口は上に火を吹いた。

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