第九姫
戦場では少年兵ソラが窮地に陥っていた。
「くっ……こいつ普通に強い!
本当にヤバい奴だこれ!」
相手は金属製の肉体を持つ巨人で、
攻撃力も防御力も相当な魔物だった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
よくよく考えてみれば、ソラの方から仕掛けてんだけどなぁ!」
「あれはたしか“アイアンゴーレム”だったはず
いやらしい攻撃は無く、正攻法で強い魔物だ」
「ソラの鎧がもう持ちそうにないが、
俺には観ていることしかできない……!」
「本当ヤバい!マジヤバい!」
場面は変わり、ワカバは防具屋を訪れていた。
「姫様には専用のビキニアーマーがございますので、
このような所に用はないかと……」
「それが嫌だから来たのです
鎧に必要なのは見た目ではなく、機能性です
あのような破廉恥な布切れに防具としての効果は見込めません」
「しかし姫様、
あのビキニアーマーは最高級の素材で作られております
姫様に着ていただかなければ、国民の血税が無駄になってしまいます
その値段たるや、国民1万人分の生涯収入に匹敵する金額にございます」
「なんと愚かな……
そのお金で国全体の防衛強化を施せばよかったのに……」
「姫様、それは時間があればの話です
突如として現れた邪悪なる存在に対し、
我々は今できる方法で対抗するしかないのです
5年……いえ、3年もあれば
完璧な対策は可能だったでしょうが、
敵はいつだって突然やってくるものです」
「国王陛下からそう聞かされたのですね……
それはさておき、このフルプレートメイルは良さそうですね
全身を覆い隠せるので、わたくしのような素人でも安心できます」
「姫様、それではビキニアーマーを見せられませんよ?
私は姫様にも“見られる悦び”を知ってもらいたいのです」
「変態は貴女だけで充分です」
場面は戻り、兵士たちの戦いは終わった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
しっかし、今回はマジでキツかったな!」
「ああ、“アイアンゴーレム”は
今まで戦った敵の中でも最強だった
これ以上、何事も無ければいいのだが……」
「お前らの戦い、しっかりと見届けたぜ……!」
「うっ……うぅぅ……!
買い替えたばかりの鎧、また壊されちゃったよぅ……!」
鎧だけでなくまたもや衣服を引き裂かれたソラだったが、
兵士たちはアイアンゴーレムの撃退に成功した。