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【異世界企画】#2 お城に行ったら異世界から来たのに門前払いされそうになった!前編

【異世界企画】#2 お城に行ったら異世界から来たのに門前払いされそうになった!


 まさに、中学生のセンスが光るタイトルだ。

 起こった出来事を見たままに伝えている。捻りのなさが、一周回って面白いまである。

 サムネイルも前回同様、動画の中の適当なシーンが自動で選択されているらしかった。前回は奇跡的に美しい街並みが映る画面だったが、今回は何が映っているかすらよく分からない部分が画像として切り取られていた。


 動画を開くと、前回と同じくピコンと録画を回す効果音がした。


「ブンブン!ハロー アナザーワールド!!どうも、つるつる10(てん)です!」


 今回もうざいほど気さくなテンションで、動画は幕を開けた。

 前回の続きで録画を回しているようで、少年の背後には中世ヨーロッパを想起させる美しい街並みが映っていた。縦画面なのも相変わらずだ。

「ええ、今回ですけれども!今画面に奇麗な街並みが映ってると思うんですけど、その一番上!ここ!」


 そう言って少年は、傾斜の少しキツい街並みの頂上にある、お城の方を指さした。


「ここ、行ってみたくないですか!?お城!かっこいいですよね!てことで、今から歩いて向かってみます!!」


 相変わらず語尾に、感嘆符(エクスクラメーションマーク)を連打する話口調だ。視聴者はイライラすると共に、見ていて疲れることこの上ないだろう。


 少年は噴水の広場を抜けて、大通りを上り坂の方へと歩き出した。


 大通りの左右には、露天商が所狭しと並んでいた。その多くは食べ物を売っている店だが、中には骨董品を扱う店だったり、珍しい宝石を売っている店だったり、武器や防具を取りそろえた店などもあった。そういった店の店主は、服装で身分を見分けているのだろう、見るからに階級の高い人々に声をかけていた。


 そんなことはつゆ知らず、動画を回している少年は、高級そうな武器を取りそろえた店に足を運んだ。


「うおおおおお!この剣かっけーーーー!」


 少年が目にしたのは、真っ白な鞘に収まる大剣だった。柄の部分に宝石があしらわれていて、見るからに聖剣といった面持ちだった。その大きさといえば少年の背丈と同じくらいはあって、この少年にこれを振れるとは到底思えない代物だった。


「おいなんだ坊主。こいつぁ売りもんだ。見せもんじゃねえんだ。帰った帰った」


 あえなく、少年は店主に追い払われた。

 ちぇ、と少し残念そうなそぶりを見せ、少年は大通りをまた歩き始めた。


 ラッシュアワーはとうに過ぎたのだろうか、大通りはそこまで人通りが多くなく、


「どいたどいたー!」


 と時折、馬車が駆けていける程だった。パカラパカラと、馬の蹄が石畳を小気味よく叩く音がした。そこそこの勾配をもろともせず、馬車は荷物を積めるだけ積んで、坂道を登っていった。


「いいなあ、俺も馬車乗りたいなあ」


 少年は少し歩いただけなのに、既に疲れの色を見せ始めていた。普段外で遊ばない質なのだろう。最近の中学生というのは、家でゲームばかりしてだらしないと、年齢層の高い視聴者なら思ったかもしれない。


 少年は「ちょっと休憩」と、行商人のテントとテントの隙間に腰を下ろした。

 休憩中は一言も発さず、何も画面映えしない定点が続いていたのだがカット編集されておらず、視聴者は動画のシークバーを右にずらすことを余儀なくされた。


「さて、気を取り直して歩いていきましょう!」


 しばらく休んで元気を取り戻した少年は、再び歩き出した。




「おいらの尻尾のケバブはいかが?安いよ安いよ~」


 途中、見るからにトカゲの形状をした顔の店主がいる屋台があった。


「なにこれ!面白そう!」


 少年は“美味しそう”ではなく、“面白そう”で屋台に喰いついた。少年がカメラをケバブの方に移すと、しかしなかなかどうして美味しそうな肉塊がぶら下がっているのだった。


「お、坊主、食べてくかい?おいらの尻尾」


 しかし、視聴者たちは店主の顔を見ると「うーん、こいつの肉なのか」と食欲が減退したことだろう。だが、少年はそんなこと気にせず、「食べたい食べたい!」と食いついていた。元々の動機が“面白そう”だったからだろう。


「ひとつ500コニーね。坊主、金は持ってるかい?」


 コニーというのは、現地通貨だろう。


「ええ、1500円なら持ってるけど」


「それはこの国では使えないよ。両替しておいで。もしかして坊主は、外国から来たのかい?」


「俺、異世界から来たんです!だから多分、円は両替できません!それでは!」


「??」


 店主は少年の言葉が理解できず、きょとんとした顔のまま「またのご来店を」とお決まりの謝辞を少年に送った。

 少年はケバブを食べそこない、ぐぅと腹を鳴らした。


「腹減ったな~」


 目の前に美味しそうなものをぶら下げられて、飯テロ状態になり空腹を覚えたのだろう。

 少年は空腹を誤魔化すように、歩く足取りを速めた。


「ああ!」


 歩いていると、前方から誰かが叫ぶ声がした。見るとそれは若い女性で、果物の入った紙袋をうっかり落としてしまったようだった。落とした場所が運悪く坂になっていたため、果物は少年の近くにまで転がってきていた。

 少年はスマホをポケットにしまい、果物を拾い始めた。その間、視聴者は少年のポケットの中の真っ暗な映像をしばらく見せられることになった。がさがさと作業する音がひとしきり聞こえ後、少年は女性に果物を手渡したようだった。


「はい、お姉さん!全部拾ってきたよ!」


「まあ、坊や、優しいのね。ありがとう」


「えへへ~」


 少年の鼻を伸ばすような声から察するに、相手はかなり美人だったらしいが、生憎映っている映像は少年のポケットの中の様子だ。おっとっと忘れてたと、少年がスマホを構えたころには女性は通り過ぎていた。これには視聴者もご立腹、バッド評価が増えるだろう。


 歩いているうちに、ある事に気づかされる。町全体が白い壁と赤い屋根に統一されているものの、上の方へ行けば行くほど、家の装いがより豪華になっていくのだ。中腹を過ぎたあたりから3階建て、4階建ての建物がちらほらと目につくようになり、上の方へ行くと庭付きの立派な豪邸があったりした。


 街の最上部に位置するお城は、これまで見た建物の中で一番豪奢だ。

 白壁の円筒を幾つも不規則に積み重ねたようなその形状は、並外れた建築技術を感じさせた。

 城の前には広大な庭が広がり、手の込んだ植木が枝を伸ばしていた。入口の門も馬車を通すためだろう、かなり大きいものがこしらえられていて、門番が左右に常駐しているようだった。


 城まで辿り着いた少年は「すげぇ」と感嘆の声を漏らしたが、次の瞬間には


「それでは、今からここに入ってみたいと思います!」


 と、意気揚々に門番の方へ駆け寄っていった。


 その瞬間、何の前触れもなくピコンと録画を切る音がした。

 締めの挨拶もなく、次回予告が差し込まれることもなく、唐突に動画は終わりを告げた。録画時間が30分を超えていたため、恐らく尺の事を考えての事だろうが、視聴者は突然のぶつ切りにイライラしたことだろう。

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