【異世界企画】#1 異世界へ行ってみた!
※前書きでは動画概要欄を模倣しています
初めまして、異世界系y〇utuberのつるつる10(てん)です!
今回は異世界へ行ってみました!見たことないものがいっぱいあって、楽しかったです!
チャンネル登録、コメント、高評価お待ちしております!
某大手動画投稿サイトでは、日々新人の投降者たちがしのぎを削っている。
小中学生のノリと勢いだけの動画、高校生大学生による、多少手の込んだ編集を織り交ぜた動画、社会人の落ち着いた語り口調の雑談動画。ゲーム実況、美容系動画、モノ申す、歌ってみた。
市場が飽和し、ある程度動画づくりのノウハウが普及してありふれた動画ばかりが投稿される中、一際目立つタイトルの動画が新たに投稿された。
【異世界企画】#1 異世界へ行ってみた!
動画投稿が初めてだから、サムネイルの作り方を知らないのだろう。動画の中途半端なシーンの画像が、タイトルの上部を飾っていた。もちろん、目を引くような飾り文字が入っていることなどないし、ましてや画像編集によるエフェクトがかかっているわけでもない。
ただ、投稿者の男子中学生がカメラに向かって語り掛けている画面がサムネイルになっていて、おいおいプライバシーはちゃんと守れよと突っ込みたくなるような、よくある代物だった。
しかし、その背景に映り込んでいたのは、紛れもなく異世界を想起させるような光景だった。
中世ヨーロッパ的な建築が、折り重なって一つの大きな塔を構築するように、一つの巨大な街を形成していた。赤い屋根屋根が美しく連なり、白塗りの壁に小さな窓が不規則に空いている様に芸術を感じる。まるで“ミッケ!”という絵本のようだが、明らかに実写だ。その他の手の込みようが明らかに中学生なのに、背景の映像だけクオリティが高く、異様なアンバランスさを感じさせた。画面に映っているあほ面の彼に、CGなど使えるようには思えない。
それでは、いざ、動画を再生してみる。
最初にピコンと、録画開始の効果音が聞こえた。この箇所をカットする編集技術がないためだろう。
「ブンブン!ハロー アナザーワールド!!どうも、つるつる10です!」
そこには、数々の小中学生投稿者が模倣してきた大手投稿者の挨拶を真似る、お調子者の中学生が映っていた。「ブンブン!」というボイスパーカッションは多少練習したのだろうが、まだまだ汚い響きだ。もしかするとこの挨拶の時点で、(ああ、またこの手の中学生か)と、ブラウザバックする人もいたかもしれない。
また、スマートフォンで撮影しているのだろう、画面がブレブレだし、投稿サイトは横画面なのに縦画面で撮影していたために黒い帯が入っていた。背景には異世界の光景はまだ映っていないらしく、彼の部屋のものと思われる壁が映っていた。
「ええ、今回ですけれども!異世界に行ってみた!ということで、どうせまた釣りタイトルなんでしょ?と思った方も多いと思います!でも!あ、でも!釣りじゃないんですねえ!」
全部の語尾に“!”がつくような、ハイテンションな語り口調が一々腹立たしい。
また、一言言う度、煽るように画面を近づけてきてうざい。
「一昨日、かな?学校から帰ってきたら、なんか変なものが俺の部屋に浮かんでて。怖かったし、すぐにお母さん呼んだんだけど、お母さんが来た時にはそれが消えてたの!それで、また一人で部屋に来るとそれがあって!その後お父さんにも同じことを言ったんだけど、でもやっぱり僕が一人でいる時しかないみたい!それでね、それでね!試しにそれに触ったら、なんかね、変なところに行ったの!」
本題はまだか。前置きが長いぞ。
視聴者は、そんなことを思ったであろう。
「というわけで!はい!ご覧ください!異世界へと通じるポータルでーーーす!!」
画面の中の少年は、映像をインカメラからメインカメラに切り替えた。するとそこには、一般的男子中学生といったような彼の自室と、異質物が映り込んでいた。
漫画がぎっしり詰まった本棚、整理整頓され収納ボックスに収まったトレーディングカードゲーム、手つかずの参考書が散乱している机上、充電器につながっている携帯ゲーム機。
その中央に、穴のようなものが、ぽっかりと空いていた。
穴の奥では、雲のように黒と青と紫とが入り混じってぐるぐると渦巻いたり、時折小さな雷のようなものを起こしていた。まるでエイペックスレジェンズの、レイスのアルティメットスキルで出せるポータルみたいだ(分かる人には分かる)。
そこにそれがある事には多大な違和感を禁じ得ないが、CGのような、そこにとって付けた感はなかった。画質は均一だし、撮影に不慣れな少年の手振れにもしっかりと追随していた。仮にCGだとしたら、マイケル・ベイ監督作品並みの精度だ。
「それでは今から、この中に突入してみたいと思います!」
少年はインカメに切り替え、ポータルの前に立った。
そして大きく息を吸い、一歩を踏み出した。
びしゅん
と風を切るような音が聞こえて、視界が紫一色になった。
高速でどこかを駆け巡るような背景がしばらく続き、再びびしゅんと音がして、少年はポータルの外に放り出された。
「はい、到着しましたー!」
そこは人気のない袋小路で、黒ずんだレンガ造りの壁に囲まれていた。背後には、先ほど通ってきたポータルが映っていた。
少年が袋小路から出てしばらく歩くと、人々が行き交う大通りに出た。
こちらの世界とは形状が少し異なる馬車、甲冑を全身に纏った騎士、独特の服を身に着けて追いかけっこをする子供たち、明らかな人外。
投稿者の少年は、目新しいものを見つける度にカメラをそちらに向けた。
「うおおおおお!あの人の顔、完全にカメレオンだ!!」
「あの子の来てる服、変なのーーー!」
「あ、この屋台めっちゃ美味しそう!でもこれ、何の肉なんだろ」
少年が大通りをしばらく歩いていると、中央に噴水がある広場が見えてきた。そこは建物が建っていない空間が広がり、視界が開けていたため、サムネイルに映っていた光景が飛び込んできた。
「見てください!めっちゃきれいじゃないですか!!」
少年はインカメで、自分越しに街並みを映した。
「ほら、この町の頂上の方にお城が見えますよ!次の動画ではここを目指しますか!」
カメラに目を向けたまま、少年は指を指した。
「はい、というわけで、今日の動画はここまで!チャンネル登録と高評価の方、お願いします!よければコメントも打ってくれると嬉しいです!それでは!」
最後にピコンと、スマートフォンの録画終了ボタンを押す音がして、その動画は終わった。
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高評価:3 低評価:18
4件のコメント
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山口孝弘
きも
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ないと
撮影技術とCG技術のアンバランスさが凄いなこの子……
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