聖獣と男の子孫
次の日、目をさますと青年は消えていた。
助けたけど、別にここにいろとは言っていない。
まぁ、仕方がない。
と思っていたら、青年は狩りをして来たらしい。
また、服を着て、森にある色々なものを使って道具を作ったらしい。
おれは、別にご飯を食べなくてもいい体にいつの間にか成っていたから、ご飯はいらないのに青年は毎日狩ってきたものを持ってくる。
「いらんよ?」
というのに
「いいえ、命の恩人にこれくらいの事しか思い浮かばないのです。」
と言う青年。
「まぁ、でも、本当に食わんのだ。腐ると臭いし、正直困る。」
と言うと青年は土下座してきた。
「そ、そんな、申し訳ありません。」
そんな青年にちょっとほだされる。
「まぁ、気持ちはありがたい。ほら、己で食えばいい。」
と言って、生肉を青年に渡す。
「いや、私は生肉は。。」
と言うので、生肉を洗い、適度に燻して渡した。
魔法と火魔法、そして土魔法の複合で作った。
食べれはしないが、なんか美味しそうには見えたため、数年前にあみ出した技だ。
青年は面白いぐらいに驚き、感謝して、燻製肉を食べた。
そして、これでもかと言う大声で
「うまい!!!」
と叫び、猛烈な勢いで燻製肉を食べた。
それからしばらくは青年は俺に生肉を燻製肉にしてほしいと強請るようになった。
替わりに、面白い話や歌を聞かせてくれた。
おれは楽しかった。
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数年後、人間の青年にも発情期がきたらしい。
そして、訳がわからんことに俺に求婚してきた。
「結婚してください。
俺のつがいになってください。」
と。
俺は青年に俺の仕組みを教えてやった。
ものすんごく、くやしそうに四つん這いになり、地面をダンダンと叩いている。
そんなに、交配したかったのか?
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しばらくして、青年が女を連れてきた。
死の森の入り口に捨てられていたらしい。
「あなたが寂しくならない様に僕は、あなたに子孫をあげます。」
と少し悲しそうに青年は言った。
「よくわからんが、無理はするなよ?」
と言うと悲しそうな乾いた笑いで笑い、
「僕はいずれ死ぬでしょう。でも、貴方はきっとここから動かないし、一人でいる。」
と青年はいう。
「そういうものだろう?気にする必要は無い。」
と答えると
「何も僕はできないのです。わかっているんです。でも、貴方と一緒に話して居たい。いつまでも、いつまでも。」
と少し赤い顔で言う。
「・・・気持ちは嬉しく思う。好きにすればいい。」
と答えると青年は嬉しそうに笑った。
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何十年かは青年が自ら来て、俺に近況を話す。
彼はいつも楽しそうだ。
それでも年月は彼を老いさせる。
足腰が言うことを聞かなくなってきた彼は、それでも頑張っておれの元に来ようとした。
おれは、そんな彼を苦笑いしながら、迎える。
そして、ある時、彼の孫たちを紹介された。
12人もいた。
そのうちの何人かは奇形だったが、元気に生きていた。
まぁ、同族交配は奇形が生まれやすいから、仕方が無かろう。。
その中から何人かがおれの元に来てまた、彼と同じように日常を話す。
そんな日常を200年程過ごした。
その頃にはおれの元に来る子孫は1人だけになっていた。
訊けば、家族内で色々争い事があるらしい。
「命を大事にしろよ?おれのことは気にするな。」
というと200年後の子孫なのに彼と同じ顔をして、
「本当に優しいですね。でも、ぼくはあなたの話すのが好きなんです。傍に居させてください。」
と言ってくる。
「まぁ、その、なんだ、無理はするな?気持ちは、その、嬉しいから、まぁ、好きにすればいい。」
だが、その数日後から彼はここに来なくなった。
それどころか100年程、ここには誰も来なくなった。