事実の肯定
「遅れてすいません。局長。」
「ばかやろうが!一人で勝手にフラフラするのはあれほど禁止だって言っただろうが!ヒメには自覚すらもてないか?」
「まあ、大久保係長。そのあたりにしていいでしょう。姫崎捜査官。今後は、単独行動は、慎むように。もちろん、プライベートでも。」
「はい。」
局長の目が一瞬光ったように見えたのは勘違いだろうか。
私、疲れてるな。
姫崎は大きく瞬きをした。
「それで、今回君を読んだのはこの前提出されたレポートに大変興味をわかせる内容があったからなのだが。大久保係長。少しはすしてもらえないかね?」
「は、はぁ…。」
大久保は、一礼するとゆっくりと出口へ向かった。
局長は、改めて姫崎は見た。
白髪を伸ばしているから女性だとわかるものの男性と言われても違和感のないほど中性的な顔立ちをしている。
「この前のレポートにASURAへのアクセス権が紛失している…そして、紛失したアクセス権には個別の認識コードがあり、そのログを追えば場所が特定できるはずだ。それなのに、なぜ上層部は追わないのか…と書いたね?」
「正確には、ログを追えば犯人の居場所を特定できるのではないかと思ったので我々にその調査権限をいただけないか?と言ったまでです。」
「言葉など、どうでもいい。問題は、アクセス権紛失をなぜ書いたか、だ。」
「なぜ…といいますと?」
姫崎が首を傾げると、局長は大きくため息をついた。
そのまま沈黙が流れる。
「このレポートは国家公安委員長まで届けられる。そこにASURAシステムの存在を肯定するような内容が書かれていれば、混乱をきたすとは思わなかったのかね?」
「しかし!」
「しかしはいらない。私が聞いているのは、yesかnoの話だ。」
「…っ!もしかしたら混乱をきたすのではと思いました。」
「なるほど。素直に自分の非を認める、実にいい心がけだ。では、以後気をつけたまえ。」
「はい」
姫崎は一礼すると部屋を出ようとした。
「姫崎捜査官。言動にも気をつけたまえ。」
局長の最後の言葉は一瞬にして姫崎を怖がらせるには十分な力を持っていた。




