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可能性の目次

コポコポと液体の音がする。

コーヒーの香りが漂ってきた。

「それで?俺になんのようだ?」

真っ白な壁や家具の部屋の住人には似合わぬ不精ヒゲを蓄えヨレヨレの白衣を着た精神科医斎田は訪ねてきた。

姫崎の前にカップを置くと迎のソファにドカっと腰掛けた。

「先生は、姿無き殺人犯を信じますか?」

「さしづめ、透明人間ってところか?」

「そのように考えてもらって構いません。」

「そうだなぁ…。」

斎田は天井を見上げると動きを止めた。

姫崎は、コーヒーを冷ますと一口のんだ。

高い豆を使っているのか、芳醇の香りとともに濃厚でほろ苦い味が口いっぱいに広がった。

「つまり、ASURAに認識されないってことだな。」

「ありえないことではあるのですが、実際に起きているので…。」

「今の御時世、ASURAに認識されない方法を探す方が大変だろ。出生届けを出していない赤子ですら勝手に戸籍管理という名目で認識するんだからな。」

「先生……あまり…。」

「気にするな。危険性は十分自覚しているさ。」

斎田がコーヒーを飲んだ。

少し水が多いな…斎田はつぶやくとそっとカップをガラス張りのテーブルにおいた。

鳩時計の針の音が異様に大きく聞こえてきた。

「一つだけ可能性として考えられるこがある。」

「それは…どのような?」

「そんな人間いないってことだ。」

「…。それはなんの解決に…」

「まあ、いいから。聞けって。」

斎田が、メガネの位置を戻って。

姫崎も深く座りなおすと改めて斎田を見た。

「さっきもいったが、ASURAは自動的に国民を管理、監視している。故に、ASURAが認識しない国民は皆無と言っても過言ではない。だが、もし透明人間の正体が人ではなく、アンドロイドだったら…?独立したAIをもち独自の考えをもつ人のような機械……。」

「なるほど…。そもそも人ではないと…。」

「もちろん、これは可能性の話だ。まだある。では、機械ではなく血を通わせ温かみのある人だった場合。これは、答えは一つしかない。」

「その答えは…?教えてください。」

「そいつは、一人ではない。例えるなら、サイボーグ。といっても、機械ではない。つもり、一つの体に別の人間が混じっているということ…。腕だけは別人、足だけは別人のように…。」

「…!なるほど…。そうするとASURは認識できませんね…個人しか管理できないシステムの落とし穴…。」

「だが、そんな奴がいれば間違えなく話題になっている。それに、カメラに映らないくらいでそこまで飛躍した考えをしていいのかすら疑問だ。」

「いえ、そのような可能性は考えつきもしませんで…」

RRR…。突然姫崎の携帯がなり始めた。

姫崎はすまなそうな顔をして頭をさげると、どうぞと斎田はいった。

「姫崎、どこにいる。」

安藤の声が聞こえてきた。どうやら何が起こった訳ではなさそうだ。

「斎田クリニックです…」

「ばっきゃろー!局長が呼んでるぞ!早く来い!」

突然大久保が叫ぶと電話は切れた。

斎田まで聞こえたらしく声をあげて笑っていた。

姫崎は、苦笑いをするとクリニックを後にした。

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