第21話 スカートの中って真っ暗だよ
どうしてこうなった。
クラスメイトがいるのに、なんで俺は小野寺さんのそこを触っているのだろう。
「も、もうやめようよ……小野寺さん」
「琥珀、だよ♡」
「……琥珀……さすがに見られたらまずいよ」
「これなら、どうかな♡」
何があった?
いや、分かっている。
小野寺さんは俺の頭をスカートの中に押し込んだのだ。
視界が一瞬で暗くなった。
布越しの光だけが、ぼんやりと揺れている。
近い。
近すぎる。
呼吸のたびに、やわらかい布がわずかに触れてきて、頭の中が一気に真っ白になった。
「ちょ、ちょっと……!?」
「しーっ♡」
上から落ちてくる声は、いつもよりずっと近くて。
耳元で囁かれているみたいだった。
「ほら、これなら誰にも見えないでしょ?♡」
「そ、そういう問題じゃ――」
言い返そうとした瞬間、言葉が止まる。
周りのざわめきが、やけに遠くに感じた。
ここだけ、切り離されたみたいに現実感が薄れていく。
「綾人くん、ちゃんと静かにしてね♡」
くすっと、小さく笑う気配。
その一言で、余計に意識してしまう。
こんな状況で、平常心でいられるわけがない。
心臓の音がうるさい。
絶対に、外まで聞こえてるんじゃないかって思うくらい。
「ねぇ……♡」
少しだけ、小野寺さんの声のトーンが変わった。
さっきまでの軽さとは違う、どこか俺を試すような響き。
「逃げないよね?♡」
「……っ」
答えられない。
でも、逃げられないのは事実だった。
物理的にも、状況的にも。
そして何より――
自分の意思が、もう完全に追いついていなかった。
だから俺は、ただその場で息を止めることしかできなかった。
しかし、それだけでは小野寺さんは俺を許さない。
「綾人くん……舐めて♡」
『………………っ!?』
生存本能がやけにうるさい。
でも、ここで小野寺さんに逆らうわけにはいかない。
俺は小さく舌を出して、指で触れていた場所を舐める。
舌を伸ばした、その瞬間――
びくり、と。
はっきりとした反応が、すぐに返ってきた。
「んっ……♡」
押し殺したような声。
でも、それが逆に耳に残る。
やばい。
ほんとにやばい。
もう、どこまでが現実で、どこからが違うのか分からなくなっていた。
ただ――
触れている場所と、
そこから伝わってくる感触と、
小野寺さんの反応だけが、やけに鮮明だった。
「ふふっ……♡」
上から落ちてくる笑い声。
小野寺さんは完全に今の状況を楽しんでる。
「ちゃんとできてるよ、綾人くん♡」
その一言で、背筋がぞくりと震えた。
褒められているはずなのに、逃げ場がない。
むしろ、もっと深く引き込まれていくような気がした。
周りの声はもうほとんど聞こえない。
ここだけが、閉じた空間みたいだった。
「ねぇ……もっと、できるよね?♡」
また俺を試すような声。
でも、もう拒否する理由なんて、どこにもなかった。
俺の憧れているハイレグのラインと鼠径部の間の部分。
そこを指だけでなく、舌で感じている。
そう思うと全身の血が滾るような感覚に包まれた。
やばい、このままだとほんとに止まれない。
頭の中では「やめろ」って声がずっと鳴ってるのに、体がまったく言うことを聞かない。
さっきまで冗談みたいに思ってたのに、もう完全にそういう空気じゃなくなってる。
「……っ」
どうしよう。
ほんとにどうしよう。
ここでやめないとまずいって分かってるのに、小野寺さんの声が頭に残って離れない。
「ねぇ、綾人くん♡」
まただ。
さっきより少しだけ低い声。
遊んでるだけじゃない、みたいな。
「すごくきもちいいよぉ♡」
「……っ」
それ、今言うなよ。
余計おかしくなるだろう。
こっちはもう限界なのに。
でも、小野寺さんはそんなのお構いなしで、
「じゃあ、ご褒美あげよっか♡」
「ご、ご褒美って……」
なんだそれ。
いや、聞くのも怖いんだけど。
でも聞かないわけにもいかないし。
「いいよ、もう出てきて♡」
「え……?」
一瞬、意味が分からなかった。
出てきて?
どこから?
いや、考えるまでもない。
今いる場所からに決まってる。
「ほら♡」
くい、と軽く引かれる。
そのまま、ゆっくりと視界が明るくなった。
教室の光が一気に戻ってきて、現実に引き戻される。
「っ……!」
反射的に周りを見る。
誰もこっちを見てない。
……よかった。
いや、ほんとによかった。
心臓止まるかと思った。
「どう?♡」
目の前には、いつも通りの顔をした小野寺さん。
でも、さっきまでのことが嘘みたいに感じるくらい、普通に笑ってる。
「……どうって……」
こっちは全然普通じゃないんだけど。
頭も体もぐちゃぐちゃで、まともに言葉出てこないし。
「ちゃんと練習になったでしょ?♡」
「どこがだよ……」
思わずツッコんでしまった。
でも、小野寺さんはくすくす笑うだけで、
「綾人くん、顔まだ赤いよ♡」
「うるさい……」
絶対分かってて言ってる。
ほんとにタチが悪い。
でも――
さっきの感覚が、まだ指と舌に残ってる。
頭のどこかが熱くて、変に意識してしまう。
「ふふっ♡」
そんな俺を見て、小野寺さんは満足そうに笑った。
そして、
「じゃあ次は、ちゃんと接客の練習しよっか♡」
なんて、何事もなかったみたいに言ってくる。
「……もう十分だろう」
「だーめ♡」
即答だった。
しかも、さっきよりちょっとだけ楽しそうな声で。
その時、俺はようやく気づいた。
これは、終わりではない。
むしろ――
まだ始まったばかりなんだって。
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