360【ムカゴゴハン】
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2話連続投稿します(1話目)
まずは、お米を見せてもらった。うん、精米されている。少しクリーム色をしているが、米糠の部分だろう。
「この器に一杯で、ひとり分。一合と言います」
「同じ器は、ありますか?」
彼女は、快く出してくれた。
台に置き、魔導飲用水ポットから水を注ぐ。ギリギリいっぱいに。
アイテムボックスから器を出して、水を入れた器から、その器に注ぎ入れる。水面のところに鉛筆で印を付ける。
器の水を飲み干し、借りた器をクリアして、返す。
「あとで、同じ量の入る器を作ります」
その言葉で、彼女が納得。
そこからの工程は、やって見せるので、その都度、注意してもらうことに。
米を研ぐ。
水を入れ、水を吸わせる。
「慣れているのですねぇ」
「ニホン国でも同じですから。ところで、どうして、ここにアズマノ国の方々が?」
「簡単に言うと、難民として連れてこられたのよ」
「難民、ですか?」
「ええ。当時、戦争があってね。自分たちの国を追い出されて、流れ流れて、ここにたどり着いたの。あちこち行ったのだけど、土がダメだったり、水場が近くになかったりして、なかなかいい土地がなくて。ようやく実り豊かな土地を見つけた。それがここなのです」
「なるほど。そういうことだったのですね。では、作物の多くも、あちらからお持ちになったものですか?」
「はい」
「確認したいのですが、調味料は塩のほかには?」
「味噌、醤油、蜂蜜、砂糖、米酢、味醂、お酒もあるわね」
う、うおおお、気持ちが逸る! 落ち着け、オレ!
「それは、購入できますか?」
「蜂蜜と砂糖はちと無理だね。みんなの楽しみだから。ほかなら量は無理だけど、多少は」
「構いません。甘味は別のものを使えばいいだけです。それからできれば、定期的に購入したいのですが。年に一度とか」
「定期的に」
そこで彼女は考え込む。
「難しいですか?」
「いや。現金収入は欲しいんだ。それが毎年となれば、もう商売だ」
「はい」
「しかも、味噌と醤油は売れたことがないから、自家消費分しかない。毎年売れるんなら、その分を作れる」
「売れたことがない?」
「ああ。塩と違って、保存が利かないからねぇ。それに見た目が悪い、って言われてねぇ」
「なるほどね。まぁ、確かに見た目はなぁ」
「ニホン国にもあるんだね、味噌と醤油」
「ええ。自分たちでも作っています。ただし、流通させるには、量がありません」
「今、あるかい?」
ふたつを出す。もう少ししかない。
スプーンを出して、味見してもらう。
「うん、悪くないね。少し味が違う気もするけど」
「材料が違うんですよ」
ムカゴの瓶を出す。
「ムカゴかい?」
「ええ」
「よくこれを味噌にしようとしたねぇ。ゴハンに入れたりすることはあるけど、量は採れないものだからねぇ」
「うぅ、ムカゴゴハン食べたい。食べたこと、ないけど」
たぶん、グリーンピースゴハンな感じだと思う。
「作ればいいじゃないか。ムカゴもゴハンもあるんだからさ」
「作り方は?」
「あぁ、知らないんだね。教えるよ」と笑む彼女。
彼女が用意したのは、ラーメン丼ぶりのような器。内側に満遍なく、筋が彫られている。
「すり鉢。“自然薯”、食べたい」
「なんだい? ジネンジョ?」
簡単に説明する。
ついでに、索敵さんにお願いした。
あるじゃん!
もちろん、類似品だけど、鑑定したら本物と遜色ない。
「あとで収穫してみます。近くにあるので」
「わかったよ。私も食べてみたいね」
「すり鉢やすり棒も売ってます?」
「心配しなさんな。ほら、作るよ」
すり鉢の中に、さっと洗ったムカゴを入れて、手のひらでゴロゴロ転がすと、皮が剥けてくる。それを洗い流して、下拵えが終わる。これをやらないと、ドロ臭くなるとか。
研いだお米を借りた土鍋に移し、そこに塩を入れて、ムカゴを広げて、炊く。
今回は、というか、当然、魔導コンロを使います。
「なんだい、これ?」
うん、説明します。
小さな炎が、円形に点くと、それに驚く女性。さらに火を調整してみせると、顔を近付ける。そして、自分で操作してみる。
それからオレを見た。
「あんた、魔法使いかい?」
「今、触ったように、誰でも使える道具ですよ。魔力を導いて使う道具なので、魔導具と呼ばれています」
「魔導具。へぇ」
「冒険者ギルドや商業ギルドは、近くにないんですか? そちらで売っているはずですけど」
「売ってるのかい!?」
「作れる人がいれば」
彼女がうなだれる。
「あぁ、そりゃ、無理かもねぇ」
「なんでです?」
「ここらで作れる人と言えば、木工や焼き物だよ。さすがにこれは、ねぇ」
「なるほど。じゃぁ、魔石もない感じですか?」
「魔石かい? あるよ。狩人が魔獣を狩ってくるし、冒険者もいるし」
「ふむ。ということは、こうした魔導具はないけど、あれば使いたい、と」
「だね」
こりゃ、販路拡大の機会か?
そこで、炊いているあいだに、魔導具を見せてみた。
※ムカゴゴハン
『白ごはん.com
むかごご飯(炊き込みご飯)の
レシピ/作り方』参照。
※自然薯
ヤマノイモ ウィキペディア参照。
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