243【オレたちを知ってる冒険者たち】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
少し長いため、2話連続投稿します(2話目)
翌日。
冒険者ギルドに。ウーちゃんとラーナには留守番をお願いして。ラキエルも。
ギルドに入ると、一斉に目を向けられた。まぁ、七人のパーティーは、珍しいからな。ゾロゾロと入ってくれば、何事だと思うのも当然だ。
ランドルフが受け付けに行き、若者四人が買い取りカウンターへ。オレとダルトンは、食事処のカウンターに。
「エール!」とダルトンが銅貨をパシッと置く。
「オレもエールを」と同じように、銅貨を置く。
カウンターの中には、年寄りっぽいが背筋のまっすぐな男性がいた。
彼が何も言わずに、エールの入ったジョッキをドンッドンッと、ふたりの前に置く。
と同時に、素早く銅貨を隠す。まるで手品のように。手をスライドさせただけなのに、銅貨は消えていた。
ダルトンが最初のひと口をノドに流し込む。ゴクッゴクッ。プハーッ。あれ、ふた口だった。で、ジョッキをドンッとカウンターに降ろす。
冒険者たちは、三つのパーティーらしい。人種はさまざまだ。装備から、中堅どころと思われる。《龍蛇の咆哮》の姿はない。
そんな中のひとりが仲間の肩を叩いている。視線の先は、買い取りカウンター。そこにいるのは、若者四人。
「なんだよ」と肩を叩かれていた男が、そいつに向く。
「あ、あれ」と叩いていた男が、震えるように腕を伸ばし、指差した。
「ん? なんだ、若いの、四人じゃねえか。新人か? いや、装備からすると、それなりのランクか。あれがどうした?」
「ギ、ギルマス落とし、だ」
「はぁ?」外していた視線を四人に戻す。「こんな端っこに、いるわけ――ホ、ホントだ。アイツらだ。あの四人だ。そういえば、ヤツラの先頭にデカいのがいたよな。あれって、S級のランドルフじゃねぇか」
「えっ? あっ、本当だ。あれ? でも依頼失敗で奴隷になったんじゃ?」
どうやら王都冒険者ギルドでの四人の試験を見ていた人間らしい。
「いや、試合のあとに王都冒険者ギルドに姿を出したらしい。商人に買い取られたんだと」
「そうなのか。今はあの四人とパーティーを組んでいるのか。あとのふたりは」とこちらを見るふたり。
「あ、アイツ、王都冒険者ギルドにいた。あの四人を護衛に雇った商人だ。そうだそうだ」
「となりのヤツも王都冒険者ギルドにいたな。あの商人と並んで、エールを飲んでた。今と同じように」
いやぁ、なかなかの記憶力ですねぇ。
「おい」と彼らのとなりのテーブルから、竜人族が声をかけた。「命が惜しければ、口をつぐめ」
「なんだと!」
「あの商人もギルマス落としだ」
「なっ」驚きで言葉が続かない。
「経緯は知らねぇが、握手したときに雷魔法をお見舞いされたらしい。ギルマスは死んじゃあいねぇが、失神したそうだ。ところが、あの商人は、なんともなかったそうだ」
「な、なんか、見てきたみてぇだな」
「見てたんだよ、オレの彼女がな。彼女、ギルドスタッフで、そのときにギルマス執務室にいたんだ。だから、ウソなんかじゃねぇ」
あのときにいた女性スタッフか。なるほど。
「なんだよ、それ。ってことは」言葉に詰まる彼。
オレがジョッキを上げてみせると、彼は視線を外した。
ほかの連中も、オレと目を合わせなくなった。
「有名人は辛いねぇ」とダルトン。
「今さらでしょう」
「おっ、肝が据わりましたか」
「気にしても意味ないだろ」
「確かに。おいちゃん、もう一杯!」銅貨を置くダルトン。
それに応えて、ジョッキが置かれ、カラのジョッキが回収されたと思ったら、もう銅貨はなくなっていた。すげぇ。
若者四人がこっちに来た。
「どうだった?」
「まぁまぁです」とエイジ。「薬草が少し高めに売れました」
「よかった」
「サブさん」とハルキ。「向こうに魔導具が売ってますよ。サブさんの三種の神器は、売れ切れてました」
「本当!? うれしい!」
魔導具売り場というか、コーナーに突撃する。確かに、値札はあるが、ものはない。ほかを見ると、魔導ランタンとかマジックバッグとかがある。ううむ、高い。それなのにハルキが言ったとおり、三種の神器は売れていた。予約まで付いていた。ありがたい。
「ふおう、要望書が欲しい」
「難しいですね」と横から。服装から性別を判別できない。
「あっ」と彼。「鑑定はムダです。今まで看破されたことがありませんから」
「アゼルバイジャン?」彼がビクッとする。「あぁ、ごめん。アゼル・バスカロビッチだね。知っている単語が出ちゃった」ごめん、と謝る。
彼がよろめく。
「な、なぜ?」
「もともとどういう人かは、聞かない言わない。魔導具好きなんでしょ。それでいいでしょう? オレは、サブ。この三つを登録した男だよ。よろしくね」と手を伸ばす。
「ど、どうして、そんな、軽く?」
「新しい意見は、大切だ。使いにくい部分や別のアイディアを教えてもらえるのは、とてもうれしい。この」と値札を指差す。「魔導コンロには、新しいタイプがある。でも火が見えないから使いづらい。消費魔力は少ないのにさ」
すると、彼が身を乗り出した。
「お、教えてくれ!」
おっと、少し引いてしまう。
彼をカウンターへと誘う。
「おい、学者先生が絡んでるぞ?」と誰か。
その声に、クスクス笑いながら、マナミが言う。
「おそらく、同好の士に出会っただけだと思いますよ」
「サブさんは」とキヨミ。「便利な魔導具を登録していますけども、私たち以外、わかる人がいないんです。その私たちでさえ、理想図はわかっても、そこまでの道がわからないんです」
みんなが温かい目で見てくれているのは、知っていたが、同志は離さないよ。
「三つとも冒険者用ですが、なぜなのですか?」とアゼル。
「魔導具は、生活に根差してこそ、役立ちます。本当は、一般の人にこそ、使って欲しい。でも高いし、消耗品を購入する必要がある。さすがに一般人には手が出ない。でも冒険者ならば、購入できる。消耗品を手にすることもできる。だから、冒険者向けに商品を作っています。便利になれば、お金がまわる。まわりまわって、自分に帰ってくる。どうです?」
「た、確かに」
あれ! 突然、寒気が。
「マナミ」声が震える。なんだ?
念のために、鑑定する。自分に対して、えっと?
床にひざまずく。だが、視界が揺れる。
マナミ! 声が出ない。
オレを抱きかかえてくれるマナミ。
オレは力が出ない。
マナミが、ポーションを飲ませてくれる。解毒ポーションだ。
「ど、毒じゃない?」
解毒ポーションは、一向に効き目を現さない。
なんとか自分を鑑定する。クソッ!
「マヤク、チュー、ドク」とマナミに伝える。
「いったいいつ!? それはあと。クリア。癒やせ」
治癒魔法の短縮詠唱の言葉とともに、光が右手に集まり、それからオレの身体全体に広がる。
気分がよくなってきた。
そのとき、オレのようすを伺っていたダルトンがドサッと倒れた。
どうやら彼も麻薬中毒になったらしい。
オレは、マナミに笑顔を向け、指で“オレ、大丈夫。ダルトンを頼む”と指示する。
それにうなずくマナミ。すぐにダルトンを診る。
オレは、収集能力で、体内の麻薬成分を集め、まわりをコーティングした。二日酔いの気分が少しは良くなった。ひと息つく。
心配そうな顔をして見ていたキヨミを手で、おいでおいで、と呼ぶ。
また、誰かが倒れた。ランドルフだ。
キヨミに指で指示する。一瞬、彼女はえっ?という顔をする。だが、うなずいた。それからおもむろに立ち上がり、アイテムボックスから長い杖を出して、構えた。
「拘束!」と短縮詠唱する。それから杖をあちこちに向けた。向けられた人々が硬直していく。
キヨミにサムズアップして、笑顔を向けた。
それから、ダルトンとランドルフから、麻薬成分を回収した。
「麻薬成分、回収した。どうだ?」なんとか声が出た。
「二日酔いの気分」とダルトンの弱々しい声。
ランドルフは、頭を抱え、なんとか四つん這いに。
「キヨミ、ハルキとともに各部屋をまわって、拘束してくれ。ギルマスも含めて」
「はい。行きましょう、ハルキ」
「おう」
ふたりを見送ると、索敵さんを使って、全員の麻薬成分を確認する。
おいおい、スタッフさんも冒険者たちも多少の差はあれど、麻薬成分が入っているぞ。
「エイジ」
「はい」
「ドアのところに立って、誰も入れるな。現場保全のためだ。理由は、そうだな、感染症が疑われるための隔離処置です、ってことで」
「はい」
「待った。どこかに触ったら、必ずクリアするように」
「わかりました」
彼がドアへと走る。
「マナミ、ありがとう、助かった」
首を振るマナミ。
「どうやら、この町自体が麻薬拡散の場らしい。それをオレたちに知られる前に、高純度の麻薬で殺そうと考えたんだろう」
「拘束したのは?」
「犯人を逃さないため。カウンターの男は、そのひとり。ランドルフに対応したスタッフもだな」
サブさん!とエイジの声。そちらを見る。
「《龍蛇の咆哮》のみなさんです」
「手伝ってもらうか。マナミ、肩を貸してくれる?」
マナミとともにドアへと行く。
ドア外に《龍蛇の咆哮》のみなさんがいた。
「やぁ」
「大丈夫か?」
「処置は済ませた。二日酔い状態だよ。できれば、手伝ってもらいたいんだが」
「いいぞ。それで?」
入り口と裏を封鎖してもらう。
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