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能力確認、俺の加護は・・・

 ――ここは?


 浮遊感がなくなると俺は大聖堂のような広い空間の中央に立っていた。

 俺だけじゃない、C組のみんなもいる。


 ――あれ?


 みんなから騒いでいる様子みられず、いつもの仲良しグループで固まって、ワイワイ楽しそうに話に花を咲かせている。


 ――みんな修学旅行気分だな……


 どうも俺だけ没地神のせいで遅れて転移してきたみたいだが、幸い俺のことに気づく者はいない……はず。


 俺はゆっくりと壁際に移動した。


 ――さてと……今はどうなってるんだ? 


 状況を理解したくて周りを見渡していると――


「……と言うようなことがありました」


 どこからか、先生の話し声が聞こえた。


 ――……どこ? ……前から? あっ、いたっ! 何の話をしているんだ?


 先生は大聖堂の前の方で白髪頭の司祭さん? らしい人と両隣を品のある騎士みたいな人に守られている、身分の高そうなおっさん。王様か? と話をしていた。


 よく見れば俺のいる反対の壁際には騎士の格好をした人たちが綺麗に並んでいる。


 ――ひぇぇ。すごい威圧感だ。


 俺は壁を背に少し先生たちに近付いてみた。


 ――ここならよく聞こえる。


「なんと、そうでしたか……創造神様がこの世界の危機に……勇者様を……」


「いえ、ですから……別に私たちは望んで来たわけではなくてですね……「ああぁ奇跡じゃ!! 奇跡が起こったのじゃ!!」


 司祭みたいなじいさんは感極まったのか、ふるふる震えながら両手を天に掲げ、祈りを捧げだした。


 先生が唖然としている。どうやら先生の話は体良くよく遮られたように感じられる。


 ――あれ、絶対わざとだろ……


 先生が諦めたように大きく息を吐いている。


 ――あっ。


 先生のキレイな顔に疲れの色が見える。

 これは、俺が転移してくる前から同じようなやり取りが繰り返されているのかもしれない。


 ――だから、みんな先生たちの話を聞いてないのか?

 何だかんだで、先生は姉御肌で責任感が強いからな……


「司祭様。司祭様は奇跡と言いましたが、勇者召喚は普通にされてますよね?

 現に我が校はここ数ヵ月で二度も、異世界に呼ばれてましたよ?」


「コウサカ様、それはどういう事でしょう?

 たしかに、百年に一度、平和記念の開催国が勇者召喚をし、勇者様を称える式典を開いていたその記録が残っておりますが、それは四百年前までの話ですじゃよ」


「え? 四百年前……」


「はい。それに今やこの世界は大規模な勇者召喚術に耐えれるほどのマナは存在しません」


「それはどういう意味ですか?」


「まあまあコウサカ殿、細かいことはよいではないか。我々は神託を受けてここにおる。

『世界の危機、異世界の勇者を送る。助力せよ』だったかのう……」


 身分の高そうなおっさんが話に割り込み、勝手に納得すると頷いた。


「……して、コウサカ殿、こちらにいる異世界の勇者殿はみな、創造神様の加護をその身に宿しているといったが、それは本当かね?」


「……はい。確かに創造神様はそうおっしゃいました。ですが、それを私たちがどう確認し証明したらよいのか、分からないのです」


 ――先生……創造神様の加護……俺ないんです……


「……それに、先程から何度も申し上げます通り、私たちに期待されても困ります。

 私たちの育った国では、そういった争いとは無縁の中で生活しているのです。

 私たちのような素人が……とてもお役に立てるわけありません」


 ――そうだ。


 俺は先生の言葉を聞き、壁際で一人頷いた。


「それは、大丈夫ですじゃぞ。コウサカ殿ちょっと失礼しますじゃ、よいっと、ほれこの通り……」


 司祭のじいさんがいきなり先生に向かっては水晶のようなものを掲げた。


 するとパンッ! と大きな音が鳴り響き、騒いでいたみんなも何事かと驚き先生たちの方に視線を向けた。


「し、司祭様。いったい何……を……」


 いつもはキリッとした表情の先生も、さすがにこれには驚き一歩後ずさりした。


 ――あのじじぃ……


 先生はスタイルの良い美人さんだ。生徒からは慕われている。

 密かに狙ってる男子生徒は多いはずだと俺は勝手に思っている。

 俺? 俺は見てるだけでいいんだ。


「ほほう。やはり……」


「……」


 先生が目を細めて司祭のじいさんをジーッと訝しげに睨みをきかせた。


 先生を心配した男子生徒たちが先生の近くまで集まり、司祭に睨みを利かせ始めた。


「すまぬ。勇者様、そう睨まんでおくれ……ワシは今、この水晶を使ってコウサカ殿を鑑定しようとしたのじゃ」


 その言葉を聞き数人の男子生徒が司祭に掴みかかろうとしたが、それを周りが必死に抑えている。


「す、すまなんだ。け、結果は、この通り……弾かれました。これは神のご加護がある証拠ですじゃ。

 神のご加護を受けし者には鑑定などできませぬ」


「……」


「ですが、自身で確認することはできるはずですじゃ。

 それにじゃ、自身の能力は認識さえすれば、勝手に神の加護がスキルや、魔法、についての知識を教えてくれよう」


 ――俺も一応没地神の加護がある。これも神様の加護だよね? 大丈夫だよね?


 黙って司祭じいさんの話を聞いていた、先生は深呼吸をして息を整えると、再び司祭のじいさんに顔を向けた。


「私に神の加護があることは分かりました。では私たちは、いかにして、その確認するのですか……?」


「なあに簡単なことじゃ。『能力が見たい』と口にするだけじゃ」


 ――能力が見たい……ですか。なんか思ってたのと違う……


「『能力が見たい』ですね? ……っこれは……!?」


「ほう、この顔ですと、無事、確認できたようですな」


 話を聞いて生徒たちの方からも『能力が見たい』と言う声がちらほら聞こえた。


「「「おお!!!!」」」


 すると、その数人の生徒からも驚きと共に歓喜の声が上がった。


「なんだ、なんだ!!」


 こうなってくると後は早い。一人、また一人と驚きと共に歓喜の声が上がり、気づけばクラスみんなから上がっていた。


 ――俺も……「能力が見たい」


 俺もぼそりとそう呟いた。


 ――うぉぉ、恥ずかしいぃぃ……



 ――――能力――――

【名前】山野木 太郎(ヤマノコ タロウ)

【性別】男

【年齢】17歳

【状態】健康

【恩恵】

 ☆没地神の加護

 ――適性スキル――

 〈軟化制限解除〉

 ――適性魔法――

 〈神紋魔法〉

 ――アビリティ――

 〈体術D〉

 〈聞き耳C〉

 〈空気A〉


 ――……あっ、出たよ。俺にも出ましたよ。よかった……やっぱり加護は没地神なのね。

 適性スキルは軟化……うん、聞いてたからな。

 うああ……なんか、スキルの知識が流れてきた。


 なになに……制限無しで何でも軟らかく出来る……か。うん、聞いたから知ってる。

 これでパンを軟らかくするんだったよな……はいはい。で、ふーん。これ敵にも使えるのか。


 はい。次っと、適性魔法は神紋魔法ね。うおわわわ……これもまた知識が流れてきた。


 (神紋)を魔力を込めて描かく……なになに描きさえすれば別に地面じゃなく壁でもいいの? ふーん。えっと……どんなに強力な神紋を描いても消費魔力は描く時に消費する魔力だけ……何となく凄いかもって分かってきたけど……これって廃れたの陣魔法なんでしょ? どうやって覚えるのさ? ねぇ? ……本? 真似て? ってなんだよ……くっ、その知識は流れてこないぞ。


 まあいい。


 後はアビリティってのもある。これは体術……何でだ? 授業で柔道を少し習っただけだよ? おおっ、これにも親切機能が……

 このアビリティ、素手や、短い武器を持ってする攻撃・防御が上手くなる術らしいぞ。いやぁ、助かる。


 ランクはS、A、B、C、Dの5段階の最低ランクだけど、あるだけましだな。


 次に、聞き耳……これは……そうだよね。単純に耳に意識を向けると、より小さな音や声が聞こえるようだ。

 やっぱり、このアビリティがあるのって、机に突っ伏して、聞き耳を立ててたからだろうな……うーん。なんか嫌だなぁ……


 そして最後が、空気? 空気って何だよ。

 いるのかいないのか分からないってことか。あれれ、これだけちゃんとした知識が流れてこない。何でだよ? ……まあ、要は存在感がないってことだろ。


 ――ふぅ。


 ようやく一通り目を通してみたが、創造神の加護の内容の一部を聞いてる俺としては非常に不安である。


 ――さて、みんなは……あれ? みんなは?


「おお~い。君」


 ――ん?


 俺は声の方を振り向いた。すると一人の全身甲冑の騎士が入口の方からこちらに向けて、片手を振っている。

 俺は左右に誰もいなことを確認し、人指し指を自分に向けてみた。


「そうだ。君だ。こっちに来なさい」


「は、はあ」


 俺はわけも分からず騎士の側まで歩いた。身長は俺と同じくらいだが、本物の全身騎士鎧に身を包んだ人というのは漂う雰囲気が違う。


「君の気配はこの部屋に交じって感じ取りにくいな。

 アビリティーか? 他の勇者殿はすでに王の間に向かったぞ」


「えっ?」


 騎士の声はくぐもっているが、案外優しいものだった。

 俺は結構な時間を一人で能力確認していたようだ。


「ほら、私が案内してやるからついて来なさい」


「あっ、はい。すみません。ありがとうございます」


 俺は騎士に向かって頭を下げた。


「ふっ、気にするな」


 俺は騎士に案内され王の間に向かった。

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