みんなの実力
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「ここだ」
騎士に案内されたのは重厚な感じのする立派な扉の前、ここが王の間らしい。
「安心しろ、君が置いて行かれてそんなに時間は経ってない。気にせず入ればいい」
「は、はあ」
――いや……ねぇ。俺は遅れて部屋に入ることで、みんなから注目を浴びることが嫌なだけなんだよ。
騎士が扉に手を掛けゆっくりと開けると、俺はそろりと音を立てないように王の間に忍入る。
――ん? ……誰も居ない?
俺が驚き戸惑っていると――
「どうした。早く……!?」
俺を案内した騎士も後から入ってきて状況を理解したのか、その言葉を詰まらせた。
「ど、どういうことだ。私は確かに王の間だと……伝えられた」
騎士は急に俺の方に向き直ると「すまない」と頭を下げた。
フルプレートのため、表情は見えないが、必死さは伝わってきので、わざとじゃないらしい。
――嫌がらせかと一瞬だけ、思ったじゃないか。よかった。
俺は逆に申し訳ない気持ちになった。
「あ〜、気にしないでください。元々ぼーっとしていた自分が悪いんですから」
それから騎士と一緒にそれらしい部屋へを見て回り、辿り着いたのは初めの聖堂院から城へ続く渡り廊下から見える中庭の奥。
そこからバンバンなんらかの音がする。
「む、もしや……」
騎士さんが音のする方にズカズカ早足で歩いていく、俺も必死にそれに続く。
――は、速ぇ。この人……フルプレートなのに何て速度で歩くんだ……
早足の騎士が中庭の奥がよく見える位置、その角まで行くとピタッと歩みを止めた。
「騎士さん、何かありました……かぁ!?」
――いた、みんながいました。
そこで、俺が目の当たりにしたのは、ヒャッハーッ! と魔法をバンバン放ったり、うおー! とか、俺凄え! とか、ワーワー!! 盛り上がりアクロバティックな動きを見せるクラスのみんなだった。
――ま、マジですか……
運動の苦手な、小太り小西さんでさえ、とんでもない動きを見せている。
――うそだろ……あっ、パンツ見えた……って、そうじゃない。俺できねぇよ。創造神の加護、反則だろ……
王様らしい、あのおっさんはウホホッ、ウホホッと、何やら興奮し、嬉しそうにバンバン両手を叩いている。
周りの騎士たちも魔法を放つ度に歓声を上げているし、司祭様は涙と鼻水が垂れ流しになっている。
「こ、これほどなのですか……」
隣の騎士ですら感極まっているのか、ふるふる震えながらも、つぶやき声が聞こえる。
これは後で分かった事だが、この世界の人々が使う魔法はマナ魔法。
加護のあるものだけが使える適性魔法よりその威力や質はかなり落ちるそうだ。
ただ、今の俺は……穏やかじゃない。
みんなの実力と俺の実力、その差があまりにも開き過ぎていることを肌で感じてしまった。
俺に身体的補正はないのだ。
――この状況はかなりマズイぞ。おい、没地神どうしてくれんだよ。俺みんなについていったらすぐに死ぬぞ。いや、違うな。ついて行くことすらできないんじゃないか?
くそぉ〜どうする、どうするよ俺……ん? ……今……何か……見えなかったか?
俺は何か見えたように感じた火の玉を飛ばしているクラスメイトを注視した。
いや、正確には飛ばした火の玉ではない。
そのクラスメイトが火の玉を飛ばす時、突き出した右手と火の玉の間に一瞬だけ、魔法陣が展開されているよう感じたのだ。
――あれが って、もしかして神紋じゃ……
俺がそう思い、もう一度その生徒の魔法陣を見た瞬間、頭にテンションが上がりそうな音と共に無機質な音声が頭に響いた。
ピロピロン♪<火の玉陣を覚えたよ>
――……火の玉、陣? これって神紋?
俺がそう思っていると頭の中に火の玉の神紋が浮かんだ。
――マジですか……これなら描ける……描けるよ神紋。うおおっ、や、やったじゃん俺。神紋一つ覚えたよ。
俺はその後、隣から何やら語りかけてくる騎士を無視し、みんなの展開する魔法陣に注視した。
――うし。あれもだ。
だが、残念ながら、ここはちゃんとした訓練場ではなかったため。加護魔法の中でも玉系の神紋しか覚えれなかった。
火の玉、水の玉、風の玉、土の玉、光の玉、氷の玉、雷の玉、無の玉、木の玉、回復の玉だ。
これは、クラスみんなが魔法を放った後の残念な表情と聞き耳スキルで分かったが、玉系は初歩の初歩、威力は最低レベルなんだそうだ。
それでも俺がその神紋を描こうとすれば、5秒くらいはかかりそうな気がする。
――ん?
「あ〜ぁ。足りねぇよ……」
「申し訳ない勇者殿」
ヤンチャ生徒が思いっきりぶっ放してぇと叫んでいた。それにみんなも同意しているが、さすがにその言葉には焦ったのか、王国の騎士たちに止められていた。
――初歩の初歩であれって……
それでも、的である人形は吹き飛び、城壁の壁にちいさな穴を開けるくらいの威力はあった。
――やっぱり反則だ……
思いっきりぶっ放していたらどうなっていたのやら、でも俺にはそれだけでも有難がたかった。
神紋が分からず使えそうになかった神紋魔法が使えるようになったのだから。
ただ、クラスメイトは相当フラストレーションが溜まってしまったようだ。




