第76話
「すまないな、ルーナ」
「何がですか?」
「いや、お前をこんな事に巻き込んでしまって」
「・・・」
俺はルーナと準備を進めながら、此の状況について謝罪をした。
ルーナは確かにフェルトより報酬と言われた経緯があったが、今現在人工魔流脈は完成していない。
そう考えると正式に俺に所有権があるとは言い難かった。
それに・・・、何よりルーナと過ごす時間の中で、彼女の事をただの人形とは認識出来なくなっていた。
「司様・・・」
「何だ?」
「ルーナは確かにマスターによって作り出されました。でも既に司様のものなのです」
「い、いや・・・」
そんな事は無い、そう続けようとした俺をルーナは遮った。
「其れに司様はあんな事をルーナにしたのですから、最期まで責任を取って貰います」
「えっ⁈・・・あ、あぁ」
「お願いしますよ」
ルーナは頰を染めそう言って先を行き、俺が後を追う形になった。
此の状況がルーナの決意を示してくれている事に俺はただただ感謝するしかなかった。
そうしてミニョン、フレーシュと合流した俺達は、馬小屋の前で作戦の確認をした。
「司さん、先ずはどうしますの?」
「ああ、先ずは王都への連絡係の道を切り開く」
「なるほどですわ」
「人選はアームさんが進めてくれてるから決まり次第決行する」
「フェーブル辺境伯とディシプルの軍へ対する策は有りますの?」
「ああ、もうすぐ日も沈むし、そうなればルーナのスコープの暗視機能が活かせるし、夜襲を仕掛けつつ、連絡係を見送る」
「では戦力は?」
「勿論俺達だけだ、その他はリール様とアームさんに任せて屋敷の防御と住民の避難、そして敵の援軍の対応の準備を進めて貰う」
俺の提案した策に、日頃冷静な様子のフレーシュは驚きの表情を浮かべ、俺に問い掛けてきた。
「真田様相手は約80人ですよ、本気で我々4人だけで対峙するつもりですか?」
「いやまともにやり合うつもりは無いし、何より相手は50だしな」
「え?」
「さっきアームさんから聞いたんだが、ディシプル軍は既に援軍との合流に向かったらしい」
「そうですか・・・」
「そこから考えても、フェーブル辺境伯の軍も、王都への連絡を遅らせる事が目的だろうし、突破されれば援軍との合流を優先するだろう」
此れはリールからの情報で、フェーブル辺境伯は代々の領地を継いでいるだけで当代は決して仕事熱心とは言えず、長きに渡るディシプルとの同盟関係でその軍も練度不足との事だった。
「其れに予定していた王都への到着が遅れているから、王都からも此方に向かっているだろうから、連絡係との合流は其処まで時間が掛からない筈だしな」
「なるほど、わかりました」
フレーシュは一応納得してくれた様だ。
まあ素人の俺の策を信じられないのは仕方ない事だし、本戦はリールやアームの指示に従うのだから大丈夫だろう。
「司様、それでは出発しましょうか?」
「ああ、ミニョンとフレーシュも準備はいいか?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「了解しました」
「よし、じゃ・・・」
「司ー‼︎」
「ん?ローズ?」
「はぁ、はぁ、ちょっと良い?」
「え、あぁ・・・。悪い、皆んなちょっと待っててくれ」
「むっ、早くしてくださいですわっ」
「・・・」
出発しようとした俺達の下へ、息を切らし駆けて来たローズ。
俺に用がある様で、席を外そうとした俺とローズに、ミニョンは何故かムッとした態度で急かしてきた。
(まぁ、此の作戦はスピード重視だからな)
「・・・」
「ローズ、すまない」
「・・・何が?」
「相談もせず勝手に参戦を決めた事だ」
「・・・」
ミニョン達から離れた俺とローズ。
ちょうど良かったので俺はローズに謝罪をした。
「もうっ」
「え?どうしたんだ?」
少しムッとしたローズは、軽く息を吐いた。
「前に言ったでしょ?私男の人の仕事に口を出したりしないわ」
「あ、あぁ・・・、じゃあ?」
何の用があるのか、そう聞こうとした俺にローズは短く言った。
「抱きしめて。・・・其れでキスして?」
「・・・あぁ」
「司、・・・んっ」
そして俺達は此の夜、最後のキスをして別れた。
明日の朝またキスをする約束をして・・・。




