↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/11

第11話 真実とプロポーズ

 

「……っ、え? ……もしかして、あの時の少年は……」


 昔の記憶を思い出し瞬きをすると、目の前に居る王太子殿下が昔出会った少年であることが分かる。不思議なことだが、先程までは私は魔法手帳を貰った一部分だけの記憶しかなかった。それが今では、はっきりと思い出すことが出来たのだ。


「うん、僕だよ。久しぶりだね、会いたかったよ。アンネット」

「ふわぁ……」


 ロベルト殿下が柔らかく微笑み、その表情に頬が熱くなるのを感じる。可愛い癒しであるトム・ロマイの正体が、王太子殿下であると知った際には接し方を模索していた。

 しかし今は親しみと愛しさが、胸に込み上げ別の意味で対応に困惑している。彼の顔が輝いて見え、思わず奇声が漏れた。


「わ、私は何故か殿下とお会いした時のことを忘れておりました……」

「それは……僕と出会った時の記憶を封じていたからだよ」


 彼の視線から逃れるように疑問を口にすると、彼は躊躇いながらも答えを告げる。


「え? それは……」

「僕が君に魔法手帳を贈ったからだよ。エルトレム王国には、王族が求婚する際に自作した魔法手帳を贈るのが慣例なんだ」

「え?! そうなのですか!? どうしましょう……私ったら……」


 魔法手帳にはとんでもない秘密が隠されていた。私は狼狽する。子どもの頃の私は出会った記念にと、軽い気持ちで受け取ってしまったが軽率な行動であった。今更ながら、反省をする。


「大丈夫だよ。僕は君に一目惚れをして、優しい部分と芯のある姿に惹かれた。子どもの間違いじゃないよ。僕はあの時に、君に求婚した」

「……っ!?」


 私を安心させるような微笑み、彼の本心を告げられ体全体が熱くなる。


「あの頃は違法魔法道具派が王国を取り込もうとしていた。……王太子の僕が求婚をした所為で、君を危険に晒す可能性があった。だからアンネットの記憶を封じてもらい、君が卒業するまで関わりを持たないことにした」

「では……学園にトムの姿で潜入されていたのは、やはり違法魔法道具の捜査ですね?」

「嗚呼、そうだね。それと……僕は君と会うことも許されないのに、意地汚い男が君を利用する為に婚約し、一方的に破棄をした。少しでもアンネットを元気付けたくてね……」

「殿下……」


 本当は直ぐにでも抱きしめたかった。小さく呟かれた声には私を気遣う音色が含まれており、嬉しくもあり少し恥ずかしい気持ちになる。


「でも僕が想像していた以上に君は強かった。剣を握り、裏路地でも助けてくれた」

「えっ!? 殿下は私の変身魔法を見破っておいででしたの? 完璧と自負しておりましたのに……」


 まさか殿下に変身魔法を見破られていたとは思いもしなかった。私はつい大きな声を上げる。


「アンネットの魔法は完璧だったよ。ただ……好きな人は分かるよ」

「ふえっ……」


 自信に満ちた美しい紺碧の瞳に見詰められ、私は言葉を失った。そして私がこんなにも、心が動き息苦しくなる理由がやっと分かった。私はロベルト殿下と出会ったあの時から、彼に恋をしていたのだ。


「それに僕を守る為に毒が塗られた短剣を掴んだ時は、心臓が止まるかと思ったよ」

「そ、それは……咄嗟のことでして……」


 殿下が苦しそうに顔を歪める為、私は言い訳を口にする。咄嗟に行動したことは本当だ。只毒が塗られていたことを見抜くことが出来なかったのは失態である。あの事件の後に寝込んだのは、毒の所為だったのだ。トム・ロマイに扮する殿下を観察することが出来なかったのは、かなりの痛手である。

 だが私は毒が塗られていると知っていたとしても、あの短剣を掴むだろう。好きな人を危険に晒したくない。


「初めは、トムの姿の僕で君を見守って要られれば十分だと感じていた。でもこの内容を見て、偽りの姿に恋する君を見たくなくなった。可笑しいだろう? 自分の偽りの姿に対して嫉妬をした」

「いえ……その……」


 魔法手帳を撫でる殿下に、彼は製作者であるから魔法手帳を開くことが出来るのだろう。つまり私がトム・ロマイの観察日記を付け、ストーカー行為をしていたのを知られてしまったことになる。不敬罪で罰せられる可能性もある。彼の表情を窺うと、拗ねていた。

 今日は本当に色々なことが起こる日である。先程までは殿下のことをカッコイイと思っていたが、拗ねるような口調に可愛いという感情がこみ上げてくるのだ。殿下の可愛い姿を目の当たりにし、口が上手く動かない。


「だが、もう我慢をしなくて済む」

「?」

「違法魔法道具の件も片付き、君は学園を卒業した」

「殿下!? 何を……」


 彼は何か憑き物が取れたかのように、爽やかに笑うと魔法手帳を閉じた。そして私へと歩み寄ると、膝を着いた。王族であり王太子殿下が膝を着くなど、有り得ない。具合が悪いのだろうか、私は殿下へと手を伸ばした。


「アンネット、どうか僕と結婚してくれないか」

「……え……」


 少し緊張を孕んだ紺碧の瞳が私を見上げる。彼は私に魔法手帳を差し出した。つまり、結婚を了承するならば受け取るということだ。


「先程、殿下は私の変身魔法を好きな人だから分かるとおっしゃいました。私も記憶にはなくとも、心の何処かで殿下だと分かっていたのだと思います」


 彼からの想いは沢山伝えられた。次は私の気持ちを伝える番である。記憶がなくても、トム・ロマイに引き寄せられた理由を口にする。


「でなければ、あんなに胸がときめくわけがありません……私もロベルト殿下をお慕いしております」


 姿を変えても可愛らしい部分や優しい所は変わらない。


「喜んでお受け致しますわ」


 私は一番の笑顔を送ると、紺碧の手帳を手にとった。


「アンネット! 嬉しいよ、ありがとう!」

「きゃ……ふふ! 私こそありがとうございます。ロベルト殿下」


 ロベルト殿下に優しく抱きしめられた。人生初めての異性からの抱擁に、慌てるがそっと彼の背中に腕を回すと、愛しい人を抱きしめる。


 今日は魔法手帳に書く内容が沢山である。そう思いながら、可愛い彼と微笑みあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。