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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
災害級魔物を斬る
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第41話―温泉に入る(女性陣)―

今回は前半ミサキ目線、後半ムソウ目線で話が進んでいきます。


 晩御飯が終わって、私たちはムソウさんの言う温泉に向かった。流石に、森の中の温泉ということで、危ないから、皆一緒に向かっている。

 私が、結界を張れば良いんだけど、お風呂入ってるときくらいゆっくりさせてよ~と言ったので、私たちが入っているときはムソウさんたちが、近くで辺りの警戒をしてくれることになった。


 フフフ、計画通り!


 女と男が一緒に温泉に入ると言えば……あれでしょ。そう、男の人が女の人の入浴しているところを覗いて、きゃ~えっち! って展開。

 でも、しっかりと男の人は女の人の一糸まとわぬ姿を見るわけで、そこからさらに男女の関係が進んでいくってやつ。


 しかも、私を含めて、ハクビさん、エンテイ、レイカちゃんと美女、美少女がそろっている中で、男性陣が覗かないはずはない! リンガは……綺麗なんだけどね~。言われなきゃ男って分からないような、格好してるからね~。わからないけど……。


 ともかく!私はそんな展開を狙っているわけなのだ!!!


「ふふふ……」

「どうした? ミサキ殿。そんなに温泉が楽しみなのか?」

「え、いや、何でもないよ!」

「どうせ、またよからぬことを考えているのでしょう。ほっときましょう」


 む、さすがエンテイ、私の考えはやはり筒抜けみたい。けどもう遅いよ! 私はこのお風呂イベントで、ウィズ君を悩殺してみせる!!!


 ……


 ……


 ……


 ……と、思っていた……。


 私達が服を脱いで、温泉に入っても、ウィズ君たちは話に盛り上がっているようだった。誰も覗こうとしない。むしろ、今、私がウィズ君たちの様子を伺っている。違うよ、逆よ、逆!


「はあ~……気持ちいいなあ~♨」

「本当ですね。疲れが取れていきます♨」

「私にとっては久しぶりの風呂だからな……。ここ数日の疲れが解けていくようだ……♨」

「極楽、極楽~♨」


 そんな私を放っておいて、皆、温泉を楽しんでいる……。


 よぉし……こうなったら……。


「ねえ、ハクビさんって大きいよね……」

「ん? 何がだ……?」


 私はハクビさんの胸のあたりをジッと見つめている。そう! 男性陣の前で、女子が無防備な恰好で、無防備な会話をしたら、男性陣が食いついて、思わず覗いちゃう作戦だ!


「……ああ、これのことか……戦いづらいから、普段はさらしを巻いているがな……人と比べたことが無いから分からないが、やはり、大きいほうなのか?」

「そりゃ、大きいほうだと思うぜ。何喰ったらそこまでになるんだよ?」

「う~ん。別段なにか特別なことをしているわけではないのだがな……」

「そうなのか?……まあ、闘いづらいのは辛いな。俺はこんなんだから、問題ないが……」


 お、ハクビさんとリンガの会話が弾んでいる。これはいいぞ~。にしてもハクビさん、それ、結構贅沢な悩みだよ……。


「それにしても、エンテイ殿の方が大きいのではないか?」

「私は鳥の魔獣ですからね。胸が大きいのは当たり前のことなんですよ」


 エンテイは自分の胸を上下にゆすっている。……うわあ~、いつも見ているけど、こうやって見たら、すごいなあ~。エンテイって着やせするタイプだからね。……それでも、あの着物を着ている上からでもわかるほどの大きさだけど……。

 鳥の魔獣だからって……あれは筋肉だけじゃないよね……。というか、それって関係あるのかな。いささか、疑問が芽生えてくる。


「私はあと、何年で大きくなるのかな?」

「そうですね……レイカさんはエルフですから、それでもあと100年ほどはかかると思いますよ。300歳といえば、肉体的には、ハクビさんやミサキ様と同じくらいになるはずですから……」

「ほんと!? じゃあ、私もハクビさんみたいになれるかな!?」


 レイカちゃんはキラキラとした目で、ハクビさんの胸を見ながら、自分の胸を撫でている。……可愛いなあ~、やっぱり小さい子供は大人に憧れるのよね~。……ってなんでハクビさん? 私も同い年くらいだよ~。


「そりゃ、わからんぜ。ミサキみたいになるかもしれないからな!」


 リンガが、笑いながら私を指さす。


 ……ムカッ!


「リンガ、ちょっと! それどういう意味!?」

「言葉通りだ。ミサキはもう、成長が止まっているみたいだからな。つまり胸の大きさも成長しきって、その大きさだということだ。100年経ってもそのままかもしれないって、言ってんだよ」

「なによ! なによ! 私だって、ちゃんと毎日マッサージしてるもん! いつか絶対大きくなるもん!」

「毎日やっててその大きさなのですか? もっと頑張らないといけないのでは?」

「エンテイにだけは言われたくない!」


 ちょっと待って! その言い草だと、エンテイも自分の胸が大きいことに誇りを持っているように聞こえる。そして、小さい胸よりは魅力あるって聞こえる! エンテイがそんなことを思っているなんて、少しショック! 


「ミサキ殿、胸が小さいからと言っても、なにも落ち込むことはない。むしろ大きい胸など戦いの邪魔でしかならないからな」


 ハクビさんはやれやれと頭を掻きながら、そんなことを言っているけど、その度に、胸が揺れて、水面が小さく波打っている。もう、本当に、嫌味にしか聞こえない! よぉ~し、こうなったら!


「む~!!! じゃあ、その胸、私に頂戴!」


 私はハクビさんの大きな胸を鷲掴んだ。


「うわ、ちょっ! 何をする!? ミサキ殿!!!」

「要らないんでしょ~!!! なら頂戴! ……って、すごい!柔らかくて、ふわふわで、でも張りもあって、完璧じゃん!!! それでも要らないっていうなら頂~戴!!!」

「あ、私も~!!!」


 私が、ハクビさんの体を触っていると、レイカちゃんも混ざってきた。


「あ、こら! レイカ! やめないか! そんなにあちこち触るんじゃない!」

「うわあ~、ほんとだ! 気持ちい~! あ、しかも尻尾ももふもふだあ~」

「ひゃあ! 尻尾はやめてくれ! この際、胸も足も良いけど尻尾だけはやめてくれ~!」

「足も腰もだよ! どうしたらこんなに細くなるのよ!?」

「ミサキ殿、落ち着くんだ! その、毎日走っていればこうなるから! だから、もう触るのはやめてくれ!」


 苦しい言い訳をするハクビさん。絶対、天性のものだよ。毎日走っただけじゃ、こうならないよ。ガチッ、ってイメージじゃなくて、カモシカみたいにスラっとって感じだもん! これは、絶対、他に何かしているか、生まれついてのものだって、確信したね!


「おい、ミサキ、レイカ、いい加減にしろって!」

「そうですよ。ミサキ様、ハクビ殿は地道に努力すればいいと仰ってるではありませんか」

「地道な努力をせずにそこまでの大きさを手に入れているエンテイとハクビさんにだけは言われたくないもんね~!」


 私はなおも、ハクビさんの体をまさぐっている。だって、本当に気持ちいいんだもん~。これが終わったら、エンテイだ!


「うわ!ちょ!そこは!!!……ああ~~~!」


 ハクビさんも顔を赤らめているじゃん。本当は嬉しいんだよね~。うふふふ。なんだか楽しく――


 ……ぺちょ!


 突然、私の顔に何かがぶつかった。静かになる皆の前で、私の視界が真っ黒になる。……ん!? 何が起こったの!?


「キュウウウ~~~~!!!」


 何だろうと顔のものをとると、リンネちゃんだった。私の手の上で、何か怒っている……。


「あ、ハクビ? なんかあったか? 大丈夫か!?」


 突然ムソウさんの声が聞こえた。ウィズ君じゃなくてがっかり……と思ったけど、私は今それどころじゃなかった。

 何故か、リンネちゃんが私とレイカちゃんの頭を交互に跳び始めた。踏みつけられる度に、私たちはお風呂の中へ沈んでいく……。


「ハァ、ハァ、ハァ……大丈夫だ。ミサキ殿とレイカがちょっとふざけてきただけだ!」

「あ?……ああ、そうだったか。んで、そっちにリンネが行ったと思うんだが……」

「ええ、来ていますよ!」


 ムソウさ~ん、助けて~! 苦し紛れに手を伸ばすが、リンネちゃんは私とレイカちゃんをお湯に沈める遊びを辞めない。


「おお、エンテイ、すまないな。……いや、さっきまでそいつ寝てたんだが、風呂の方がうるさくて起きたみたいだ。何か、迷惑をかけてないか?」

「ええ、大丈夫です! 只今、リンネちゃんはミサキ様とレイカさんの頭を交互に跳んで、お風呂の中に沈めるという遊びをしています!」


 そうなの~、死にそうなのよ~、私達!


「そうか! じゃあ、リンネの頭を撫でてやってくれ~」

「わかりました」


 なんで~!? 


「あ、それからエンテイ!」

「はい、なんでしょうか?」

「サンロウシが覗いているんだが……どうしようか?」


 エンテイが、ばしゃっと肩まで浸かったのが聞こえるけど、私はそれどころではなかった。というか、覗いてたのね……。


「ム、ムソウさん、やめさせてください!」

「ああ、分かった~」

「こ、これ! ムソウ殿!」


 あ、サンロウシの声が聞こえる……。本当に居たんだ……。


「おい、ムソウ!」


 ムソウさんと、サンロウシが何か言い合う声が聞こえてくると、リンガが笑いながら口を開いた。


「お前は覗いてねえのか?」


 あ、それ気になるかも……。でも、今は……、と、とりあえずリンネちゃん! 落ち着いて~!


「え? ああ。ウィズと話に夢中になっていたからな」


 え~! じゃあ、ウィズ君も見てないの~!?


「ただ、ジンランとぴよちゃんは覗いてんぞ。お前の体がだらしなくなっただとか、ミサキは変わらないなとか、あと、エンテイ、お前はやはり美しいとかそんなこと言ってたぞお~!!!」

「こら! ムソウ殿!」

「ムソウ殿! そこまでにしてくれ!」


 ムソウさんのわざとらしい大声に、ジンランとぴよちゃんの何か焦っている声が聞こえる。……二人ともそういうキャラだったのね……。新たな一面を知れて良かったと思ってる。……うん。


「……ムソウ! そいつらに覚えとけ!って伝えといてくれ!」

「わ、私の分も、お願いします!」

「はいよ~」


 ムソウさんのため息と共に、じたばたしているサンロウシを引き離すのが聞こえる。サンロウシは、これ、ムソウ殿! 後生だ! 頼む! この場に居させてくれ! とか言っているけど、それも段々と遠ざかっていった。

 そして、ぴよちゃんと、ジンランが怒られている声も聞こえる。ムソウさんにかかれば、私の四神も形無しだなと、リンネちゃんに踏まれながら、しみじみと感じていた……。


「……ったく、あいつらはしょうがねえな」

「全くですね!」


 ムソウさんたちが、皆を連れて行っても、リンガとエンテイはまだ怒っているみたいだ。リンネちゃんはというと、私たちをいじめて満足したのか、桶の中で、温泉に浸かって居た。


「キュウウウゥゥゥ~~~~」

「ハハッ、こいつは可愛いな」

「あら、あなたから可愛いという言葉が聞けるなんてね。でも確かに、見ているだけで癒されますわ……」

「そうだな、いつも闘っているムソウには本当にちょうどいいかも知れないな」

「性格はそっくりだけどね!」


 リンネちゃんを見て、皆が思い思いに感想を言う。レイカちゃんは少し不貞腐れながら、リンネちゃんのお腹をつついている。リンネちゃんは、気持ち良かったのか、更に嬉しそうな顔をして、温泉を満喫していた。


 ……そう、ムソウさんにはやっぱり、リンネちゃんみたいに傍で、ムソウさんを癒してくれるような存在がきっと必要なはず。

 

 ……だって、あんなことがあって、それでも普通に過ごすなんて、少なくとも私には無理。


 ムソウさんの心がいっぱいいっぱいになったとき、傍にこの子が要るだけで、ムソウさんの力になってくれると思ってる。あの人の代わりに……。


「ミサキ殿?どうした?」

「……ん?あ、ごめん、なんでもないよ~」

「そうか、私はまた、胸のことで悩んでいるのかと……」

「むう……もう気にしてないよ!」


 ハクビさんはそれはよかったと言って、空を見上げている。


 私も見ると、空には一面の星空が輝いていた。


 私も十二星天とかって呼ばれているけど、ムソウさんの方が輝きが強いよね、と、ふと思っていた。


 ◇◇◇


 ミサキたちが風呂に入り行くのを見届け、俺達は、傍の木陰で休んでいる。魔物は居ないみたいだから大丈夫だとは思うが、まあ、念のためだ。

 ミサキが結界を張っていれば、とも思ったのだが、ミサキから、風呂に入っている時くらいは、ゆっくりしたいと言われたので、従うことにした。なんだかんだ、アイツもよくやってくれていたからな。労ってやらねえと。

 ……というか、結界を張らなくても、ミサキたちがいる時点であいつら大丈夫じゃないのか、という疑念はあるが、まあいいか。


「ミサキ様、なんだか変な顔をしてましたが大丈夫でしょうか?」

「また、変なこと考えているんだろ、どうせ。放っておけよ」


 心配するウィズにそう言ってやると、はあ、と頷いて、俺の隣に座った。


 ミサキの契約獣たちは離れたところに居るみたいだ。せっかくだから一緒に、固まっておこうと言ったのだが、サンロウシが、いろんな方向を警戒した方が良いじゃろう、というので、任せてみた。なにやら含み笑いをしながら行ったが、気にすることもないだろう……。


 リンネは……俺の膝の上で寝ているな。やはり、疲れてはいたのか……。可愛い寝顔で、すーすーと寝ていた。起こすのも悪いから、そのままにしている。


「……なあ、ウィズ」

「はい、なんでしょう?」


 俺は取りあえず暇だったので、リンネを起こさないようにウィズに話しかけている。


「何故、ミサキの弟子になったんだ? 確かに“魔法帝”であるミサキに魔法を教わるのは一番いいとは思うが、なんと言うか、焦りみたいなものを感じるぞ」

「……ムソウさんには敵いませんね。お話しします……」


 そうやって、ウィズは昔あった出来事を話し始めた。

 家が魔法戦士の家系のこと、キメラのこと、禁術のことなど。俺だけ知らなかったのか……。やはり、ちょっと寂しいぞ、ミサキ……。


「……それで、ですね、ここからはまだミサキ様にも話してないんですが……」


 そう言って、ウィズは語りだした。


 両親を亡くした後、今度は自分の兄弟たちが、ウィズの面倒を見ると言ってきたらしい。その兄弟は、皆、レインで王宮の警護官をしているという。レインで生活すれば、ウィズも魔力を抑え込めるかもしれないし、何より、その方が安全だと考えていたようだ。


 しかし、ウィズはその誘いを蹴ったらしい。


「何故だ? お前にとってはいい話に聞こえるが……」

「確かに、良い話です。俺もそうしたかったんですが、俺がまた暴走すると、今度は兄弟たちをも喪うかもしれません。それだけは嫌なのです。

 だから独り立ちして、自分の魔力を使いこなすまでは、兄弟たちと会わないようにしたんです。俺のことを守るべき存在として見るのではなく、一緒に戦う者として見て欲しいですからね」


 う~む。どうやら、ウィズの家というのは良い奴しかいないみたいだな。親を喪うきっかけになったウィズを疎むことも無く、誰もかれも、ウィズのことを心配して、力になりたいようだ。

 だが、当の本人はそれに甘えたくないと語っている、という感じか。


「それにしても、兄弟たちに認めさせるというのはどうやってする気だ? 超級の魔物でも倒すのか?」

「以前はそう考えていたのですが、それよりも良い方法が見つかったんです」


 そう言って、ウィズは懐から何か取り出した。それは一枚の紙きれで、そこには……


「第一回人界武術大会開催決定!」


 と、書かれていた。へえ、武術大会なんてあるんだな。ちょっと面白そうだ……。


「三年後にあるんですが、これに出ようと思って」

「なるほどな、その大会でいい成績を残したら、きっと兄弟たちも認めてくれるって考えだな」

「はい。そのためにもこれから少なくとも三年間、ミサキ様の元で強くなって、この大会を戦い抜きたいと思います」


 そうか……上級だの超級だの、ギルドで定められた基準の強力と云われる魔物を倒すよりは、この闘いで、自分がどれだけ戦えるのか、どれだけ、力の制御が出来るのかを、兄弟たちに見せた方が、分かりやすいか。

 そのために、これから三年間、ミサキの所で強くなるというわけだな。俺は魔法についてはよく分からないが、ミサキの反応を見るに、ウィズには素質がある。すぐに強くなるだろう。

 それに、周りにはレイカや、ハクビも居て、俺と違い、競う相手が居るからな。あっという間に強くなるかも知れない。いずれ、その時にウィズとも戦ってみたいなと感じた。


 ……そうとなれば……


「……ところで、この大会には強い奴が、たくさん出るよな?」

「初開催で、前例はないですが、だからこそ自らの力を示そうと、この大地中から腕自慢が集まるのでは、という話になっています。……まさか?」

「ああ、俺も出てみるかな?」


 正直なところ、武術大会というものに興味が沸いた。人界全土から腕に自信のある者達が集まってくる……。考えただけでも、年甲斐も無く、ワクワクしている。

 この世界でも、“古今無双の傭兵”を名乗るのも悪くはないなと感じた。


「ムソウさんが出たら、俺、勝ち進めないじゃないですか!」

「だからこその、これからの三年だろ。三年後にはお前は強くなってるかもしれないが、俺は四十二だ。……厄年だぞ? だからどうなるかわからんだろ?」

「いや、そうですが……え~~~?」

「ハハハハッ!せめて、俺と互角になるくらいは強くなっとけよ!」


 俺が笑うと、ウィズもはにかみながら、わかりました、と頷いた。立派な魔法戦士になったウィズや、狂気スキルを極めたハクビ、それにロウガン、サネマサの他にも、その頃には、この世界の奴らとも、思いっきり戦えるようになっているだろう。

 そんな奴らを叩き伏せて、俺が最強を謳うのもいいかも知れないなと、笑っていた。


「……やれやれ、リンガは相変わらずだらしない格好だったな」

「ああ、ミサキ様もな……」


 ……ん? ジンランとぴよちゃんの声が聞こえる。振り向くと、温泉の方から二人がやってきた。


「何だ、お前ら。どこへ行ってたんだ?」

「む……ムソウ殿、いやちょっとな」


 俺が聞くと、ぴよちゃんが口ごもる……。ん? なんだ?


「おふた方、ひょっとして……」

「何を言う、ウィズ殿。我々は覗きなどしておらんぞ!」

「……」


 やっぱりか……。こいつら四神とか呼ばれている割にはそういうことは、なんと言うかするんだな。……見てみろ、お前らに憧れていたウィズでさえ、頭を抱えているぞ。

 だが、何を言っても、覗いてなどおらん! と言い張るのでちょっとカマかけてみよう……。


「……で、どうだった?」

「……何がだ?」

「いや……誰が一番色っぽかったんだ? やっぱりエンテイか?」

「ちょ、ちょっとムソウさん!?」


 ウィズが顔を赤らめて俺を見るが、俺はにやりと笑って、人差し指を自分の口の前にもっていき、黙ってろの合図をした。すると……


「うむ、やはり朱雀は美しかったな。長い髪を束ねて温泉に入っているのはなかなか画になっていたぞ!」

「ミサキ様とリンガはだめだ……なんと言うかだらしない……ハクビ殿も普段の男らしいさまはなりをひそめ、美しい女人そのものだったな。レイカ殿は……子供だからな」


 二人とも、先ほどまで見ていただろう光景を思い描きながら、俺達に語っていた。俺とウィズは二人の報告に、思わずため息をつき、呆れた。


「……そうか……分かった。皆にお前たちがすごく褒めていたと伝えてくるよ」


 俺は立ち上がり、温泉の方に歩き出す。すると、やってしまったという顔で二人が俺を止めようとした。


「ま、まて! ムソウ殿、話し合おうではないか!」

「そうだぞ、我らのことは、内密に頼む! お主が黙っていれば面倒なことは起きないのだ! だから、頼む!」


 お堅い性格だと思っていた二人が、頭を下げて、必死に謝ってきているのを見て、言葉も出なかった。どうしたものかと悩んだが、二人の必死さに圧され、俺は頷いた。


「……はあ、分かったよ……ところでサンロウシは?」


 俺は二人しかいないことに今気づいた。そして、二人は温泉の方を向き、


「「まだ見ている」」


 と言った。


 ここまで来ると、流石に怒る。あの爺い……俺達だけに警戒を任せやがって……。


「……分かった……すぐ連れ戻すから、そこで待ってろ」


 俺は、寝ているリンネを懐に入れて、温泉の方に向かう……。


 温泉の方に行くと……居るなあ。色気づいた老人が、温泉の方を見ながら、ぶつぶつ何か言っている。


「おお、ミサキ殿もっとこちらに……ああ、朱雀よ、もっとこちらに……むふふふふ……」


 あの爺さんの威厳とは一体……。俺達が鍛錬中にリンネと遊んでくれていたことには感謝するが、それとこれとでは話は別だ。


 ガサッ


 突如、後ろから物音が聞こえた。なんだ? と思い振り返ると、ジンランとぴよちゃんがついてきている。


 懲りない奴らだな……さて……どうしようかな。今、近づいて怒っても、サンロウシのことはばれるだろうし、大きな声でも上げたら、リンネが起きるだろうし……。


 そう思っていると、風呂の方からバシャバシャと聞こえてくる。そして、ハクビの悲鳴が聞こえた。ん? なんだ?


 そんなことを思っていたら、懐からリンネが飛び出してくる。


「キュウッ! キュウッ! キュキュウッ!」


 どうやら怒っているみたいだ。そりゃそうだ。あれだけ気持ちよく寝ていたのだからな。


「俺じゃねえ。向こうだ」


 俺が温泉の方を指さすと、リンネはそちらの方に向かって飛び出した。

 さて、と何が起きているんだ?


「あ、ハクビ? なんかあったか? 大丈夫か!?」

「ハァ、ハァ、ハァ……大丈夫だ。ミサキ殿とレイカがちょっとふざけてきただけだ!」


 あいつらか……本当、ウィズはこれから大変だな。それにしてもハクビ、息が荒いが何されたんだ? 

 ……まあ、いいか。聞くのもなんかかわいそうになってくるな。


「ああ、そうだったか。そっちにリンネが行ったと思うんだが……」

「ええ、来ていますよ!」


 お、ハクビの代わりにエンテイが応えてくれたな。ハクビ、大丈夫か? 本当に……。


「おお、エンテイ、すまないな。いや、さっきまでそいつ寝てたんだが、風呂の方がうるさくて起きたみたいだ。なんもしてないか?」

「ええ、大丈夫です!ミサキ様とレイカさんの頭を交互に跳んで、お風呂の中に沈めるという遊びをしています!」


 おお、リンネ、流石だな。俺の代わりに二人にお仕置きしてくれているか。……いや、ただ怒っているだけか。とりあえず褒めてやらねえとな。


「そうか!じゃあ、リンネの頭を撫でてやってくれ~」

「わかりました」


 流石、エンテイ。あいつはどちらかと言えばミサキたちの母親って言う立場っぽいからな。やっぱりこういうことはあいつが一番わかってくれたみたいで即答だ。


 ……と、そうだ。


「あ、それからエンテイ!」

「はい、なんでしょうか?」

「サンロウシが覗いているんだが……どうしようか?」


 俺はサンロウシのことを伝えた。サンロウシは俺のことに気づき、パクパクと何か訴えながら、俺を見てくるが、気にしない。


「ム、ムソウさん、やめさせてください!」


 慌てたエンテイの声が聞こえる。やっぱり嫌だったんだな……。リンネのこともあるし、従っておこうか。


「ああ、分かった~」

「こ、これ! ムソウ殿!」


 サンロウシは俺に慌てた表情を向ける。おいおい、喋ったらここにいることが皆の中で確定するぜ?

 ま、もう遅いけど……。


「おい、ムソウ!」


 おっと、リンガが俺を呼んでいるな。何だろうか。


「お前は覗いてねえのか?」


 リンガはそんなことを聞いてきた。覗かねえって! 興味ないからな……。


「え? ああ、ウィズと話に夢中になってたからな」


 ということにしておこう。興味ないと言ったら、また要らぬ誤解を与えそうだからな……と、大事なことを言うのを忘れてたな。


「ただ、ジンランとぴよちゃんは覗いていたらしい。お前の体がだらしなくなっただとか、ミサキは変わらないなとか、後エンテイ、お前はやはり美しいとかそんなこと言ってたぞお~!!!」

「これ! ムソウ殿!」

「ムソウ殿! そこまでにしてくれ!」


 二人は俺にこっそりついてきていることも忘れて、俺を大声で叱る。……これでこいつらもここにいること確定……。ん? リンガからの返事がないな……。怒ったか?


「……ムソウ! そいつらに覚えとけ! って伝えといてくれ!」

「わ、私の分も、お願いします!」


 あ、エンテイと一緒に、めちゃくちゃ怒ってるのが分かる。リンガって意外と気にするんだな……。


「わかった~!」


 俺は素直にそう答えた。伝えるまでも無く、もうすでに伝わっているんだよなあ……。

 そして、木陰に居たサンロウシを担ぎ上げ、温泉から離していく。


「これ、ムソウ殿! 後生だ! 頼む! この場に居させてくれ!」

「うるせえ! 何一人で警戒さぼってんだ! まだまだ年寄りじゃないんだろ? なら、若い奴だけに後を任せっきりにするんじゃねえ!」


 俺が怒鳴ると、サンロウシはぐぬぬ……と黙る。


「で、お前たちもだ! 病み上がりのウィズを一人にするな!」

「そ、それは……」

「う、む……だが……」


 コイツ等、わかってないみたいだな……。散々、世話になったし、恐らく、四神と呼ばれるくらいには、立派な奴らなんだろう。だが、俺の思いとしては、コイツ等も所詮は、獣だなと思うようになっていた。

 そんな奴らに俺が出来ることは……


 ―死神の鬼迫―


「「「ゔっ!?」」」

「……わかったな?」

「「「はい……」」」


 まったく! 落ち着きがねえな! ミサキのところの奴らは! 飼い主とそっくりだ……ったく。


 おっと、リンネは……大丈夫か。ハクビもエンテイも居るしな。リンガは……なんか、リンネで遊んでいそうだが……。


 不安だなあ……。


 俺は若干後ろ髪をひかれながらも、一人にしたウィズが心配だったので、三人を連れて、戻っていった……。


次回は男性入浴編です……。

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