第120話―今後を決める―
その後、未だ転がっているナズナを起こそうとしているショウブの元に近づく。ショウブはナズナの体をゆすったり、大きな声を出して、起こそうとしているが、ナズナは動かない。
「ムソウ殿……もしや……」
「殺してねえって! ただ、腹に拳を入れただけだ!」
なかなか起きないナズナを抱えながら疑いの目を向けるショウブにそう言うと、一つため息をついてアヤメがナズナの前に行く。
「すまねえな。恐らくアンタの気迫に当てられたんだろう。もともとこいつは腕は立つんだが、気が弱くてな。……おいっ! 起きろ! ナズナ!」
「……」
「……ったく、しょうがねえな。……放水」
アヤメがナズナに手を向けると、そこからバシャッと水が出てくる。魔法だな、あれは。そして、水はナズナに襲い掛かった。おいおい、そこまでしなくてもと俺とツバキは若干引き気味にその光景を見ている。
流石、“暴れ姫武将”……。やることがいちいちえげつない。
すると、ナズナがぴくッと動き、ぶはあっ! と言って目を覚ます。
「ちょ、ちょっと! 溺れるところだったじゃないですか!」
「いつまでも寝てっからだ」
「まったくじゃ。もう勝負は終わったぞ。……妾達の負けでな」
起きると同時にアヤメとショウブに詰め寄るナズナに二人がそう言うと、ナズナはハッとし、俺の方に寄ってくる。
「ふう……また、負けてしまったみたいですね。お見事です、ムソウさん」
「ああ。だが、アンタも大したもんだったぞ。俺も楽しめた。礼を言う」
そう言うと、ナズナは頭を下げ、ニコリと笑う。
その後、俺達は闘技場を出て、天宝館に向かおうとしたが、ふと思ったことがあったので、ツバキの方を向いた。ツバキは不思議そうな顔をしている。
「どうされました?」
「いや……お前はこれからどうするんだ?
俺は無事にクレナに着き、こうしてアヤメとも接触できている。護衛の任務はこれで終わりだろう?」
そう言うと、ツバキはハッとし、何やら寂し気な表情を浮かべた。ツバキはマシロを出る際に、俺と共にどこまでも行きたいと言っていた。
だが、騎士団の団員という立場である以上それは出来ねえだろうと考えている。あくまでここまで来たのは護衛の為だ。目的は既に果たされたというわけで、これ以上こいつを連れまわすのは俺もどうかと思っていた。
「ムソウ様……私は……」
「お前の気持ちもよく分かる……分かっているつもりだ。だが、騎士団という組織に居る以上、お前はその任に従わなければいけない。それは、分かるな?」
「……でしたら私は騎士団を――」
「辞めるってか? それは俺が許さん。俺きっかけにそういう考えに至るんなら、俺は今からお前をマシロに送り届けた後、またここに戻るつもりだ」
俺は、マシロに戻りたく無さそうにしているツバキに、若干後ろ髪を引かれそうになりながらも、強い口調でそう言った。俺についていきたい、それだけのために騎士団を辞めるってのは俺が嫌だった。ツバキは信念をもって騎士団をやっている。俺がそれを捨てさせてまでツバキをこれからの旅についてこさせるのは納得が出来ないからな。
それでも、ツバキは俺と共に居たいと言ってくる。どうしたものかと思っていると、アヤメが前に出た。
「はあ……どうやらムソウは女心ってのが分かってないらしいな」
「あ? そういう問題なのか?」
何となく馬鹿にされた気がして、俺はアヤメを睨みつける。アヤメは一つため息をつき、頭をポリポリと掻きながら、懐に手を伸ばした。
「睨むなって、そこまでの意味は無えよ。……まあ、いいや。
……嬢ちゃんが今後どうするか、それは俺の元にすでに届いてある」
そう言って、アヤメは懐から紙切れを出した。紙にはマシロの紋章と、騎士団の紋章が描かれている。ツバキは目を丸くして、それを指差していた。
「何ですか? それは……」
「マシロのワイツとマシロ師団長のコウカン、か? 二人の連名による書状だ。これによれば、「護衛任務は目的地までの安全を守ることと、帰ってくる間も任務であることを忘れるな。無事に冒険者ムソウのマシロへの帰還を送り届けるように」、と書いてある。
……ったく、俺を伝言板代わりに使いやがって……」
アヤメはニカっと笑って、書状をツバキに渡した。目を丸くし書状に目を通す俺とツバキ。
……うん。内容はアヤメが言ったことと大体合っている。俺は項垂れていき、ツバキは表情を明るくさせていった。そして、ツバキは俺の方を満面の笑みで向いてきた。
「ムソウ様! 私の任務はまだ続いているようですよ!」
「……ああ……そうみたいだな」
「ということは、これからもご一緒しても大丈夫ですね!」
「……そうなるな」
やたら嬉しそうなツバキの言葉に頷いている。……ああ、このままついてくる気だな。どうしようかと頭を抱えていると、ツバキが覗き込んでくる。
「……ムソウ様?」
「……なんだ?」
「嬉しくは……無いのですか?」
「正直なところ、悩んでいる。当面の目的はクレナの依頼を行うことだ。超級、災害級の魔物の討伐依頼が主となっている。そうなると、お前を連れて行くわけにはいかない」
「それは……やはり私が邪魔だ、という意味ですか?」
「そうは言っていないが……分かった……はっきり言おう。そんな危険なことにお前を付き合わせたくない」
本音を言うとそれくらいだ。ツバキは腕が立つ。恐らく依頼に連れて行っても問題は無いだろう。旅の最中にいろんな依頼をこなしてきた時も、リンネと共に俺を助けてくれていたからな。
だが、万が一のことを考えると、ツバキを連れて行くわけにはいかない。こいつには死んで欲しくない。ツバキは偶に自分よりも格上の相手に躊躇なく挑むことがある。
そして、その度に体中に傷を負い、俺はそれを心配していた。俺は敵を斬ることは出来ても、ミサキみたいに治すことは出来ないからな。今度の依頼でそうなった時に何もできなくなるのが嫌だった。……ただ、それだけだった。
ふと、ツバキが俺の手に触れてきた。そして、俺の手を優しく包み込み、まっすぐ俺を見てくる。
「ムソウ様……前にも申しましたように、私は貴方のことを愛しております。どこまでもついていく覚悟はできております。それに、私の刀は誰も死なせない。私も、貴方も。ですから、これからもお傍に居させてください」
そう言って、ツバキはニコッと笑う。
……俺、このまっすぐな目って苦手なんだよな。自分の信念を乗せているかのような覚悟のこもった目。こういう目で見られると何も言えなくなるんだ。サヤの時も、前の世界のツバキの時も、そして、他の仲間達にも、そういうのが結構あったな。
今俺に向けられている目もそんな目だ。俺が……俺ごときがもう何を言っても聞かないだろう。……そんな……強い目だ。
俺は一つため息をつき、頷いた。そして、俺の手を包んでいるツバキの手を握った。
「分かった。お前がそこまで言うのならこれからも一緒だ。……ただ、危険なことをするときは来るな。……それ以外の時は共に居よう。……これで、良いか?」
ツバキは俺の言葉ににこりと笑って頷く。
こうして、ツバキがこれからも一緒だということが決まった。ふと、俺は心のどこかで、それを喜んでいるということに気が付く。ああ、やはりこうなった方が良かったんだな、と実感した。
そうやって、ツバキと手を握り合っていると、にやにやしながらアヤメたちが近づいてくる。
「どうやら話はまとまったみたいだな。しかし、ムソウもすみに置けねえな」
「うむ。それなりの歳の差じゃが、良いものを見させて貰ったの」
「ほとんど告白ですからね。妓楼でもあまり見ないですよ」
などと、言っている。俺はハッとし、ツバキの手を放した。
「ち、違うって! 別にそんなんじゃ……」
「照れるでない。いやあ、それにしてもツバキ殿は良い男をみつけたものじゃの~」
「照れてねえって! そんなんじゃないって言っているだろう! って、ツバキも嬉しそうに頷いてんじゃねえ!」
横で顔を少し赤らめながら、ショウブの言葉に頷いているツバキに注意した。う~む……。本気でどうしようかとまたしても悩み始めてくる。
そんなことを思っていると、アヤメが口を開く。
「まあ、そっちの話は決着がついたってことで良いとしてだ。お前ら住む場所とか決めているのか?」
アヤメの言葉に俺達はハッとする。そうだ、ここに来る前に考えてはいが、未だ答えは出ていなかった。
正直、今日一通りの街を見てきたが、どこも微妙そうだな、とは思っている。というのもツバキがここで別れるということならばどこでもいいと思っていたが、ツバキが居るとなると、どの町も安心できない。
下街は、自警団はしっかりしているみたいだが、今日のスリのように少し危ない奴も多いみたいだからな。俺が依頼に出ている間に何もないとは言い切れない。
上街は割と普通だ。住むにはたぶん困らないだろうが、花街の自警団、闘宴会の奴らの後ろ盾となっている貴族が多く住んでいるというのが問題だ。何となく、というかだいぶ不安だ。
花街は言わずもがな。ツバキが女である以上何があるのかわからない。路地裏だって危険だらけっていうのは理解しているからな。ツバキは見た目が整っているだけに益々不安になってくる。……本人の前では言わないが。
俺はどこに住もうか悩み、一応確認したいことがあるので聞いてみる。
「ちなみに、ここの……ギルドの部屋を使うってのは?」
「あ、決まってないんだな。そうだなあ……ギルドというか家の客室はいつも妓楼や工房の仕事が終わるのを待つ冒険者でいっぱいだ」
ああ、やはり予想していた通りだな。この街、妓楼が多いわりに宿屋がそこまで無い。いや、まあ、あるにはあるんだが、所謂、そういう宿だ。管理されていない分、ますます泊まりたくなくなる。
恐らく他の皆も同じ思いだろう。だから、ギルドの部屋は常にいっぱいというわけだな。ちなみに、下街には宿屋らしきものは無かった。住んでいるのがクレナの住民ばかりというのと、冒険者たちは基本的にそこには寄らないから、と思っていたが、違った。
聞いてみると、宿泊した客のものを盗むものが後を絶たず、いくつかあった宿屋も次々と辞めていったらしい。何とも……うん。まあ、仕方ないか……。
どうしたものか、と困っているとツバキが口を開く。
「あの、ムソウ様」
「ん? 何だ?」
「このような状況ですと、私もわがままは言いません。ムソウ様のお好きなところで構いませんよ」
「ああ、そう言ってくれるのは助かるが、正直どこもな……」
そう言っていると、アヤメが少しムッとした顔になり、前に出てくる。
「それ、領主の前で言うことか?」
「あ、いや……そういうわけじゃないんだが。……じゃあ、聞くが、アンタならどこを勧めてくれる?」
アヤメは顎に手を置いてしばらく考え込んだ。そして、口を開く。
「……すまない。俺が言い過ぎたみたいだ」
……おい、駄目じゃねえか。そう思いながら三人で頭を抱えていると、ナズナがおずおずと手を上げる。
「あ、あの……でしたら、ツバキさんには私の妓楼で働きながら住み込んでもらうというのはどうでしょうか?」
俺達はハッとし、一斉にナズナの方を向く。ヒィっと短く悲鳴を上げるナズナに皆の視線が注がれる中、俺はゆっくりと近づいていく。
「お前……何言ってんのかわかってんのか? あ?」
「ちち、違います~! そういう意味じゃないです~!」
ナズナは固まって動けなくなっている。俺はなおも近づいていく。急に変なことを言い出すこいつにもう一発入れようと思ったからだ。すると、誰かが俺の袖を引っ張る。ツバキだった。
「ムソウ様。私を心配なさってくださるのは嬉しいですが、少し落ち着いて話を聞いてみましょう」
そう言ってツバキは俺をなだめる。俺は言う通り、詰め寄るのをやめてナズナの顔を見た。ナズナは震えながら、アヤメたちに慰められている。
「うぅ~……怖かったですう~」
「いきなりあんなことを言うからだ。流石のムソウも怒るぞ」
「妾達も驚いたぞ。とりあえずその言葉の真意を言ってみよ、ナズナ」
ナズナはわかりましたぁ~と頷き口を開いた。
「えっと、仕事をしてもらう、と言っても、妓女たちの補佐というか、身の回りのお世話をしていただきたいだけです」
「新造みたいなもんか?」
「そのような感じです。ムソウさん、妓楼にお詳しいのですね……」
「チッ……はぐらかすなよ……」
「わ、わかりました……え~っと、ツバキさんでしたら彼女たちのお世話をすることくらい造作もないと思いますし、それにムソウさんのお連れの方ということで客の相手をしていただくことはさせません」
「それは絶対に頼むぞ」
「もちろんです。そして、ツバキさんに働いていただく代わりにこちらではお部屋を用意するということでいかがでしょうか。
妓楼の中は女性ばかり。町中に居るよりは安全ですよ」
「まあ、そうかも知れないが……あれ、それだと俺は?」
「ムソウさんは依頼に出ることが多いのでしょう? ですから、その間はツバキさんをこちらで預かる……というより保護すると言った方がよろしいですかね。それでしたらムソウさんも納得されると思ったのですが……」
ナズナの話を聞いて少し考え込む。まあ、確かに花街の中に住んでもらうよりは安全か。さらにあそこには確か……コスケっつったか、男衆も居るにしても妓女たちに手を出すような奴には見えなかったから、その辺りは大丈夫だ。ふと、ツバキの方に視線をやると、どこか不安げな顔で俺を見ている。
「ムソウ様、どうしましょう。私としては問題は無いのですが……」
「お前がそう言うのなら別に良いのだが……やはり少し不安にはなるな……俺もそこに住めれば良いんだが……」
俺はナズナに視線を送る。すると、ナズナだけでなくアヤメとショウブも一緒に首を横に振る。
「お前を高天ヶ原に住まわせるわけにはいかない」
「やっぱ、男だからか?」
「それもあるがのう。……お主ほどの強者で金もそこそこ持っている者を妓女たちの中に入れてみろ。皆仕事が出来なくなる」
「ただでさえ貴族たちが多くお越しになられるところですからね。そうなってしまっては流石にうちも困りますから」
三人の言葉を聞いて項垂れる。やはり妓女というのはそういうものか、と思った。前の世界で一度だけ、ハルマサやタツイエ、ゴウキに連れられて妓楼に行ったことがあるが、何故か女たちが俺の周りにだけ集まり、三人に睨みつけられながら、酒を呑んだことがある。
あの時は良い気がしなかったな。今回もそうなったら、俺に敵意を向けるのはこの街の貴族か、あるいはそこそこ腕の立つ冒険者ということになる。
……ああ、危ない橋は渡りたくないな……。
さて、ツバキが妓楼で働くことに関しては、本人も納得していることだし、それはもう良いことだ。住む場所に関しても問題は無い。ただ、俺がツバキと離れている時はこいつを守られねえってのが気がかりとなっている。答えが出ず、俺達は悩んでいた。
……すると、今まで黙っていたリンネが俺の頬を叩いた。
「ん? どうした、リンネ。少し退屈になって来たか?」
あまりにも置いてけぼりにしていたので、リンネはさみしくなってきたのか、と思いそう聞いてみると、リンネは首を横に振る。そして、俺の目をジッと見た後、ツバキの肩にピョンッと乗った。
「キュウ」
「え、どうされました?リンネちゃん」
「キュウ、キュウキュウ、キュウキュウキュウ……」
リンネは俺とツバキを前足で交互に差しながら何かを喋っている。時々足を大きく広げたりして身振りで手ぶりで何かを伝えたいみたいだ。
流石にわからん。簡単なことならいつもは分かるのなら、ここまで喋ってくるのは初めてだ。俺もツバキも、そしてアヤメたちも何を言いたいのかわからず困っている。
「キュウ~~~……」
俺達がいつまでもリンネの言うことを理解できないでいると、リンネはガクッと項垂れ、ツバキの肩から地面に飛び降りた。そして、体を輝かせる。
いつもの変化の動きだな。何で急に変化するんだろうと思ったが、リンネのやることをジッと見てみることにした。すると、輝きが収まっていき、そこに立っていたのは、白衣に身を包んだ獣人のような美少女だった。
少女の頭の上には尖った耳があり、五本のしっぽが腰のあたりから伸びている。白い髪で、肌も透き通るように白い。そして、目元と手足に見慣れた赤い紋様が浮かんでいる。
「ん? 誰だ、そいつは」
「……」
リンネが誰に変化したのかわからなかったので、一応聞いてみたが、リンネは口を開かず、人差し指で自分を差していた。なんだろうと、思っていたが、ふとあることを思い出した。
そういや、夢の中で見たこいつの親に似てるな、と。リンネの親が人化した姿だ。ハッとして、聞いてみる。
「リンネ……お前、人化が出来るようになったのか?」
「……」
リンネはコクっと頷く。その瞬間、俺はリンネを抱き上げて、頭を撫でた。
「すごいぞ! リンネ! まったく、大した奴だな!」
「……!」
リンネはニコッと笑い、俺に抱き着いてくる。本当にこいつには驚かされる。いつもいつも、いつの間にか成長しているんだからな。
確かに今までは尻尾は四本だった。それが五本に増えている。成長している証だ。ああ、これを見ると確かな成長を感じることが出来て、俺も嬉しい。
その後、俺とリンネはしばらくじゃれ合ったが、呆気に取られている皆の視線に気づき、我に返った。
「それで、リンネ。その姿でどうしようと言うのだ?」
「……」
リンネはピョンッと俺の胸から離れていき、ツバキの側に立った。そして、ツバキの袖をぎゅっと掴みながらナズナを見ている。……人化してもまだ言葉を発することは出来ないみたいだな。だが、そこまでされると俺も大体わかってきた。
「リンネ、お前、ツバキと共に妓楼に行きたいのか?」
「……」
リンネはコクっと頷く。皆は目を見開いてリンネを見ている。リンネは俺の代わりにツバキを守ってくれると言いたかったみたいだ。ああ、それならば良いなとは思っている。リンネは強いからな。俺も安心してツバキを任される。それにすごく賢い。揉め事などもそうそう起きないだろう。
そう思い、俺はリンネの側に行き、ジッと顔を見た。
「じゃあ、任せてみるかな?」
「……!」
俺の問いかけにリンネは力強く頷いた。よし、これで大丈夫だな、と思っていると慌てた様子でナズナや、他の皆が口を出してきた。
「ちょ、ちょっと待ってください! リンネちゃんが人の姿になっても獣人の姿ですよ!? これだと人族絶対主義の貴族たちに何されるかわかりませんよ!」
「それに、リンネがこの姿で本当にツバキを守れるかも不安だ」
「うむ。人化したばかりだと体が慣れていない分、些細な仕事でも大きな事故につながることがあるからのう」
皆は口々にリンネがツバキについていくことに関しての難色を示した。こいつら……リンネのお陰でようやく一つの問題が片付きそうってのに余計な口を挟んで来やがって。
リンネの気持ちを台無しにするとは何事か、と呆れていると、リンネはツバキの袖から手を放し、パッと俺の傍に来た。そして、ジーっと俺の目を見ている。ああ、この時のリンネの考えていることはよくわかる。大抵こういう時は……
「出来るのか?」
「……」
リンネはニコッと笑って頷いた。そう、こういう時は俺が何か困っていると、自分の力だったら出来るよ! と俺に訴えかけてくる。俺は頷き、やってみろ、と言うと、リンネは皆の前に出て、ピョンッと跳んだ。
そして、ボフンと音がして地面に降り立ったのは先ほどの人化から尻尾と頭の耳が無くなったリンネだった。見た目は普通の女の子だ。髪色も一般的な黒髪になっている。そこらを歩いても何ら不思議はない。
そして、その状態からリンネは手を掲げた。すると、俺達の周りにボッボッボッと幾つもの狐火が浮かんできた。ほう、今までは変化を行うと、狐火は使えなかったが、人化の場合は出来るみたいだな。……にしてもいつもよりだいぶ量が多い。凄い成長してんなと、感心していると、リンネはこちらを向いて微笑んでいる。
そして、俺に手を向けた。すると、一つの狐火が俺にゆっくりと近づいてくる。狐火は俺の目の前まで来ると途端に大きくなり、俺の体を包んでいく。
「な、何を!? ……ってあれ?」
リンネの狐火は強力だからな。燃やされる! と思った瞬間、あることに気付く。熱くないな。これは、何だろうと思っていると、リンネはもう一度手を前に出し、今度は普通の火の玉を手の前に出した。
あれは……ミサキの火球みたいだな。へえ……この姿だと変化できる相手の技なら使うことが出来るみたいだな。だとしたら、わざわざベヒモスにならなくても雷を撃てるようにもなったわけか。これも凄い成長だな、と思っているとリンネは火球を撃ち出す。
だが威力は小さいみたいだ。避けるまでも無えなとその場で動かずにいると、リンネの火球は俺に当たったが衝撃はない。代わりに俺の体からリンネの狐火が吹き上がり、リンネに襲っていく。
呆気にとられる俺の前で、リンネはその狐火を、手を払って打ち消した。
狐火を自分に纏わせて、攻撃を防ぐついでに相手に狐火で反撃するあの技を、リンネは他人にも行えるようになったらしい。これならツバキを守ることが出来るな。そして、何より強い。ミサキに変化しなくても魔法が使えるみたいだし、他の魔物の力を使うことが出来る。これなら安心できるな。
大したものだな、と思い俺はリンネに近づいていく。リンネは周りに飛んでいた狐火を消して、俺の方をジッと見ていた。俺はリンネの頭を撫でようとさらに前に出ようとするが……
ドンッ!
「あ痛えっ! ……なんだ?」
何かにぶつかった。何だろうと思い、ジッと前を見るがわからない。そこでスキルを発動させてみてみた。
―すべてをきるもの発動―
すると、何も無い空間にいくつもの切れ目が現れている。俺は驚き、その辺りに手を出した。何かが手に当たる感覚がある。どうやら俺とリンネの間に見えない壁があるようだ。その壁の向こうからリンネはニコニコと俺を見ていた。
リンネは結界も張れるようになったらしい。攻撃だけじゃなく守りに関しても成長するとはな……。俺は切れ目を斬って壁を消して、リンネに近づいた。リンネはまるでいたずらっ子のような顔をしている。
「やったな~、この~!」
「……!」
俺はリンネを抱き上げて、思いっきり撫でてやった。リンネの成長を見られて本当に嬉しかったからだ。まるで、自分の子……そう、カンナが成長していくときの感覚と同じだ。
子の成長はやはり、幾つになっても良いものだなと思い、その後もリンネを褒めていた。
……その後、アヤメたちが俺達の方に近づいてくる。皆驚きながらも、納得したというような表情だ。
「ふむ……ムソウの従魔に関してはロウガンの書状にもあったが、これほどとはな。これなら、大丈夫か……」
「ええ。見た目に関してはどこにでもいる人族の子供ですからね。これでしたら私も言うことはないです」
「しかし、規格外のムソウ殿の従魔も同じく規格外とはの……おまけに知能も高いようじゃ。これなら、人の仕事をさせても大丈夫そうじゃの……で、肝心のお主はどうなんじゃ? ツバキ殿」
ツバキは黙って俺達の前に来た。そして、俺に抱えられている、リンネの顔をジッと見る。
「……ムソウ様の代わりに、頼らせていただいてもよろしいでしょうか?」
ツバキは優しく微笑み、リンネに尋ねた。リンネは嬉しそうに笑ってコクっと頷く。そして、俺から跳び下りて、ツバキをギュッと抱きしめた。
「では、よろしくお願いしますね、リンネちゃん」
「……!」
ツバキがリンネの頭を優しく撫でると、リンネは更に嬉しそうにしながら、何度も頷いていた。
まるで母子みたいだな、と思いながら、取りあえず色々と面倒なことが片付いたなと俺は安堵していた。
その後、ツバキとリンネはナズナに連れられ、ギルドを出ていった。念のためにとリンネには色々と伝えておいた。
まず人が居る前では獣の姿にならないこと、ツバキが良しというまではなるべく力を使わないこと、万が一自身とツバキが危なくなったら今言った二つのことは忘れても良い、思いっきり自分たちを守るように行動しろ、この三点を伝えておく。リンネはコクっと頷き、俺の言葉に従った。
そして、ギルドを出る三人の背中を見送り、俺はアヤメたちに顔を向ける。
「ひとまず、ツバキたちは良いが、俺の住む場所はどうしようか」
「う~ん……。まあ、あの二人が居ないからな。お前は何も考えずに自由に決めてもいいんじゃねえか?」
俺の問いかけにアヤメはそう答える。今は俺一人だ。何の心配もなくどの町にも拠点を作ることが出来る。
さて、今まで考えてきたことを整理すると、上街は貴族が多く住んでいる。何となく面倒そうだ。
花街は仕切っている奴らが気に食わない。ツバキも居ないし、イライラすること間違いないだろう。
下街はガラが悪い奴らが多くいる。が、仕切っているジロウ一家は良い奴らのように感じたし、住民たちも荒くれ者が多いというらしいが、気のいい奴らばかりだった。何となく気質も俺に合っている。……だったら、話は早いか。
「じゃあ、下街に拠点を作ることにするよ。街の入り口にも近いし、住んでいる奴らのことを考えたら面倒そうじゃないしな」
俺がそう言うと、アヤメとショウブは顔を見合わせ頷いた。
「その方が良いだろうな。街の奴らとお前はどこか似ている雰囲気もあるし。余計な問題を起こしたくなかったら下街が一番だ」
「うむ。妾もそう思うな。……ではそう言うことならばシロウに紹介状でも書いておこうか」
ショウブはそう言って、そこらにあった席に着き、筆をとって紙に何かを書き始めた。それを見て、ふと疑問が浮かんだ。
「ん? ジロウ一家とは仲が良いのか?」
「ああ。仲が良いというほどのことでもないが、うちとあ奴らは元々一つの自警団じゃったからの」
「あ? なんで分かれたんだよ」
俺がそう言うと、今度はアヤメが口を開く。
「花街と下街の間を貴族共が分け、さらに花街に貴族が管理する自警団を置いたからだよ。荒くれ者のクレナの奴らは信用できないってな。
しょうがねえから元々、街全域を仕切っていたジロウ一家を二分し、ギルドがあるここ上街をギルド副支部長のアヤメが、下街に愛着があり、離れる訳にはいかないというシロウに下街を任せたってわけだ」
うわあ……。アヤメの苦労がよくわかる。レインの貴族たちは本当に横暴な奴ららしいな。これはツバキたちの身が改めて心配になる。何時、何がどんな形で襲って来るのかわかりゃしねえ。
まあ、流石に領主直々に管理している妓楼にはそう簡単に手は出すまいと思うことにしよう。そこまでの馬鹿が居たら、どうしようかと本気で悩むが。アヤメたちの代わりに俺がレインに行き、サネマサの首に縄を括りつけてでもここに連れてこよう……。
しかし、この街全体を仕切っていたジロウという男はやはりすごい人物のようだな。そこまでの影響力を持っているとは思わなかったな。俄然その男に興味がわき、二人に聞いてみる。
「なあ、ジロウって男はどんな奴だったんだ?」
そう言うと、紹介状を書いていたショウブの手はピタッと止まり、俺をパッと見てきた。
「ムソウ殿……お主、今……なんと……?」
何故かショウブは俺を強く睨みつけている。ん? 何か、まずいこと言ったのか、と思っていると、アヤメが口を開いた。
「怒るなって、ショウブ。こいつは迷い人だ。それも最近来たばかりのな。知らないのも無理はねえだろう」
「あ……うむ。そうじゃったな。失礼したムソウ殿……」
ショウブは俺に頭を下げてくる。俺は気にしないで良いから教えてくれ、と言うとショウブは頷いた。
「ジロウは元々この街全ての顔役じゃった。ジロウが睨みを利かせるおかげで貴族たちも下手なことはせず、街も平和そのものじゃったな。
そして、花街に居た浮浪者や、捨て子、落ちぶれた妓女たちをも拾い、まっとうな生活が出来るように奴はその者達を育てていった。……その中には妾やナズナ、シロウもおった」
ショウブの言葉を聞き驚いた。こいつらって元々はジロウに拾われた者達だったのか。てっきりアヤメの親族か何かと思っていたが、どうやら違うらしい。ショウブによると、昔からクレナには貧富の差というのはあったらしく、下街と分けられる以前から町全体にそういった貧しい者達が溢れていたという。ジロウはそんな奴らを全て拾い、自分の家に集めては面倒を見ていたという。
「妾達はジロウの元で多くを学び、力をつけることが出来た。
その後、ジロウの紹介で妾とナズナはアヤメの元で働けるようになり、シロウはジロウの養子となったというわけじゃ」
ショウブは懐かし気にそう言ってきた。なるほど、つまりショウブたちにとってジロウは育ての親であり、人生の恩人って訳か。ジロウを知らないってだけであれだけ怒った理由がよく分かった。そう思っていると、アヤメが口を開く。
「ちなみにジロウは先代領主、つまり俺の親父の弟だ」
「え、じゃあ……」
「ああ。俺はジロウの姪ってことになるな。
……壊蛇の一件で親父たちが死んだとき、俺はまだ小さくて、領主なんて継げるわけねえと思っていたんだが、その後しばらく叔父貴が俺の面倒を見てくれてな。そして15になったころ、俺に全てを任せ、叔父貴は隠居した。
その後はそうやって若い奴らを育てていったってわけさ。……だが、五年ほど前に行方不明になってから、街の貴族共が調子づきやがってな。若い俺の言うことは無視し、街に新たな決まりを作っていった。
俺はあの時、初めていかに自分が無力で何もできないのかよくわかったよ。ジロウは本当に、真の意味で大きな男だったんだって、ようやくわかった気がしてな……」
アヤメはガクッと俯きながら椅子に座った。偉大な男がずっと居て、ぱったりと居なくなったら周りで黙っていた奴が調子づく、か。気持ちは分かるな。俺が死んだと知れ渡った後の玄李の国がそうだったからな。
ただ、こいつは今でも自分の領地を護ろうとしているのはこれまでの会話の中でわかっている。アヤメがそこまで悪いわけじゃない。
「アヤメの言うことは妾達にも通じる。ジロウから自警団を託されたのは良いが、どれだけ頑張っても街全体の問題は一層悪くなるばかりじゃ。このままだといけないというのはわかっておるんじゃがな……」
ショウブも俯きながらそう言っている。街を見て回った限りだと、シロウもショウブの率いるショウブ一家もちゃんとしているような雰囲気ではあったがな。
まあ、花街は論外だとしても、だ。各々割り当てられた地区をしっかりと護っているように思った。話に聞く限りのジロウほどではないかも知れないが。
と、ここで気づいた。こいつら、自分と比べる相手にジロウを見ている。偉大過ぎる者と比べているからこいつらには劣等感しかないのか。
まあ、それは仕方ないにしても、何か腑に落ちないな。二人になんて声をかければよいのかわからなかったが、落ち込む二人をこれ以上見たくなかったので、口を開く。
「まあ、なんだ……困ったことがあれば言ってくれよ。出来る限りのことなら対応するからよ」
そう言うと、二人はちらっと俺を見る。
「……良いのか?」
「ああ。俺も自分の住む町がそんな悪くなっていくのは気分が悪いからな。俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」
俺がそう言うと、二人は顔を上げ、頷いた。
「わかった。……助かるよ」
「本来ならば妾達がせねばならんのだがな。妾達の目が届かないところは任せても良いかの……」
二人はそう言って、ショウブは紹介状の作業を再開し、アヤメは俺が取り組む依頼の資料をとりに受付の方へと向かって行く。俺はまた、面倒なことを買って出たなと頭を抱えつつ、何かそれを楽しくも思いつつ一人笑っていた。
俺の方は……まあ、アイツから継いだものもあれば、どうしても気に入らなかったあいつのやり方と言うのもあったからな。そこまで劣等感というものは抱いていない。
ただ、あの世でアイツと再会した時は、必ずぶっ倒すという思いだけはあったからな。コイツ等も、ジロウって奴を追い越すって気概でやっていけば、問題ないと思うのだがなあと、思いながら、しばらくショウブの作業を見守っていた。
しばらくして、ショウブからは紹介状を渡され、アヤメからは討伐する魔物の資料が渡される。それらを受け取ると、手に凄い重さが掛かった。
「多いなッ!」
「まあ……超級十に災害級二だからな。それだけ資料も多くなるってモンだ」
「……これも街の抱えている問題の一つか?」
「……ああ」
アヤメが頷き、俺は頭を抱える。街に居る冒険者たちには女と遊ぶ前に魔物とじゃれてろ! とでも言いたい。まあ、そいつらが依頼をしなかったおかげで俺がそれに取り組み、莫大な金が手に入るんだ、と思うと悪い気がしないが……。
そう納得して、俺はアヤメの頼みに頷く。
「はあ、わかった。ひとまず明日から取り組むよ。今日はもう遅いからな。……っと、そう言えば支給品は?」
「ああ、渡しても良いが、必要か?」
「お、ここでは確認をとるのか。確かにマシロに居た頃に貰ったものは結構残ってるのからな。いいや」
「わかった。じゃあ、改めて頼むぞ、ムソウ」
「任せとけ」
俺とアヤメはそう言葉を交わし、固く握手をした。本当に噂とは大違いだな。絶対マシロに帰ったら俺に脅しをかけた奴ら全員に説教してやる。まずはハクビだ……。今度は無間の手入れだけじゃすまさねえ。
次はロウガンだ……。ちゃんとアヤメに協力するように灸を据えておいてやろう……。
それはともかくとし、俺はアヤメと別れギルドを出た。何故か出るときにショウブが、妾もついていこう、と言って、俺の横を歩いてくる。何だろうと、思ってギルドの戸を開けると、理由がすぐに分かった。
「あ! てめえッ! お嬢に何もしなかっただろうなッ!」
「お嬢に何かあってみろ! てめえ、ぶっ殺すぞッッッ!」
ギルドから一歩出た途端、ガラの悪い男たちが取り囲み、ひげ面のむさくるしいおっさんが前に出て怒鳴ってきた。何だ、こいつらと見渡すと、皆一様に同じ模様が描かれた羽織りを纏っている。
ああ、上街の自警団か。そう思っていると、後ろからショウブの怒鳴り声が聞こえる。
「ぬしらっ! ここで油を売っとらんで、仕事せんか!」
ショウブの声がすると、男たちはビクッとして辺りをきょろきょろと見ている。
「お、お嬢の声がするぞ! どこだ!?」
「お嬢! どちらに!」
「我々は仕事をしております! 今まさに、上街に居るという不届き者を、成敗するべく参上しました!」
などと口々に言いながら額に手を当て、周りを見ている。こいつらわざとやってんじゃねえよな、と思いながら、俺は少し横にずれ、後ろにいるショウブを前に立たせた。
ショウブは腕を組んで、男たちを見上げている。だが、自警団の奴らはまだ気づかない。すると、顔を真っ赤にした、ショウブが口を開く。
「ここじゃッ! 馬鹿ども!」
ショウブがそう言うと、男たちはハッとし、皆ショウブの方を向く。そして、先頭に居た髭面のおっさんが俺を突き飛ばし、ショウブの前に出てきた。
「あ痛てっ!」
その場でしりもちをつく俺を無視し、男たちはショウブの前に来た。
「お嬢っ! ご無事でしたか!? ギルドの奴らに、お嬢が酷いことされたって聞いて、急いで駆け付けたところです!」
「何もされとらんわいっ! ただ、手合わせしただけじゃっ!」
「い~や、ここに来る冒険者は女しか目当てのない奴らばかりだ! 信用できねえっ!本当にご無事でしたか!?」
「大丈夫じゃ、と言っておろうが! それよりも街の見回りをせんか!」
「それよりもって……俺達お嬢が心配で心配で……」
などと、俺は地面に転がりながら、ショウブたちの話を聞いていた。ふむ、長であるショウブを慕い一斉に駆け付けてくれている辺り良い奴らじゃないか、と思い俺は安心した。最初のショウブの印象だとどんな自警団なのか心配だったからな。
だが、まあこれなら大丈夫だろう。
……だが、俺を突き飛ばした件とそれとは、話しは別だ。俺は立ち上がり、なおも怒るショウブに、心配している様子の自警団の奴らに向けて歩き出す。
「……」
「あ? うわっ!」
「おまっ! ぐあっ!?」
俺は男たちの壁をかき分け、俺を突き飛ばした髭面のおっさんの肩をガシッと掴む。
「……おい」
俺が声をかけると、振り向く男。男はなんだ? と眉間に皺を寄せて俺を睨んでくる。
―死神の鬼迫―
「ゔ……」
男は振り向くと共に顔色を悪くする。俺は周りで刀を抜いていく男たちのことは無視しながら、男に詰め寄る。俺達を見上げ、何やら焦っている様子のショウブが視界に入るが関係ない。
「……てめえ……なに人突き飛ばしておいて、完全に無視してんだ?」
「い、いや、それは……そ、そうだ! お前がぼさっと突っ立――」
「あ゛?」
謝るわけでもなく、言い訳を繰り返す男に俺は更に強く殺意をぶつける。男は口をパクパクとさせて、何も言えないみたいだ。ショウブは頭を抱えため息をついている。俺は無間に手をかけ、男に口を開く。
「これ以上グダグダ抜かすなら……」
俺は無間を抜き、周りの男たちの刀を弾き飛ばした。男たちの手から刀が離れていきカラカラカラッといい音と共に、男たちの唾を飲み込む音が聞こえる。目を見開く男に言い放つ。
「今すぐ……全員……ぶっ殺す……」
そう言うと、男はハッとし、俺の目の前で地面に手をついた。周りの男たちもその場で地面に手をつき、頭を下げる。
「「「すんませんでしたあ!!!」」」
自警団は俺にようやく謝罪の言葉をかけ、俺は無間を仕舞う。すると、ショウブが寄ってきた。
「まあ、なんと言うか、すまなかったの」
「いや……まあ、良いじゃねえか。部下に慕われているみたいだしな」
「う……む。度が過ぎていると思うがの……」
「嫌われているよりはマシだと思っとけ」
俺はそう言って、頭を下げるショウブと別れた。俺が歩くと、ささっと俺に道を開ける自警団。俺は満足げにその中を歩いていく。
リンネ、人化させました。一応ミサキに変化して仕事をする案と、サヤに変化して仕事をする案も考えていたのですが、辞めました。
ちなみに、妖狐の成長条件についてはまた、報告します。




