76 校則
夏休み明けの二学期初日。
登校途中、クラスメートの智子と行き合った。
「あら、雅美なの。ずいぶんイメチェンしたわね。まるで別人みたい」
智子があたしをなめるように見る。
「おもいきってやっちゃたの」
あたしは肩まである髪に指をそえた。
それまでのあたしは、ずっとショートヘアーにしていたのだ。
「それ、ちょっと短くない?」
智子の指さす先、スカートのすそからは素足のひざ小僧がのぞいている。
「校則すれすれかな」
あたしはクルリとまわって、スカートのすそをひるがえしてみせた。
「鬼村になにか言われるかもよ」
鬼村とは学年主任の奥村先生。校則にやたらきびしいので、生徒たちからはそう呼ばれている。
「だいじょうぶよ」
あたしには自信があった。
校門の前に鬼村が立っていた。
おはよう、おはようと、登校する生徒らに声をかけている。あいさつがてら、髪型や服装などに目を光らせているのだ。
「おい、雅美君」
さっそく鬼村に呼び止められた。
「おはようございます」
あたしは堂々と笑顔であいさつを返した。校則違反はしていないのだから……。
「おまえなあ」
鬼村がしぶい表情でまじまじと見てくる。
「あたし、どこか違反でも?」
「あのなあ」
「スカート、短いですか?」
「そうじゃなくてな」
「靴もソックスも学校指定のものですけど」
「……」
鬼村がなにやら言いたげに、あたしの顔をしげしげと見つめる。
「口紅じゃありませんよ。これ、リップクリームなんです。少しピンクっぽいですけど」
「あのなあ」
「髪は校則どおり肩まで。お化粧だってぜんぜんしていません。まゆ毛は抜いて細くしてますが」
「だから、そうじゃなくてな」
「じゃあ、どこが校則違反なんですか?」
「さすがにスカートはなあ」
鬼村がため息をつく。
あたしはポケットから生徒手帳を取り出して、鬼村に見えるよう校則のページを開いた。
「スカートが悪いって、どこにも書いてませんけど」
男がスカートをはいて、なぜ悪い。




