74 ススムの恋
「ねえ、ミクのこと好きって言って」
「恥ずかしいよ」
「ススムくん、あたしのことを好きじゃないの?」
「好きだよ」
「ほんとだね?」
「ほんとだよ、好きに決まってるじゃないか」
「だったらあたしの目を見て、ミクちゃん大好きだって言ってよ」
「えー」
「ねえ、言ってたら」
「恥ずかしくて言えないよ」
「お願い!」
「でも……」
「ススムくん、お願い!」
「じゃあ……ミ、ミクのこと大好きだよ」
「うれしい! あたしもススムくんのこと大好きだからね。じやあ、こんどはチューして」
「えっ!」
「なに、びっくりしてるのよ。恋人同士だっら、キスするの、あたりまえのことよ」
「でも、まだ中学生なんだぞ」
「中学生はキスしちゃいけないの?」
「そんなことはないと思うけど……」
「だったら、ねえー」
「それじゃあ、目を閉じてくれる? おれ、恥ずかしいから」
「ススムくんって、かわいい!」
「かわいいだなんて」
「ううん、ほんとにかわいいんだもの」
「ミクちゃーん」
ススムがソファーに倒れ込み、それからクッションを抱きしめ、おもいきり吸いついたそのときでした。
ガラ、ガラッ!
ベランダのサッシ戸が音を立てて開きました。
「わっ!」
ススムは声をあげて、あわててソファーから飛び起きました。
弟のマサルがこちらを向いて立っています。
「お兄ちゃん、そこで何してたの?」
「べつに何もしてなかったけど」
「でも、お兄ちゃん。クッションに吸いついてなかった?」
「マサル、おまえ見てたのか?」
「うん。ずっと見てたよ、ベランダから」
「そ、そうか……」
「それにミクちゃんって、だれなの?」
この日。
ススムの一人ぼっちの恋はこうして終わりました。




