65 婚約破棄
秋の夕暮れ。
枯れ葉が舞う公園の一画で、二つのブランコが静かに揺れていました。
「ユリちゃんには幻滅したよ」
「それはこっちの言葉よ」
「ふん!」
「もう知らない!」
孝太郎とユリは険悪なさなかにありました。
孝太郎が意を決したように言います。
「結婚の約束はなかったことにしような」
「こっちがお願いするわ」
ユリも怒ったように言い返しました。
「それにしてもユリちゃんが、あんなにひどいファザコンだとは思わなかったよ。もっと早くに気がついていればよかった」
「孝太郎くんこそひどいマザコンで、いつもお母さんにべったりじゃない。見ていて、ほんと気持ち悪いんだから」
「ユリちゃんだってお父さんと腕を組んで、いつも嬉しそうに歩いているじゃないか」
「だってパパ、頼りがいがあるもん。孝太郎くんったら、いつもお父さんに抱っこにおんぶじゃない」
「そんなことはないぞ」
「だったら、うちのパパみたいにお金を稼いで見せてよ。一円も稼いだことがないくせして」
「それを言うなら、ユリちゃんだって料理がちっともできないじゃないか。いつもお母さんに作ってもらってるんだろ」
「もう、孝太郎くんなんて大嫌い!」
「ボクだって、ユリちゃんのこと大嫌いだよ」
と、そのとき。
公園の入り口で声がしました。
「こーたろー、もうすぐ暗くなるわよー」
孝太郎のママでした。
そしてもう一人います。
「ゆりちゃんも一緒に帰るわよー」
こちらはユリちゃんのママです。
「はーい」
「はーい」
二人はブランコから飛び降りました。
一年生の二人。
それから手をつないでママたちの元へと駆けていきました。




