63 第九回夏祭り息止め大会
とある町内。
今年も夏祭りに合わせて、「第九回夏祭り息止め大会」が開催されることになった。
優勝者には前八回と同様、ビール三カ月分の賞品が贈呈される。
第一回大会では息をしていない者が、第二回大会では口と鼻のない者が、第三回大会ではエラ呼吸をする者が、第四回大会では洗面器の水を飲み干す者が、第五回大会では洗面器の水で溺れる者が、第六回大会では洗面器に顔を置き忘れる者が、第七回大会では洗面器より顔が大きな者が、第八回大会では途中で息継ぎをする者が参加していたことから、今年は回覧板であらかじめ、「息をしていない者、口と鼻のない者、エラ呼吸をする者、洗面器の水を飲む者、洗面器の水で溺れる者、洗面器に顔を置き忘れる者、洗面器より顔が大きな者、途中で息継ぎをする者の参加は認められません」と、新たなルールを作って周知をしていた。
そのほかは昨年までとまったく同じ。
会場内のテーブルには水が満タンに入った洗面器が十個並べられ、老若男女十名の強者たちがそれぞれの洗面器の前に立ち、集まった観客たちは今年は誰が勝つのかと興味津々に見ている。
「それではこれより、第九回夏祭り息止め大会を始めます」
町内会長がルールを簡単に説明してから、ピーッと開始の笛を吹き鳴らした。
参加者十人がいっせいに洗面器に顔を突っ込んだ。
一分経過。
半分以上の者が顔を上げていた。
二分が経過。
息が続かず顔を上げた者が九人となった。
最後の一名が決まったので、町内会長がその者の耳元に向かって勝利を告げた。
「優勝ですよ」
最後まで残っていた者が洗面器から顔を上げた。
本夏祭り息止め大会。
九回目にして初めてまともな優勝者が現れ、観客から盛大な拍手が送られた。
その陰で……。
残り九人の敗者たちは、顔に悔しさをにじませて帰ってゆく。
「ピッーピー、ピッーピー」
町内会長がいきなり笛を吹きまくり始めた。
敗者たちが勝手に、会場の隅に積まれてあった賞品のビールを持ち帰っていたのである。
大会終了後。
町内会長から以下のような発表があった。
「来年の夏祭り第十回息止め大会は特別な記念大会として、過去の各大会において最後まで残った者を招待して開催いたします」
次回は、第十回夏祭り息止め記念大会です。




